弁護士という職
では、コンピューターの発達が進んでいく中、弁護士にどんな役割が求められているのか、交通事故の過失割合を具体例に井上義之弁護士に話を伺った。
ちなみに過失割合とは、例えば交通事故が起こった場合に、過去の判例から類似の事故を探し、その際に両当事者のどちらにどれだけ責任を与えているかを示した比率である。逆を言えば、過去にたまっている判例データは膨大であるため、どれか一つに当てはめ、裁くことが可能ならば、そこに弁護士が介入する余地があるのか疑問ということにもなる。
「過失割合に関して、過去の類似事件の裁判例が参考にされることは事実です。しかし事実関係が争いになったり、過去のどの事案と類似しているかが争いになる等、実際の交通事故の過失割合が過去の判例でほぼ決まるということはありません」
なるほど。そもそも過去のどの判例と類似しているかの主張が異なる場合もあるという。確かにそうなれば自身の主張の正当性を示す必要があるだろう。そしてそこに依頼者の代理人である弁護士の存在意義があると話す井上弁護士。
「例えば交通事故の被害者であれば相談に来られた際に、まずは事実関係と証拠関係を整理し、法的な問題点を検討した上で、解決に向けた流れ、ある程度の事故処理の方向性を示します。そして、被害者から依頼を受けると、ご本人の利益や個々の事情に応じて、最良の結果を目指して代理人として対応していきます。被害者側の主張がなるべく認められるように主張と証拠を整理し、場合によっては裁判を視野に入れつつ、加害者側と交渉していくことになります」