研究者とシカの駆け引きは続く。高柳講師は柵の下1メートル部分を二重構造にした新型の柵で対抗するも、シカはネットの隙間などから侵入。完全に防ぐことは容易ではないという。
そうした中、長年の試行錯誤を経て開発したのが、網の下1メートルにステンレスのワイヤを使用し、地面に対して「L字」型となるように設置する「AF(芦生フォレスト)規格」の防鹿柵だ。維持管理や積雪への対処に課題を抱えるが、高柳講師は「高い精度でシカを防ぐことができる」と自信を見せる。
導入後の植生の回復は著しく、柵外とは対照的な芦生本来の自然が復活。AF規格の柵は芦生研究林以外にも、滋賀県の伊吹山など近畿圏の山間部でも導入が進み、成果を挙げているという。
もっとも、柵でシカの食害被害を抑えられているのは、まだ林内のごく一部。継続的にシカを捕獲しながら希少植物を保護するなどの取り組みに務めることが不可欠だ。高柳講師は「自然の状態に目配せをしながら、バランスのとれた生態系を回復しなければならない」と強調した。