テレビ用語の基礎知識
先日、日本テレビの「世界一受けたい授業」に台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タンさんが登場してましたね。いい内容だったと思いますが、ひとつ結構な違和感を覚えたことがあって、それはタンさんのボイスオーバー(吹き替え)が男性の声でなされていたこと。いや、番組スタッフに悪意は全くないと思うんですよ。タンさんがかつてトランスジェンダーであることを公表したことなどをちゃんと紹介していましたし、しっかり番組を作られたんだと思います。
でも、男性の声だったのは、どうなんだろうなあ? と思ってしまいました。やっぱり女性のナレーターさんでボイスオーバーするべきだったんじゃないかな。女性の声でも違和感があったり苦情を言う人もいそうですけど…きっと制作されたスタッフもどうするか悩んだのかもしれませんね。
実はボイスオーバーっていろいろ悩ましいことが多いんです。外国語のインタビューを放送するにはボイスオーバーするかテロップで翻訳を出しますが、やっぱりボイスオーバーした方が見ている人の負担が少ないです。でも、意外とそこに「余計な演出」が入り込んでしまったりする。
かつては、「金に汚い商売人」とかだとなぜか大阪弁だったり、「田舎者」だと東北弁だったりということもよくありました。アメリカ人が「おおきに」って言ってるとかね。そりゃないか。大阪の人や東北の人にかなり失礼な話です。
今でも話のニュアンスが曲げられたり大げさになってることは結構あります。オーバーな口調になっていたり、あと派手な服装の若い女性だと、なんだかアホっぽいしゃべり方にされていたりとかね。いちおう僕は英語・中国語・韓国語あたりは多少分かるので、小さく聞こえる原語を聞いて「おいおいそんなこと言ってねーだろ」とテレビを見ながら突っ込むことも多いです。
テロップなら原語がバッチリ分かるので翻訳も真面目にやらないと怒られますが、ボイスオーバーだと「どうせ原語はよく聞こえないだろ」とばかりにまあまあ過剰演出する人がいるんです。特にベテランに多いかもですね(笑)
あと、言葉によって同じ内容でも長さが全然違うのでそれも悩ましいんです。例えば日本語で「本当にありがとうございます」は中国語では「多謝」で終わりです。思い切り早口でボイスオーバーするか、原語の方を変なところでぶった斬らないと、うまく長さが合わないんですよね。困ったものです、ハイ。
■鎮目博道(しずめ・ひろみち) テレビプロデューサー。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。1992年テレビ朝日入社。スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのプロデューサーを経て、ABEMAの立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などを企画・プロデュース。2019年8月に独立。近著に『アクセス、登録が劇的に増える! 「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版)。
