バイデン米大統領は一般教書演説で、米政治の「分断」解消を訴え、不法移民対策の強化を表明するなど保守層の主張にも一定の配慮をみせた。1日から州予備選が始まった11月の中間選挙をにらんだものであるのは明白だ。だが、2020年大統領選をめぐる混乱で決定的に深まった党派間の溝を埋めるメッセージとはなりえず、共和党支持層の切り崩しも見通せない。
バイデン氏は演説で、党派対立の余地が少ない政策課題として、医療用麻薬オピオイドの乱用問題や退役軍人支援、子供のメンタルヘルス支援などにも重点的に取り組む考えを示した。
共和党の反応は辛(しん)辣(らつ)だ。同党のトランプ前大統領に追従する勢力の代表格ともいえるグリーン下院議員はヤジを飛ばし、直後のツイッター投稿では「メンタルヘルス支援が必要なのは大統領だ」と揶揄(やゆ)した。
またバイデン氏は、ロシアの侵攻を受けたウクライナへの支援継続も強調した。民主、共和両党ともに異論の少ない分野だといえるが、今後も十分な賛同を得られるとはかぎらない。
2月末、南部フロリダ州で開催された「保守政治行動会議」(CPAC)。共和党をはじめ、保守勢力の動向を映し出すものとして注目されるこのイベントで、ウクライナ情勢をめぐって飛び交った議論は主に「エネルギー自給態勢の構築」だった。欧州情勢にエネルギー価格が左右されないよう、環境規制を緩和してシェールオイル・ガスの生産力を高めるべきだとするもので、ロシアによる国際秩序破壊をどう阻止するかや同盟のあり方といった超党派的な議論は目立たなかった。
これに先立ってトランプ氏は、ウクライナ東部の親露派支配地域の「独立」を承認したプーチン露大統領を「天才的だ」と称賛した。トランプ氏の不興を買うことを恐れる共和党議員らが同氏の言動に左右されている面も否めない。
対決型政治を得意とするトランプ氏が君臨するのが同党の現実。民主党では急進左派が影響力を強めている。「米国は1つだ」と演説を締めくったバイデン氏の言葉はむなしく響く。(ワシントン 大内清)
