産経抄

6月9日

 「米朝首脳会談で日本人拉致問題を必ず提起する」。7日の日米共同記者会見でトランプ米大統領が改めて約束すると、安倍晋三首相もこう踏み込んだ。「最終的には私と金正恩朝鮮労働党委員長で協議し、解決しなければならない」。拉致問題は今、これまでにない重大局面にある。

 ▼平成14年9月17日の小泉純一郎首相による訪朝は、結果的に拉致被害者5人の帰国につながった。これは大きな成果だったが、当時の政府が拉致問題解決に熱心だったかというと、必ずしもそうではなかった。むしろ、日朝国交正常化のほうに前のめりだった。

 ▼拉致被害者の帰国について、当時の古川貞二郎官房副長官は小泉訪朝5日前の記者会見でこう述べていた。「そういうことがあればハッピーだが、それよりまず国交正常化に対する扉を開くことに大きな意義がある」。

 ▼小欄はこの頃、やはり官房副長官の要職にあり、拉致問題に詳しいにもかかわらず、対北朝鮮強硬派だからと日朝交渉から外されていた安倍氏が、こううめくように漏らすのを聞いた。「小泉さんは、拉致の『ら』の字も分かっていない」。

 ▼一部マスコミも同様だった。朝日新聞は小泉訪朝当日の紙面でも、「拉致被害者」とは呼ばずに「行方不明者」と北朝鮮側が好む表記を使っていた。その約3年前の社説(8月31日付)では、拉致問題を「国交正常化交渉の障害」と位置づけ、拉致被害者家族会などから抗議されている。

 ▼さすがに現在の姿勢は違うだろうと思っていたが、認識が甘かったようである。8日付の朝日朝刊1面には、今回の重要な日米首脳会談の関連記事が全くなかった。せめて拉致問題では、解決に向けて国民の心を一つにしたいところなのだが。

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