株式会社XENCE
XENCE、規格材と非規格材を部材単位で記録し、木材の由来や炭素貯蔵量とともに可視化。
株式会社XENCE(代表取締役:小澤巧太郎)は、木材製品の素材・製造・環境情報を製品1点ごとに記録する「Product Passport」の運用を開始。第一弾として、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が運営する代官山T-SITE(東京都渋谷区)に納品された什器3点にProduct Passportを発行しました。
XENCEは、建築や家具づくりを通じて、製材時に発生する端材など、これまで十分に活用されてこなかった木材を「活用材」へ変える取り組みを続ける建築会社です。今回始動したProduct Passportでは、単に「木を使った量」を記録するだけでなく、どの部材に規格材を使い、どの部材に非規格材を使ったのかを素材ロットごとに紐付けて記録。これにより、一つの製品をつくるために、未活用材をどれだけ新たな用途へ転換できたのかを製品単位で可視化します。
今後、XENCEが手がける家具から建築まで対象を広げ、「未活用材を使う」という循環経済行動をデータとして残し、公開していくことを目指します。

Product Passport 画面サンプル
木材を使った量だけでは、「どんな木材を使ったか」は分からない
木材を建築や家具として長期間利用することは、木材中の炭素を製品の使用期間にわたって貯蔵することにつながります。一方で、同じ量の木材を使用した製品であっても、その木材が一般的に流通する規格材なのか、製材時に発生し従来は製品になりにくかった材なのかという違いは、通常の炭素貯蔵量の数値だけからは読み取ることができません。
例えば丸太を製材すると、中心部から寸法の揃った規格材を取り出す一方、丸太の曲面を含む「ミミ材」や、製材した時の芯材など不定形な規格外材が多く発生し、丸太から建築用材として使える材の量は30%程度に留まると言われます。未活用の規格外材を多く製品として長期的に利用することができれば、一本の丸太からできるだけ多くの部分を価値ある製品にすることが出来ます。
XENCEが開発する建築や家具製品では、従来、チップや燃料等として低価値に処理されたり、燃やされてCO2を即時放出していた「規格外材」を多く活用することを目指しています。

製材時に出る端材の例(ミミ材・バタ材・シン材など)
台形端材を構造材に活用した「サーキュラー木造温室(R)︎」の例(XENCE、2025年11月)

サーキュラー木造温室(R)︎ 外観

サーキュラー木造温室(R)︎ 内観
使用した未活用材の量がわかるDPPデータベースを構築
XENCE がこの度開発したProduct Passportでは、製品を構成する部材単位で情報を登録し、それぞれを製材所から収集した素材ロットデータや輸送情報と紐付けます。これにより、DPP (デジタルプロダクトパスポート) の登録情報として一般的に期待される炭素貯蔵量や、材料および輸送に伴うGHG排出量の自動計算が可能です。
それに加え、特にXENCE独自の指標として、素材を「規格材」と「非規格材」に分離して記録することで、当該製品に使用した木材のうち、どれだけが従来活用されていなかった材を活用できたのか自動計算し、製品ごとやプロジェクトごとに確認ができるようになります。
XENCEでは、これを自社の循環経済行動を証明するための指標のひとつとして位置づけています。
Product Passport に記録する情報
この度試験運用を開始したProduct Passportでは、欧州で法制化が進むDPP (デジタルプロダクトパスポート) の考え方を参考にし、製品ごとに固有のIDを発行し、自社・利用者・取引事業者など、それぞれに必要となる情報の公開範囲を検討しながら運用していきます。
管理するデータは今後素材提供者や加工者など製造に関わるステークホルダと協業し、試験運用を通してフィードバックを得ながら取るべきデータ・公開すべきデータ・取ることが難しい/取らなくて良いデータを検証していきますが、現時点では主に以下の情報を記録しています。
- 素材に関する情報樹種、産地、伐採時期、規格材/非規格材の区分、含水率、乾燥方法、認証情報など
- 製造に関する情報製材地、加工地、製造地など
- 輸送に関する情報山林から製材地、加工地、製造地までの輸送経路、距離、をファシリティ住所から算出
- 環境に関する情報木材使用量(㎥)、質量(kg)から、炭素貯蔵量、輸送に伴うGHG排出量を算出
- 製品の履歴製造、納品、移設、修理、解体、回収など、製品に発生するライフサイクルイベント
一方で、製品に付与されたQRコードからアクセスできる一般公開情報については、DPPデータベース登録情報の他に、製品情報や使い方、生産者のメッセージといったコミュニケーションコンテンツも格納が可能。利用者と素材、生産地を繋ぐメディアとして、未活用材や循環経済行動への興味喚起、行動変容に役立てます。
第一弾は、約46%に非規格材を使用した木製フレーム
Product Passport の第一弾として、2026年9月にカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が運営する代官山T-SITEへ導入された木製フレームにProduct Passportを発行。本製品には、紀伊半島で伐採・製材された国産ヒノキを100%使用しています。
特徴的なのは、一般的な規格材だけでなく、製材時に丸太の外周部から生まれる「ミミ材」を積極的に使用していることです。製品に使用した木材のうち、約46%を非規格材が占めています。
当製品は、2026年9月18日(金)から9月27日(日)まで開催される「代官山 爽涼祭 2026」期間中は、代官山 蔦屋書店 3号館入り口前でイベント什器として使用し、会期後は同じ部材を組み替えてベンチとして循環活用し、代官山T-SITE内で継続利用を予定。
▼ 本製品の「Product Passport」一般公開ページ例

祭りの会期中、提灯台として使用される木製フレーム

部材を組み替えることで会期後はベンチとして使用

製品1台ごとにユニークID・QRコードを付与
なぜ今、Product Passport なのか
欧州では、エコデザイン規則(ESPR/Regulation (EU) 2024/1781)が施行され、製品ごとの情報をデジタルで管理・共有するデジタルプロダクトパスポート(DPP)の法制化が進んでいます。2025年に公表された2025-2030年のワーキングプランでは、家具も優先製品群のひとつに位置づけられています。
DPPでは今後、製品の来歴や素材構成、修理可能性、リサイクル可能性や環境情報などを、製品に紐づくデータとして管理する仕組みが具体化していくことが想定されていますが、家具についての具体的な要求項目はまだ確定していません。
そのためXENCEが試験運用を開始したProduct PassportはDPP規制への準拠をうたうものではありません。今後の制度を見据えながらDPPの考え方を先行的に取り入れ、実際の日本の木材サプライチェーンの中で「何の情報なら取得できるのか」「何を記録することに意味があるのか」を検証する取り組みとしてスタートしました。
「続けられるトレーサビリティ」を探る
木材のトレーサビリティを高めようとすれば、原木が伐採された場所や時期、製材方法、加工工程など、多くの情報を遡る必要があります。
しかし、情報の精度を上げるほど、林業・製材・加工に関わる事業者の記録や管理にかかるコストは膨れ上がります。そうしたデータごとの取得に必要な負担をヒアリングし、Product Passportを実際の製品で運用しながら、取得すべき情報・取得できれば望ましい情報・取得負担に対して価値が小さい情報を切り分け、木材産業の現場で継続可能なデータ取得方法、管理方法を検証します。
今後は対象を家具に限定せず、XENCEが設計・製造する建築物や部材ほ他、他企業とのコラボレーションを通したDPP発行も実施を予定。
本プロジェクトに関するお問い合わせ
株式会社 XENCE(ゼンス)
主担当者:大世渡 麻子
info@xencegroup.com
株式会社 XENCE(ゼンス)
所在地:愛知県名古屋市中区栄一丁目29番29号 SIMON 10 SAKAE 401
Webサイト:https://xencegroup.com
事業内容:株式会社XENCEは、未活用木材の循環利用とデジタル技術を軸に、家具・建築における資源循環の仕組みをデザインするスタートアップです。非規格材や製材時に発生する端材など、従来十分に活用されてこなかった木材を、設計・加工・トレーサビリティの技術によって家具や建築の材料として活用する仕組みを開発しています。


