法政大学、宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合(SSIL)、パシフィックコンサルタンツの3者による、インフラ点検の記録や3次元データをAIやロボットの開発に活用できる形に整備する事業が、経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める国家プロジェクト「GENIAC」の「データエコシステムの構築等に関する研究開発」に採択された。
本事業では、橋や下水道などの点検記録を、AIが学習や評価に利用しやすい「AIレディデータ」として整備。点検AIや自律型ロボット、ドローンなどの開発・評価に利用できるデータと、その継続的な提供の仕組みを構築していく。
背景には、インフラの老朽化や点検を担う人材の不足がある。全国の道路橋は約73万橋あり、このうち約24万橋が2026年3月末時点で建設から50年を経過している。また、下水道管路は約50万kmに及ぶ一方、一般行政部門に土木技師・建築技師がいない市区町村は25%に上る。
点検現場には、図面や台帳、点検写真、補修履歴などの記録が蓄積されているが、データの形式や用語、管理方法などが統一されておらず、施設ごとの情報を参照したり、AIの学習に利用したりすることが難しいという。本事業では、これらの情報を整理し、位置や構造物の情報を基準に関連付ける。例えば同じ橋について、図面や点検写真、補修履歴などをたどれるようにする。
整備するデータは、構造物の位置や形状を示す「空間基盤」、図面や点検記録、補修履歴などを整理した「構造化インフラ点検」、下水道管の内部や橋の下部など特殊な環境を対象とした「特殊環境学習」の3種類。特殊な環境については、実際の点検データに加え、照明の変化や水面反射などをコンピューター上で再現した「合成データ」も利用する。合成データは実データの代替ではなく、実際の点検データを用いて有効性を評価する。
これらのデータは点検記録の検索や損傷情報の抽出、特殊な環境を認識する技術の開発などに利用。自治体やインフラ管理者による点検計画や予防保全の検討への利用も想定しており、法政大学がデータの構造化や品質評価、SSILがデータ基盤の構築・運用、パシフィックコンサルタンツが自治体などとの調整や実データの収集、データ管理を担当する。
事業期間は2026年9月から2年間を予定。整備したデータを活用することで、インフラ点検作業の効率化や予防保全につなげるとともに、将来的には、AIやロボットを活用したインフラ管理の普及を通じて、老朽化する社会インフラを持続的に維持するための基盤となることが期待される。
