明日、9月1日は「防災の日」。近年、地震に伴う津波や豪雨による水害が頻発するなか、防災対策の重要性は増している。しかしながら、防災訓練への参加率は低迷しており、市民の防災対策に対する当事者意識の欠如が課題となっているのが現状だ。また、従来の訓練は予定された経路を辿る形式が多く、避難経路が塞がれていたり、パニックに陥った集団が発生したりといった不測の事態を体験することは難しい。
この問題に対して、大阪電気通信大学 総合情報学部 情報学科・中原匡哉准教授らの研究チームは、屋内での浸水時における避難行動を体験できるシミュレータを開発、その実証実験を通して、防災への意識向上への影響や、今後の検証課題を明らかにした。
この研究に関する論文はデジタル領域を中心に学術論文を広く掲載する電子ジャーナル「Journal of Digital Life」(ジャーナル・オブ・デジタル・ライフ)で公開されている。
研究グループが開発したのは、浸水した学校から屋上へ避難するVRシミュレータ。学校は3階建の棟と4階建の棟からなっており、そこに水が徐々に流れ込んでくる事態を再現したものだ。また、避難ルートとなる階段の一部には、地震などによる倒壊物を想定した障害物が置かれていることもあり、「いつも使っている階段が使えない」という状況が再現されている。
制限時間内(5分間)に目標地点である屋上に到達できなかったり、水位が膝の高さ以上まで達した状態が10秒続いた場合は、避難失敗となる設定だ。
シミュレータの中には、参加者以外の避難者を模したNPC(コンピューター制御のキャラクター)が登場。NPCの行動は、
①ランダムに避難する
②正しい経路を選択するNPCと、誤った経路を選択し行き止まりで立ち往生するNPCが混在する
の2種類が用意されている。
参加者は、2種類のシミュレータのいずれか一方を体験。画面内を自由に動きながら、周囲の人々の行動を見て避難ルートを判断していく。その後、以下の項目について5段階評価でのアンケート回答を行った。
なお、本研究でのVRはヘッドセットを装着するタイプではなく、ノートパソコンの画面に表示された3次元空間を、キーボードとマウスで操作する方式となる。
■アンケートの結果は
その結果、Q4「シミュレーションはリアルで臨場感を感じましたか」とQ7「この体験を通じて防災について意識しようと思いましたか」の項目について、平均がそれぞれ4.31点、4.15点と、高得点を記録。参加者の多くが、臨場感のある避難行動の体験ができたと感じ、また防災についての意識向上に繋がったことが伺われる結果となった。
また、NPCの行動形式が参加者に与える影響については、ランダムに避難するNPC環境での参加者に比べて、正しい経路選択と間違った経路選択のNPCが混在する環境の方が、避難がより「難しい」と感じる参加者が多かったことが示されたが、この難易度の結果についてはさらなる検証が必要だとしている。
■防災教育のツールとして
今回の実証を通して研究チームは、本シミュレータが、屋内浸水時の避難行動の難しさや切迫感を体験できる「防災教育ツール」として利用できる可能性が示されたとしつつ、NPCの行動が被験者の判断に与える影響や、防災教育上の効果について、より厳密に検証していく予定だという。
※本研究の一部は、情報通信研究機構(NICT)の委託研究(助成番号 23603)および日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金(助成番号 JP26K01183)の助成を受けて実施されました。



