マンジャロ炎上が問う課徴金制度の実効性 溝口勇児氏の主張と法規制をめぐる議論

ゆいぴすのXより

六本木の人気キャバクラ嬢・ゆいぴすによる、糖尿病治療薬「マンジャロ」のダイエット目的での使用を推奨するような投稿が批判を受けた今回の騒動。実業家・溝口勇児氏による擁護発言や、製薬会社・現役医師からの批判が相次ぐ中、焦点はインフルエンサーによる医薬品訴求の法的問題と、課徴金制度の実効性へと移りつつある。

実業家の溝口勇児氏

「広告ガイドライン」への抵触可能性 薬機法は今後の判断待ち

ゆいぴすと彼女を起用したオンラインクリニックの行為が薬機法(医薬品医療機器等法)違反に直接問われるかどうかは、今後の行政の調査と判断による。

一方、厚生労働省が定める「医薬品等適正広告基準(医療用医薬品の広告ガイドライン)」については、専門家から抵触の可能性を指摘する声が上がっている。

医師で作家の知念実希人氏は、処方薬に対して「広告モデルが利用者としての体験を発信する」ことはガイドラインで禁じられていると指摘。「5kg落とせた」「リスクは経験している」といったゆいぴすの発言は、厚労省が警戒する「主観に基づく効果の体験談広告」に当たりうるとの見方を示した。

元製薬会社社員からも、同様の観点での証言が出ている。

「医薬品の広告は本当にルールが厳しい。例えば製薬会社が出しているテレビCMは、具体的な薬の名前は出さずに『こんな症状でお悩みの時はお医者さんに相談しましょう』といったものですよね。これがギリギリ許されているラインなんですよ。なので、ゆいぴすさんのように痩せている女性が『こう(私みたいに)なれますよ』といって『マンジャロ打ちな』というのは明確にアウトです」

こうした専門家の指摘に対し、溝口氏は「ただの広告モデルの発信」「適応外使用は歴史上よくあること」と主張している。

課徴金制度の水準に疑問の声 ペナルティと利益のバランスが論点に

今回の騒動で注目を集めているのが、2021年の薬機法改正で導入された課徴金制度の水準だ。

同制度では、虚偽・誇大広告に対するペナルティとして「違反期間中の対象商品の売上額の4.5%」を課すとされている。仮に対象ビジネスで10億円の売上があったとすれば、課徴金の計算上の上限は4,500万円となる。

GLP-1受容体作動薬を用いた自由診療ビジネスは利益率が高い傾向があるとされており、「売上の4.5%という水準では抑止力として十分でない可能性がある」と制度の実効性を疑問視する声がある。行政処分を受けることが事実上のコスト計算に収まりうる構造への懸念として、識者や業界関係者の間でも議論が起きている。

『LAST CALL』の構成とルッキズム訴求への批判

今回の騒動の発端となったキャバクラ嬢オーディション番組『LAST CALL』をめぐっても、その内容と関連ビジネスの関係性が問われている。

番組ではゆいぴすのような人気出演者が審査員として登場し、番組内や周辺では美容クリニックの宣伝が展開される。視聴者が外見への関心や向上欲求を高めやすい構成の中で、出演者が特定の医薬品や施術を紹介するという流れに対し、「外見コンプレックスに訴求した誘導的な設計ではないか」との批判が出ている。

溝口氏はこうしたビジネスを「テクノロジーによる救済」と表現しているが、マンジャロの目的外使用を推奨するような情報発信との関連については、批判的な見方が根強い。

本来の患者への供給不足と制度的課題

マンジャロをはじめとするGLP-1受容体作動薬の美容・ダイエット目的での需要拡大は、本来の2型糖尿病患者への供給に影響を与えているとの指摘も相次いでいる。

厚労省はこれまでも目的外使用について「安全性および有効性が確認されておらず、副作用による健康被害につながるおそれがある」と注意を促してきた。今回の騒動は、インフルエンサーを活用した医薬品マーケティングの実態と、それを規制する制度の現状について、改めて社会的な議論を呼んでいる。課徴金制度の水準を含めた法整備のあり方について、行政の今後の対応が注目される。

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