いわゆる“コロナ禍”以降、注目されているのがスマートリング(指輪型の小型ウェアラブルデバイス)によるSpO2(血中酸素飽和度)測定だ。スマートリングによる各種の測定は、急性および慢性疾患におけるバイタルサイン(生命兆候)検出の手段としても期待されているが、その精度については十分な検証がされていないのが実状だ。そこで鹿屋体育大学スポーツ生命科学系・高井洋平教授らの研究チームは、スマートリングによって得られたSpO2の値を、医療用のパルスオキシメータ(指先などに光を当て、皮膚を通してSpO2と脈拍数を測定する装置)と比較、その精度を検証する実験を行った。
この研究に関する論文はデジタル領域を中心に学術論文を広く掲載する電子ジャーナル「Journal of Digital Life」(ジャーナル・オブ・デジタル・ライフ)で公開されている。
呼吸器疾患や循環器疾患においては、肺での酸素交換や組織への酸素輸送が阻害されることによりSpO2の低下が生じる。よってSpO2は、新型コロナウイルス感染症をはじめとする呼吸および循環器疾患の、重要な診断指標として利用されている。しかしながら、スマートリングを用いたSpO2測定の精度に関する研究は限られており、その精度は医療用パルスオキシメータに比べて劣るという研究結果も報告されているという。
そこで研究チームは、運動習慣のある健康な成人男女10名を対象に以下の実験を行った。研究チームは、常圧常酸素環境(通常の環境)および環境シミュレータを用いた常圧低酸素環境(通常より酸素濃度が少ない環境)の2つの環境を用意。対象者はまず常圧常酸素環境下において、安静に仰向けの姿勢をとる。その状態で、スマートリングと医療用パルスオキシメータの両方で対象者のSpO2を測定する。その後、常圧低酸素環境に移動し、同様の状態で測定を行うというものだ。
その結果、スマートリングによるSpO2の平均値と、医療用パルスオキシメータにおけるSpO2の平均値との間に有意な差は認められなかった。この実験によるスマートリングのSpO2測定精度は、米国食品医薬品局(FDA)の厳格な基準にはわずかに満たなかったものの、国際標準化機構(ISO)8601-2-61で定められた基準は十分に満たしており、一般消費者向けのウェアラブルデバイスとしては十分な精度を有していることが分かったという。
以上からスマートリングは、現時点では医療用機器の精度には達していないとはいえ、バイタルサインを簡単かつ効果的に把握したいと考える健康志向の高い個人にとって、十分な実用性を有することが示されたとした。研究チームはまた、さらなる検証を通じて、スマートリングがより信頼性の高いツールとして発展するよう期待を述べた。

