低空飛行が続けば国益損なう
岸田首相は11月27日の参院予算委員会で、「宏池会(岸田派)としては訂正を要するような案件はなかったと報告を受けている。他派閥の政治団体についてはそれぞれ独立して会計を行っているので、責任を持って説明をするべきであると考えている」と述べた。
歴代首相の多くが派閥を離脱してきたのに、派閥にとどまり続けた総裁ならではの発言だろう。それにしても、なぜ、自民党総裁として「すべての派閥の膿を出し切る」と言えなかったのか。
今回の問題は本来、「内閣総辞職に相当する出来事」との指摘も多いが、岸田首相自身は周辺に続投の意向を示している。
ある中央省庁の幹部は最近、岸田首相から「(いい政策が)何かないか」と聞かれて驚いたという。首相には「日本のために、この政策を実現しなければならない」という使命感は感じられない。有力な「次の総理」候補がいないという事情だけで、低空飛行の政治が続くことは、変化の激しさを増す国際情勢の中で、日本の国益を損なうのではないか。
岸田首相は7日、「私自身が先頭に立って、政治の信頼回復に向けて努力したい」と語った。だとすれば、政治生命をかけて自民党再生策を打ち出し、即座に取り組むべきだ。言葉だけでなく、現実の行動に移さなければ、国民の信頼を取り戻すことなどできない。
■岩田明子(いわた・あきこ) ジャーナリスト・千葉大学客員教授、中京大学客員教授。千葉県出身。東大法学部を卒業後、1996年にNHKに入局。岡山放送局で事件担当。2000年から報道局政治部記者を経て解説主幹。永田町や霞が関、国際会議、首脳会談を20年以上取材。昨年7月にNHKを早期退職し、テレビやラジオでニュース解説などを担当する。月刊誌などへの寄稿も多い。著書に『安倍晋三実録』(文芸春秋)。