「お茶ぶちまけた」イライラの原因に男性更年期障害 予防のカギは仲間づくり

中高年男性を襲う心身の変調の背景の一つに、「男性更年期障害」が指摘されている。男性ホルモンである「テストステロン」の急減で、身体的な症状に加えイライラや抑鬱、集中力の欠如などが起こり、家庭や職場の人間関係をこじらせてしまうというのだ。専門家は、男性が社会的な居場所を持つことが予防のカギだという。11月19日は「国際男性デー」。男性が人生後半戦を豊かに過ごすヒントを探った。

夫婦仲にも影響

「温厚な人だったのに、怒鳴るようになった」「職場の男性がイライラして、お茶を手で払いのけて、床にぶちまけた」

更年期に関する啓発を行うNPO法人「ちぇぶら」には、女性から身近な男性の変化について、こんな相談が寄せられる。永田京子代表理事は「増えたのは、ここ数年のことだ」と話す。

メディアで男性の更年期障害が報じられる機会が増え、周知されてきたこともある。なかには「(変調をきたした)夫と一緒にいるのがしんどい」と打ち明ける女性もいるという。

「おっくう」はサイン

男性更年期障害は、男性ホルモンのテストステロンが加齢やストレス、環境の変化などで急激に減少することで発症する。

男性更年期障害になると、心身に多様な症状が表れる(表参照)。順天堂大学大学院の堀江重郎教授は「最初は面倒くささやおっくうに感じることから始まり、少し症状が進むとイライラが表れる。笑わないし、面白くない様子も見てとれる。このような変化は男性更年期の症状と考えたほうがいいサインです」と話す。

「承認」で増える

男性更年期障害に大きく影響しているのがテストステロンだ。堀江教授はテストステロンの機能を、狩猟時代の人間の営みを例に説明する。

「狩りを成功させるのに必要な、出かける『意欲』、どこに獲物がいるかを把握する『認知力』、それらを支える『体力』。男性のこうした面を担っているのがテストステロンです。獲物を持ち帰り、家族から『承認』されることで分泌が増えると考えられます」

堀江重郎・順天堂大学大学院教授

現代では、仕事で活躍することが〝狩りの成果〟だ。「会社員の場合、『役職定年』や『定年退職』はテストステロンの分泌を低下させ、男性更年期障害の引き金になり得る」と、堀江教授は警鐘を鳴らす。

近年の研究では、テストステロンの分泌は、幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」や「ドーパミン」の分泌とも連動することが分かってきた。テストステロンの減少が、イライラや抑鬱を招く背景には、こうしたメカニズムが関わっているそうだ。

「居場所」を持つ

では、テストステロンを増やすにはどうしたらいいのか。

堀江教授が中高年男性に勧めるのは、職場だけでなくボランティアや地域コミュニティーなどで役割を得て、感謝されたり、必要とされたりする実感を持つことだ。競争もテストステロンの分泌を促すことから、他者とともに楽しむスポーツや、仲間と切磋琢磨(せっさたくま)する習いごとは有効だという。

競争しなくても、運動自体に効果があるので、ウオーキングやストレッチなどもよい。テストステロンは寝ている間に分泌するため、十分な睡眠時間の確保も必要だ。

堀江教授は「更年期と呼ばれる時期は人生のハーフタイム。一時的にテストステロンが下がっても、生活改善や治療で分泌は戻ります。男性更年期障害の自覚症状があれば、人生の後半を豊かに過ごすためにも泌尿器科を頼ってほしい」と呼びかけている。(篠原那美)

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