被曝リスクを検証する(上)

命奪うのは放射線ではない 10万人検査の医師が報告した真のリスクとは

【被曝リスクを検証する(上)】命奪うのは放射線ではない 10万人検査の医師が報告した真のリスクとは
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 小さな診察室に穏やかな空気が流れた。

 「大丈夫。今の生活で食べているものは、何も問題ありませんよ」

 子供が被曝していないか不安そうな母親をなだめるように、医師の坪倉正治さん(34)は言葉をかけた。「ありがとう」。女の子がはにかむと、坪倉医師は185センチの長身をかがめて「どういたしまして」とほほ笑んだ。

 東京電力福島第1原発から北に約23キロ離れた福島県南相馬市立総合病院。坪倉さんは東大医科学研究所に研究員として籍を置きながら、週の半分をここで過ごす。毎週火曜日の午後は、乳幼児専用のホールボディーカウンター(WBC)「BABY SCAN(ベビースキャン)」を使い、6歳以下の児童の内部被曝量を測定している。体外から放射線を浴びる外部被曝に対し、飲食物から被曝する内部被曝は、健康への影響がより大きい。

 この日、長女(5)の検診で訪れた女性(36)は、平成23年3月の東京電力福島第1原発事故で、まだ生後3カ月だった長女とともに県外へ避難し、2年ほど前に南相馬市の実家に戻った。

 「子供に内部被曝の検査を受けさせていないことが、ずっと心に引っかかっていた」。結果を聞き、「ほっとした。2人目も安心して育てられる」。間もなく生まれる新しい命に語りかけるように、大きくなったおなかをさすった。

■   ■ 

 坪倉さんが南相馬市に入ったのは、原発事故から約1カ月後の23年4月。これまでに南相馬市と周辺自治体の延べ10万人以上の内部被曝検査に携わってきた。

 また、南相馬市が事故後、全市民を対象に希望者に配布したガラスバッジ(個人線量計)のデータ延べ約5万人分の解析も進めるなど、現場の医師としては唯一、「内部」と「外部」の両方から住民への影響を調査し続けている。

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