観客動員数が1000万人を、興行収入が130億円を突破したアニメ映画「君の名は。」(新海誠監督)。大ヒット作の舞台のモデルになったという岐阜県飛騨市を訪れるとファンの「聖地巡礼」で観光が活性化する可能性が見えてくる。
「もうすぐ電車が来ます。シャッターチャンスですよ」
JR東海の高山本線飛騨古川駅で、駅員のアドバイスに慌てて階段を上がる。お目当ては陸橋の上からプラットホームと線路沿いの町並みを眺める、映画とほとんど同じ風景。これに停車している特急ワイドビューひだが加われば映画のワンシーンを記念写真で再現できるのだ。飛騨市役所観光課は撮影スポットの窓の近くに特急の時刻表と「時間まで街中探索を楽しんでね!」と手書きで記した紙を貼り出し、町おこしに意欲を見せているようだった。
駅から10分ほど歩いたところにある飛騨市図書館では、物語で重要な役割を果たす伝統工芸品・組紐を耳に巻いたミッフィーのぬいぐるみが出迎えてくれた。職員が映画のファンに柔軟な対応をし、SNSでの情報拡散を呼びかけたのが話題になったことから、飛騨市図書館は聖地の中でも特に人気になっている。館内で撮影をしたいと申し込むファンは8月26日の公開から増え続けており、9月上旬では休日に4〜5組だったが9月末の時点では「休日に200人、平日でも100人以上の方が希望する」(図書館職員)そうだ。
「君の名は。」に関連する書籍を置く特設コーナーには来館したファンの声を貼り出すコルクボードが設置されている。「君の名は?どこから来たの?」との問いかけに答える格好で映画の感想なども自由に書いていいようだった。目立ったのは交通の便が比較的良い名古屋から来たという書き込みで、北海道や福岡などの遠隔地からも訪れた人もいた。見たところ海外からは「香港から来た ラム」の一件だけだったが、海外での上映が始まれば世界中からファンが集まることになるかもしれない。
飛騨市では東京から来た聖地巡礼のベテランとも出会った。この会社員男性は、あまりメジャーではないゲームの舞台になった場所へも足を運ぶ猛者。今回は「宿の予約もしないで来てしまった」と顔をほころばせ、9月末まで都内で行われた「君の名は。」スタンプラリーで獲得したスマホの壁紙を見せてくれた。
観光の新たな目玉に?
映画のヒットと同調するように飛騨古川付近の交通期間の利便性が向上し、彼のような観光客を受け入れる体制が整いつつある。
京王電鉄バスは1日から高速バスの新宿〜飛騨高山線の一部を延伸し飛騨古川駅への乗り入れを開始した。同社によると映画と延伸運行には直接的な関係はない。今のところ一日一往復で、利用者数を見ながら増便を検討するという。
また飛騨古川駅から電車で約15分の高山駅(高山市)の新駅舎が1日に完成し利用しやすくなった。高山市役所観光課は「君の名は。」が同市の観光に与える影響は未知数だとしているが、江戸時代の風情を残す観光名所・古い町並みがあり宿泊施設が充実していることがプラスに働くことは十分考えられる。
奇しくも今夏公開のアニメ映画「ルドルフとイッパイアッテナ」(湯山邦彦監督・榊原幹典監督)と「聲(こえ)の形」(山田尚子監督)も岐阜が舞台だとされている。世界遺産の白川郷、飛騨高山といった名所を有する同県にとって聖地巡礼が観光の新たな目玉になるかもしれない。(産経デジタル 野間健利)
