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王様のいる町から(2)“王国テレビ”の絶妙なバランス感

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王様のいる町から(2)“王国テレビ”の絶妙なバランス感

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式典に出席する王とその従者たち。中央で手を組んでいるのがバムン王=カメルーン(小野洋文撮影) イザ!海外特派員 青年海外協力隊・小野洋文〔カメルーン〕 わが町、人口約12万のフンバン市は、かつてバムン民族による「バムン王国」が栄えた都市で、今も王がいる。そのことを「まるで鹿児島県に今も薩摩藩があるみたいだ」と前回書いた。現代の行政システムとは別に、王もまたこの地域で一定の権力と影響力を保ち続けている。

 自分はこの町のテレビ局で活動しているのだが、王を薩摩藩の島津斉彬公になぞらえるとすると、実は「篤姫」たる王の“プリンセス”がテレビ局の設立者だ。

 “プリンセス”といっても、前王の娘を慣例でそう呼んでいるだけで、現在の王の妹にあたる。たまに顔を出して局内を視察したり、大きな会議に出席したりしていて、同僚たちが彼女に話しかける時、たまにうやうやしく「(内親王)殿下」などとも言っている。ということで、このテレビ局はいわば、“王国テレビ”といえる。

 “王国テレビ”では「バムン民族」と「バムン王国」の歴史と伝統を今に伝えるための番組作りや、王室の活動を紹介するための番組作りが大きなウエイトを占めているものの、政治や社会問題、町の話題なども交えて放送されているので、極端に偏っているわけでもない。

 今の王は、伝統勢力の王でもある一方で、若いころからカメルーン中央政府の閣僚を歴任し、今も上院議員を務めるなどして「現代と伝統のバランスをとっている王」と評されている。それと同じように“王国テレビ”でも、現代的な事がらと伝統的な事がらがうまくミックスされているようだ。

 先日は、自然の風景に音楽をつけただけの簡単な番組を編集制作した。日本でもよく夜中に放送している「映像散歩」みたいな番組だ。

自分が映像に好き勝手な音楽をつけていると、同僚がやって来て「あ、音楽はバムンの民族音楽にしてね」と言う。なるほど、と思ったが、そのくらいの温度だと思うと分かりやすい。

 これまでに何回か、王の出席する式典や囲みインタビューの取材撮影をした。式典の最後は王のスピーチで締めくくられる。そのスピーチを聞いていると、用意された原稿を読み上げたあと、王は最後に少し声のトーンを変えて、必ず自分の言葉で話している。ユーモアなどもまじえて聴衆の笑いもとっている、その姿からは、威厳を保つだけでなく、住民たちから愛される親しみ深い王の人柄が感じられた。

 撮影はいつもかなりの至近距離からおこなっているので、王の方でも「毎度毎度、なんだか珍しい東洋人がいるな」と思っているに違いない。個人的に話しかけられるタイミングや雰囲気は何度かあったのだが、そうは言っても王はやはり王たるオーラを放っているので、若干圧倒されて、自分にはまだその勇気がない。

■小野洋文(おの ひろふみ)

  山梨県出身。テレビ番組ディレクターとして12年間放送局制作会社に勤務し、情報番組や教育・教養番組などを担当。退職して青年海外協力隊に参加し、2013年8月からカメルーン共和国の地方テレビ局にてボランティア活動中。配属先の番組制作の構成、撮影、編集などの能力向上を目指して協力している。

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