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大栄翔活躍…世代交代完遂が新時代到来となる 植村徹也

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初場所10日目、北勝富士を突き出しで下す大栄翔 =両国国技館(撮影・塩浦孝明)   1/1枚  【鬼筆のスポ魂】

 「初場所の救世主」の原動力は、徹することにある。自分の型を信じて突き進むことが、快進撃を生んでいるのだ。初日から8連勝を飾り、終盤を迎えても優勝争いに加わる西前頭筆頭、大栄翔(27)=追手風部屋=の気っぷのいい押し相撲が、窮地の角界を救っている。八角理事長(元横綱北勝海)が「初場所の救世主だ」と絶賛したのもうなずける活躍だ。

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 相撲解説者の北の富士勝昭さん(元横綱)が「これじゃあ、大相撲ではなく小相撲だよ」とため息を漏らした大相撲の初場所(10日初日~24日千秋楽)。新型コロナウイルスの影響で横綱白鵬を含めて初日から関取15人が休場し、横綱鶴竜も腰痛を訴えて不在。今場所に綱取りを目指していた東大関貴景勝も9日目までで2勝7敗となると、10日目に「左足関節靱帯(じんたい)損傷」の診断書を提出し、休場した。これで十両以上の休場者は17人。平成14年名古屋場所の16人を上回り、戦後最多となった。

 取組を作る方も苦労する厳しい状況で、土俵を沸かせているのが大栄翔の突き押し相撲だ。立ち合いから相手を吹き飛ばす威力は、すごみを増している。その裏側には「徹する」ことへの強い気持ちと“誘惑”に乗らない駆け引きがあった。

 まだ大栄翔が前頭の下の方で相撲を取っていた4年前。春場所前の激励会で会話したとき、こんなことを話していた。

 「僕は『四つに組むと力は幕下より弱いんだぞ』…って親方(追手風親方=元平幕大翔山)からいつも言われてますから。なので、絶対に組まないようにって思っています」

 親方の言葉通りに突き押し一本で順調に幕内上位に上がっていったのだが、初の三役に昇進した頃から、厳禁だったはずの「四つ相撲」に“持ち込まれる”場面が見受けられるようになった。もちろん、そんな取り口の結果は黒星…。

 背景にあったのが、相手力士の研究だ。大栄翔はアマ(埼玉栄高)時代は「左四つ」でも相撲を取っていたそうで、突き押し一本ではなかった。相手力士は突き押しを防ぐため、ひっぱり込んで四つになろうと研究する。立ち合いからの攻防の中で、意識的にやや右脇を甘くし、大栄翔の左腕を“入れさせる”ための罠(わな)を仕掛けてくる。そこが、幕内上位の厳しさでもあった。

 「それは分かっているんですけど…。根が左四つもあったので、自然と左が入ってしまって…。絶対に誘いに乗らないようにしていきますよ」

 幕内上位に定着した頃には、相手力士の“誘導”にはもう乗らず、邪心を抱かない…という強い覚悟を口にしていた。破壊力満点の押し相撲を継続できているのも、上位陣の洗礼を克服した成果だろう。

 それにしても取組表の休場欄には、まるで“もうひとつの取組表”があるのか?と思うほど、休場力士のしこ名が並んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大の影響をモロに受けたこともあるが、両横綱にいたってはこれで4場所連続の休場。鶴竜などは「腰の状態が…」と陸奥親方(元大関霧島)が話したものの、正式な診断書などの提出はあったのだろうか…。いまどき中学生や高校生でも、学校を休むときは病院の診断書を提出するだろうに…。場所前に横綱審議委員会から「注意」の決議があったばかりなのに、全く「ぬかにくぎ」「のれんに腕押し」ではないだろうか。

 大関以下の力士の奮闘は見ていても心躍るが、やはり最高位の横綱が土俵を締めてこそ。大栄翔ら中堅から若手力士にはもっともっと力を蓄え、最高位を目指して稽古に励んでもらいたい。世代交代を完全に成し遂げることが、角界に新時代到来を告げる。 (特別記者)

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