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九重部屋を襲った14人“時間差クラスター” 集団生活では感染防げず…それでも胸張る相撲協会の常識外れ

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産経新聞

先代師匠の元横綱千代の富士の銅像がある九重部屋。健在なら今の相撲協会に何と言ったか 1/2枚  大相撲初場所前に4人の新型コロナウイルス感染者を出し、親方や力士ら全員が初日から休場していた九重部屋(東京都墨田区)で、新たに10人が陽性判定を受け、感染者が計14人となるクラスターに発展した。消毒などが行われていたが当初のウイルスが部屋に残っていたことで、さらに感染が広がった可能性が高いという。芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「部屋単位でロックアウトという形をとり、全員を全休としたことは対応としてはよかった」と胸を張るが、大部屋で幕下以下の力士たちが集団生活を続けているのが相撲部屋。現在のままの感染対策で、昨年5月に28歳の力士が亡くなった悲劇の再発を防ぎきれるのか。 (塚沢健太郎)

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 芝田山部長は18日深夜、九重親方(44)=元大関千代大海=と弟子で幕下以下の力士4人の感染を発表。一夜明けた19日、新たに幕下以下力士4人と行司1人が感染したことを明らかにした。

 初場所前の8日には、全協会員を対象にPCR検査が実施されているが、このときにも九重部屋では、幕内千代翔馬(29)、十両千代鳳(28)、幕下以下力士2人の計4人の陽性を確認。27力士を含む同部屋の協会員が初場所を全休することとなった。ほかに感染者が出た宮城野(16人)、友綱(12人)、荒汐(10人)の各部屋も、全力士が初日から休場している。

 それから1週間以上がたち、九重部屋で新たに大量感染が発生。芝田山部長は「新しいクラスターが起きたというより、前回感染した人のウイルスが今になって出てきたということ。消毒をしていても発生する状況だから。最初にかかった人のウイルスが5、6日たっても残っていたということ」と説明した。

 それでも芝田山部長は「陽性者の出た部屋を部屋単位でロックアウトという形をとり、全員を全休としたことは対応としてはよかったということ。1つの部屋で収まっているし、場所への影響はない」と語り、ほかの部屋に感染が広がらなかったことをアピール。初場所の運営には影響がないことを強調したが、大事なのは興行より人命だろう。九重部屋で感染した4力士が入院となった事実は重い。

 そもそも最初の感染が判明して部屋を閉鎖した時点で、大部屋生活を送る検査陰性の力士らに対し、ホテルなどで隔離生活を送るよう協会が指示していれば、二次感染は避けられたはずだ。ところが現状の指針では、「症状が出ている者、基礎疾患のある者、専門家の先生が判断して。ほかの感染の者は部屋の中で、陰性の者とは隔離しながら生活している。全員入院じゃない。症状の軽い人は部屋にいる」

(芝田山部長)。感染者と一つ屋根の下での生活を続けさせているのだ。

 幕下以下の力士が集団生活を送る相撲部屋はクラスターの温床となってしまう。昨年の9月場所前には玉ノ井部屋の力士33人中24人が感染。初場所前にも荒汐部屋で力士全10人が感染した。いくら部屋の中で隔離したところで、ウイルスとは隣り合わせだ。

 昨年4月に感染が発覚した高田川部屋の三段目力士、勝武士さんは1カ月以上の闘病生活の末、入院先の都内の病院で28歳の若さで息を引き取った。重症化を招いたとされる糖尿病は職業病ともいえる。ほかにも基礎疾患を抱える力士は多く、感染後のリスクは一般の人よりはるかに高い。

 今場所前には序二段の琴貫鐵(22)=佐渡ヶ嶽=が、心臓の手術歴があることから「コロナが怖い」と休場を望んだが、協会に認められず引退を決めた。協会側の姿勢は芝田山部長が次のように述べた通りだ。

 「組織の中にはそういう人もいる。会社にもコロナが怖いから出社したくないって言う人もいるだろう。そういう者の1人。それをみんなが言っていたら仕事にならない。そのために協会は安全対策を取ってきた。それに対応ができないなら、本人が出処進退を考えるしかないということ。一丸となるなか、それは違うと思う。組織が成り立たない。でたらめな組織なら別ですよ。協会は感染対策をしっかりとしている」

 芝田山部長はスポークスマンとして矢面に立っているが、あくまで協会の方針を報道陣に伝えているに過ぎない。コロナ対策の方針を決めているのは協会執行部だ。九重部屋の感染者が10人増えたところで、「きょうは発熱者も検査もいない。発熱者も少なくなってきている。順調にきている」(芝田山部長)と、初場所を完走させる方針にはいささかの揺らぎもない。そして3月には大阪へ大移動し、春場所を開催するつもりでいる。

 緊急事態宣言下でも強硬路線を貫く協会に対して、立場の弱い幕下以下の力士たちの心中はいかに。九重部屋を襲った“時間差クラスター”は、いくら感染者が出た部屋を消毒して閉鎖したところで、そのまま大部屋生活を続ければ感染拡大のリスクが高いことを立証した。これから第2、第3の琴貫鐵が出ても何ら不思議ではない。

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  • 陽性判定を受けた現師匠の九重親方

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