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買い占め、恐怖、批判…感染者5万人超ドイツの今を円賀通信員がリポート

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産経新聞

ベルリン中央駅。普段はビジネスマンや観光客が行き交う駅前は閑散としている(撮影・円賀貴子) 1/1枚  【ベルリン29日】世界で猛威を振るう新型コロナウイルスは、欧州での感染が急速に拡大している。サッカー日本代表FW大迫勇也(29)=ブレーメン=らがプレーするドイツなど五大リーグも、中断を余儀なくされている。当地に駐在する円賀貴子通信員が、静寂の市民生活と取材現場の様子をリポートする。

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 1カ月前が嘘のようだ。世界三大映画祭の一つ、ベルリン国際映画祭が開かれた2月下旬から3月にかけて街は世界から駆け付けたファンでにぎわっていた。

 映画祭では是枝裕和監督と台湾出身のアン・リー監督との対談イベントもあり、私も足を運んだ。会場は収容1000人ほどのホールで、半数以上はアジア圏出身者が占めていたように思う。中国やイタリアで新型コロナウイルスの感染が広がっているのは既に知っていたが、どこかひとごとだった。

 振り返れば、危機意識が希薄だったかもしれない。世界保健機関(WHO)によると、3月29日時点の感染症によるドイツの死者は397人。感染者は5万4000人を超え、欧州ではイタリア、スペインに次いで多い。今はもちろん外出が制限されているが、映画祭の頃は鑑賞に出かけた後に友人とバーやレストランに行ったりもした。

 3月の1週目に入ると、店頭からトイレットペーパーがなくなった。翌週にはパスタや小麦粉も売り切れ。ドイツではマスクを着ける習慣がないが、医療用のものは不足していると聞く。ベルリンは芸術やナイトライフでも有名。演劇、フィルハーモニー、クラブなどを楽しもうと普段は国内外から人が集まるが、今はどこも休業だ。ドイツ在住の日本人4万5416人(2018年10月時点)も、感染拡大の恐怖を肌で感じ取っているに違いない。

 サッカー元日本代表の長谷部誠選手らがプレーするドイツ1部フランクフルトでは、所属選手に感染者が出た。リーグは中断され、私も3月7日のヘルタ-ブレーメンを最後に取材する機会が失われている。この国には、あいさつとしてチークキスや握手を交わす文化がある。普段は他の記者ともするものだが、このときは控えた。ただ取材エリアで相手との接触距離などに規制はなく、大迫選手からも話を聞くことができた。

 このほど国際スポーツ記者協会からの配信で、スペインメディアで働くジャーナリスト2人が感染症で亡くなったと知り恐怖を覚えた。知人から聞いた話では、感染者が多いマドリードはドローンを飛ばし、外出する住民がいないか監視しているという。

 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長はドイツが母国。五輪の開催について当初はWHOから勧告があれば「従う」と発言し、24日になってようやく延期を決めた。国内メディアは批判の矛先を会長に向けていて、WHOに判断の責任を転嫁しようとした姿勢に厳しい声が上がっていた。 (円賀貴子)

■円賀 貴子(まるが・たかこ)

 1971(昭和46)年4月24日生まれ、48歳。宇都宮市出身。2003年からサンケイスポーツ通信員。08年からベルリン在住。サッカーを中心に担当し、06年W杯ドイツ大会や欧州チャンピオンズリーグ、ドイツ1部などを取材。テニスのウィンブルドン選手権や全仏オープンも取材してきた。

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