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「知らんけど」も炸裂、ぼっち大学生ユーチューバーのセンス

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初めての著書「ひとりの時間が僕を救う」を出版したパーカーさん。夏場は通気性のいい七分袖のパーカーがお気に入り=神戸市中央区 1/2枚  人見知りで、「コミュ障」(コミュニケーション障害=他人との交流が苦手な人)を自称する男子大学生の動画が、ひそかな人気を呼んでいる。神戸大2年のユーチューバー、パーカーさん(21)。昨年6月にチャンネルを開設してから、登録者はすでに46万人を超え、今夏には初のエッセー本も出版。飾らず、淡々とぼっちで過ごす-。一見自虐的、でも実はポジティブな語り口にハマる人が増えている。(中井芳野)

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 ■“陰キャ”のユーチューバー

 「はい、どうもパーカーです」。動画はいつも、のんびりしたあいさつから始まる。トレードマークは撮影時に欠かさず着用するパーカ(黒、ベージュ、青の3色展開)、そして気恥ずかしそうに笑う表情だ。

 本人は自らを人と話すのが苦手な「陰(いん)キャ」(根暗なタイプ)と説明するが、動画内ではいつも冗舌だ。

 自称するコミュ障ゆえの失敗談、友達のいない学生生活の過ごし方を気取らず淡々と話していく。自分で何かを断定したと思いきや、すぐに「知らんけど」。若干の照れや卑屈さを感じさせる言葉選びのセンスが見る人を引きつける。

 「僕ね、大学1年の時にスターバックスのバイトを受けたことがあるんですよ」「完全にイキってますよね。大学ぼっちのくせにスタバで働こうとか」

 そんな彼の魅力が存分に発揮されているのが、171万回も再生されている人気動画「スタバのバイト採用に落ちた話」。

 途中まで順調だった面接の流れは、「大学でのキャラクター」を問う質問で一変。「正直に大学ぼっちで友達はいないですから、学食もいつも1人で食べてます」。だが、そう正直に言うと落とされると思い「誰とでも話せて明るい性格」と「大嘘フェスティバル」を繰り広げたという。

 苦戦しながらも手応えはあったが、結局採用の連絡は来ず。「普通に人とコミュニケーションがとれる大学ぼっちだと思ってたんですけど、ただの陰キャだったと自覚が芽生えたんですよね」。コメント欄には「暗い内容の話なのに途中からのBGMが明るすぎる」と次々とツッコミが並び、視聴者が明るい気持ちになっているのが分かる。

■挫折からの一念発起

 気が付けば人の顔色をうかがうくせがついていた。京都の高校時代までは友達はいたが、相手に合わせてばかりで自分の意見を伝えることは大の苦手だった。

 “堂々”とぼっちの道を歩き始めるきっかけとなったのが、神戸大海事科学部に入学してすぐのこと。登校初日、「陽(よう)キャ」(陽気なタイプ)の同級生に声をかけられ、サークルの見学会に一緒に行く約束をしたが、その当日、同級生から「体調が悪くなった」と連絡を受けて、ほっとしている自分に気が付いた。

 以降、無理に人と合わせる必要を感じなくなった。「それまでは周りを気にして、1人でいることが怖かったのかもしれません」

 1人暮らしも始め、ぼっち生活を謳歌(おうか)しながら、以前から興味のあったコンピューターについて学ぶため筑波大の編入試験を受けたが、不合格に。「急に目標を失い、今後の自分が見えなくなった」

 そこで、1年間の休学を決意し、時間を埋めるためバイトにいそしんだ。ユーチューブを見つけたのはそんなとき。普通の日常を発信する投稿者の姿に「できるかも」と背中を押された。

 昨年6月にチャンネルを開設。自身のぼっち生活をありのままに話す動画をアップすると、思いのほか反響があった。「ぼっちを悪く考えず自分らしく生活しているの、かっこいいな」。コメント欄はそんな応援や共感の声で埋まった。

 「ぼっち大学生の一日」シリーズでは、遅刻した登校中の様子や学内の空きルームでインスタントラーメンをほおばる姿など気ままに過ごす日常の光景が人気となっている。

 今年6月にはエッセー「ひとりの時間が僕を救う」を出版。一時はアマゾンの売れ筋ランキングで1位になるほどだった。

 ■独りぼっちは80点

 「人に合わせながら過ごす人も多いなかで、僕は新鮮にうつるのかもしれません」。共感や支持を得ている理由をたずねると、パーカーさんは静かにそう答えた。同時に「ただ、ずっと1人でいるからこそ、人と会う時間をより楽しめるんです」とも。

 パーカーさんの場合、人とのつながりが多すぎると、自分を見失ってしまう。だが「本当の独りぼっち」は80点の人生だという。

 残りの20点は、大切な人との時間によりもたらされる。「ぼっちになることでそのことに気付けました」

写真一覧

  • スターバックスにはアルバイトの面接で落ちてからも通い続けている=神戸市中央区

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