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「マニアックな本はぜんぶ消滅」「一種の文化断絶」出版物の総額表示義務化反対の声広がる 綾辻行人氏、吉田戦車氏など著名人が続々リツイート

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現在は「本体価格+税」との表示が可能で、消費税率が変わってもそのまま販売を継続できる 1/1枚  16日、ツイッタートレンドで「#出版物の総額表示義務化に反対します」というハッシュタグがじわじわランクをあげ、同日午後ついに1位に到達した。中国史関連の書籍などを出版している「志学社」の代表取締役、平林緑萌氏が発信したもので、著名な作家や漫画家をはじめ、編集者、書店員、そして一般の読者などの本にまつわるさまざまな関係者の投稿によって拡散している。

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 出版物の総額表示義務化とは、書籍自体またはカバーへの表示を税込価格に変更することを義務づけること。店頭に陳列される期間が長くなり、その間に税率が変更される可能性のある出版物は特例として2021年3月31日まで義務化が免除されている。しかし、文化通信社のネットニュース「The Bunka News」が14日、11日に業界団体が開いた勉強会に出席した財務省主税局の課長補佐から、「基本的に(特例は延長せずに)終わるとの前提で進めてほしい」との説明があったと報じ、これに危機感を抱いた平林氏が反応。前述のハッシュタグをつけて「おのれ財務省……(詳しく説明すると長いのでアレなんですが、とにかく七面倒くさいことになり、少なからぬ出版物が品切放置せざるを得なくなる可能性がある)」とツイートしたところ、じわじわと共感の輪が広がった。

 このままいくと、税込価格表示されていない書籍は出版社が回収し、税込み価格のシールを1冊ずつ手作業で貼ってから、再び書店に送り直す作業が必要になる。往復の配送やシール貼り作業のコストを考慮すると、回収されたまま書店に戻らず絶版になる書籍が多数出る恐れがあるとの危機感が関係者の間で共有されている。

 作家では、綾辻行人氏が「普通に考えて、この国から『紙の本』がどんどん消えていく未来しか見えません。それが『望ましい未来』であるとは私には決して思えない」と訴えている。このほか、似鳥鶏氏は「出版業界に緊急事態が発生しています。これを通されたら小さい出版社はのきなみ潰れ、ちょっとマニアックな本はぜんぶ消滅します」とコメント。近藤史恵氏は「私は消費税がカバーに印刷された時期も知ってるけど、本当にたくさんの本が手に入らなくなって、絶版を余儀なくされたんですよ……消費税さえなければ生き残れたはずの本が」と読者の立場で投稿。同じように作家の小森健太朗氏も「30年前消費税が導入されたとき、角川文庫から出ていた日本ミステリがゴッソリ消えたことがあって、鮎川哲也全部、泡坂妻夫全部、横溝正史の金田一耕助もの以外、高木彬光も大部分? ちょうどその頃、角川文庫で日本ミステリをよく読んでいた頃だったのに新刊が一挙に消されて途方にくれた(中略)あのとき読みたいミステリ文庫を読めなくされたのは、日本で私以外にも大勢いたはずなので、あれは一種の文化断絶みたいなものと呼べる事態だったと思います」と経験に基づいて警鐘を鳴らす。

 漫画家の吉田戦車氏は「消費税減税、廃止も視野に入れてほしい、多くの人が喘いでいるこの時代にやらなくていいことだろ」と、税制そのものにも言及。同じく漫画家の喜国雅彦氏は妻の国樹由香氏と共同名義のアカウントで「天下の横溝正史先生ですら、消費税導入のとき『カバーをかけかえたら儲けが出ない』と、それまで出ていた90作のうち70作が絶版になりました。あの横溝先生が!です。消費者の利益といいながら結局は消費者の不利益になる」と人気作家の作品、大手出版社の商品であっても安心できないと指摘している。

 出版社では、「百万年書房」代表の北尾修一氏が「いま取次(書籍卸業者)の方と会って話してきた。来年3月31日にあわせて総額表示されていない市中在庫がすべて返品されてくる。→返品金額にその月の搬入金額が食われて売上激減もしくはマイナス。→戻ってきた返品は、スリップの差し替えorカバー表4(裏表紙)にシールを貼る」と、生々しい現場対応の実情を報告。

 編集者からは「体感として、出版の売り上げがゾットするほど落ちたときって、リーマンショックより何より、消費税が5%から8%に上がった時なんですよね。正直、政治ネタとか書きたくないけど、この政策、あなたの好きな本をころすよ、まじで」と景気後退よりも、税率変更のほうが出版業界に与える負の影響が大きいとの実感がつぶやかれた。

 現役書店員や書店勤務経験者と思われるユーザーからは「消費税導入の年、一書店員として現場を見てきた身として反対します。あの時、どれだけの本が絶版に追いやられたか…これは文化の大量虐殺です」「賞味期限のない本は、商品として何年でもお店に置くことができる。しかし総額表示だと税率が変わる度に入れ替えをしなくてはならない。また刷り直しとなれば紙を大量に使わなくてはならず地球環境にも厳しい」との意見も。

 業界に近い立場の政治団体「表現の自由を守る会」の会長でもある自民党の山田太郎参院議員も、この件について自身のツイッターで「出版物の消費税総額表示の件、財務省に確認。スリップ(書籍の間に挟んである紙)や『しおり』で総額表示していれば、カバーの再印刷などは必要ないとのこと。業界団体にも確認しましたが、現場での作業はあるが大きな影響はないだろうとのこと」と情報共有。「迅速な確認と発信はありがたい」「フットワークの軽さはありがたい」との好意的評価もあるが、「スリップ交換だけなら負担は軽いのでは」との見通しが反発を招いたようで、「スリップは廃止する出版社が増えているのに、それに逆行してますね。そもそも、スリップでもしおりでも、消費税率が変わるたびに再印刷して交換する手間(費用)がかかるのでは?」「書店員です。そのスリップやしおりの挟み込み、対応できない商品の返品等…作業量を考えただけで目眩がします。どこが『大きな影響はない』なのでしょうか。ただでさえコロナの影響で売上が減っている中、この様な作業で人件費は割けません」「業界団体の甘い見通しも呆れる 自分達で差し替え作業を一日中やってみてくれ」「カバーとスリップの価格が異なりますと、買うほうとしては混乱すると思います」など、現場の実態を知るユーザーから、批判的リプライが多数寄せられる状況になっている。

 フォロワーの多い著名人が軒並みに批判的な投稿をしていることもあって、全体のトーンは批判一色という印象だが、「むしろ #出版物の総額表示義務免除を要望します の方がより将来に希望がもてると思うのです」と「反対」を「現状維持の要望」と言い換えた方が成果を得られるのではないかとの意見や、「これから版をつくるものは総額表示に変えるから、既に印刷したものや版を修正することが難しいものはこのままで可としてくれ、というような、イチかゼロかではない提案も必要だと思います」との折衷案なども見受けられた。

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