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「全員検査せよ!」“煽りワイドショー”などへの対抗策 非常時はNHK-BSを「政府専用チャンネル」に

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産経新聞

テレビ朝日 1/1枚  【有本香の以読制毒】

 「何かをやれって言われたときに、『できません』という人間って、一番使えない人間なんですよ! どんな社会でも」

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 朝っぱらから、威勢のいい根性論が聞こえてきた。まるで居酒屋あたりで聞こえてくるオヤジの説教のような長ゼリフは、さらに続いた。

 「『これがあるんでできません』『これがあるんでできません』…。じゃあ、お前もういいと(=手を降って要らないという仕草)。やっぱり有能な人間というのは『これをやりなさい』と言われたら、障害があったとしても、何らかの方法でそれを突破して実現するんですね。検査に関して言えば、今そういうことです」

 検査? 一体何のことかとテレビ画面を見ると、声の主は、テレビ朝日の社員コメンテーター、玉川徹氏であった。同局朝の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」(1日)での一幕だ。

 玉川氏の発言の最後に出てきた「検査」とは、先月来、氏がご執心の新型コロナウイルスのPCR検査のことである。

 2月以降、「モーニングショー」で連日繰り広げられた「PCR検査しろ、しろ」攻撃はすさまじかった。

 「なぜ、日本は希望者全員にPCR検査をやらないのか」「国は感染者数を低く抑えたい、実態を隠したい意図でもあるのではないか」

 1カ月以上、玉川氏はこう訴え続けた。氏がテレビ朝日の社員であることを考えると、この「とにかく全員を検査しろ」が、同局の社論なのかとも思われる。

 スタジオには玉川氏の援軍も陣取っていた。例えば、ジャーナリストの青木理氏や、一部の「専門家」らも声をそろえて、「検査」「検査」と煽りに煽ったのだ。

 ちなみに、作家の百田尚樹氏が代表理事、米カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏、経済評論家の上念司氏と筆者が理事を務める一般社団法人「放送法遵守を求める視聴者の会」(東京都港区)の調査では、モーニングショーの「PCR検査」報道の放送時間配分は次のとおりである。

 3月16~20日の「モーニングショー」での新型コロナウイルス関連話題の全放送時間のうち、実に39%が「全員検査せよ」という主張に割かれていた。これに対して、「全員検査に反対」という主張の放送時間はわずか8%に過ぎない。

 これを放送法(第4条)に照らして、政治的公平性が担保されていない、偏向報道の疑いあり、と物言いを付けると、いや「全員PCR検査」は政治的意見とは言えないとの反論があるだろう。

 だが、さにあらず。こうしたワイドショー的「国民の気持ちの代弁」こそが、特定の政治的意見を巧みに視聴者に刷り込む典型的手法の1つだ。そして、今回の件もまた、趣旨は同番組お得意の政権批判への誘導と思わざるを得ない。

 しかし、玉川氏らの奮闘の甲斐なく、今や巷の一般人から、「検査をしてもらえないのは不安」という声はあまり聞かれない。モーニングショーの煽りは効かなかったのである。

 反対に、徐々にではあるが、次の3点について国民の理解は進んでいる。

 (1)PCR検査の精度は(それほど)高くない(2)韓国では、その結果を信じた疑陰性(=感染しているのに検査で陰性と判定される)者が動き回って感染を広げ、一部で医療崩壊が起きた(3)日本ではCTの検査などにアクセスしやすく、そうした結果で感染の疑いが濃厚な者からPCR検査すればよい-と。

 モーニングショー関係者の皆さんは、日本の視聴者の知的レベルをナメてはいけない。そして、テレビの影響力、テレビが流す情報への信頼度が近年著しく低下していることを真摯(しんし)に受け止めるべきではないか。

 ここで1つ、日本政府に重大な提案をしたい。

 新型コロナウイルスとの闘いには、国民の総力を結集しなければならない。その妨げの1つが、デマ、誤誘導である。これへの対抗策として、政府は、公共放送たるNHKの複数あるチャンネルの1つ(BSなど)を政府に返還させ、「期間限定・政府専用チャンネル」とし、リアルタイムで政府発表情報を流し続けてはどうか。この中で、巷のデマや、マスメディアの誤誘導も随時打ち消せばよい。

 フェイクニュースの害から国民を守るため、「弾圧だ!」との批判を覚悟で「えいや!」とやる侠気(きょうき)を、安倍政権に期待したいところである。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

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