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床ずれ防止から生まれた自然体で長く座れる“道具”とは?

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おもちのように伸びて変形してもゆっくりと元の形状に復元するるエクスジェルが体圧を吸収分散する 1/1枚  人は、一日の8時間は寝ているとして、残りの16時間はどんな姿勢で過ごしているのか? おそらく、立つか歩くか座るかしているわけだが、実際、デスクワークをしている人なら座っている時間が一番長いという日も珍しくないだろう。そんな座る時間の品質を上げることができるのが体圧流動分散素材「エクスジェル」を活用したクッション。車椅子利用者から過酷なドライブ環境で戦うフォーミュラレーサーまで幅広く支持される知る人ぞ知る逸品だ。

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 「よい睡眠が次の日の活力になるといわれていますが、その次の日ではなく座った瞬間からお客様の生活を変える商品に真剣に取り組んでいます」と話すのは、医療・福祉分野で使われる樹脂製品を製造販売する加地(島根県仁多郡)の営業本部取締役本部長の塩谷俊之さん(54)。エクスジェルを活用したクッションを一言で表すと「身体に負担の少ない自然な座り姿勢にいざなうための道具」だという。

 「エクスジェル」は、手でつかむとおもちのように伸びる柔軟性のある合成ゴム素材。ただ柔らかいだけではなく弾力性にも優れ、体を安定して支持し、体圧を分散すると同時に流動性を併せ持つ。いわゆる高反発でも低反発でもない画期的な素材で、ゴルフボールを落としても全く弾むことなく力を吸収する。



 医療・介護分野で評価され、車椅子や介護用のクッションとして高いシェアを誇る一方、極限状態の中で座姿勢をキープしながらハンドル操作に専念するカーレーサーの運転環境でも使われるなどその活用範囲は広い。一時的な快適さではなく、自分の本来あるべき姿勢で長い時間を楽に座ることができる“道具”は、座ることに特別に苦痛を感じてきた車椅子生活の患者たちの声から生まれた。



□「支持」「分散」「流動」3つのバランスがカギ

 エクスジェルを開発した加地は、1969年にスポーツシューズの縫製協力工場としてスタート。地方の小さなメーカーながら、靴縫製の生産システムで特許取得のKSS(カジ・ソーイング・システム)を開発。全国の縫製業各社から導入依頼が入り、シューズ業界のみならず、バッグ含めた縫製業界では一目置かれる存在だった。塩谷さんは、そんな同社の企業姿勢に魅力を感じて95年にコンピューター業界から転じて入社。新たなビジネスチャンスを求めて社内ベンチャーとして立ち上げられた横浜営業所を拠点に営業活動を開始した。



 シューズメーカーからKSSを応用した靴の製造工場運営の依頼を受ける中で、シューズ製造工程におけるPL法対策PPC(ピンポインティングセメンティング機)を生み出したが、数年後には安い労働力を求めて縫製工場が中国など海外へシフトする流れが加速。そんな中、ある展示会で病院や福祉の現場で、寝たきりや車椅子で“床ずれ”に悩む人が深刻な状況に置かれているという話を耳にする。

 寝たきりや長時間座り続けることで圧迫され、皮膚がズレることにより、深刻な損傷を受ける床ずれ。「世の中が高齢化社会に向かう中、こうした問題を解消するような商品が今後は主力になるだろうという話をしていました」(塩谷さん)。床ずれについて何の知識もなかったが、そのメカニズムを徹底的に調べた結果、「支持」「分散」「流動」と3つのキーワードにたどり着いた。

 「人を適切に支えるにはこの3つのバランスがそろっていることが重要です。例えば、車のシートでも柔らか過ぎて支持力がないと体がバランスを取り続けるうちに疲れてしまいますが、逆に硬いと痛くなるため動いて体圧を分散させなければならなくなる。さらに、無意識に繰り返される体のズレにより皮膚と一緒に動く流動性が必要ですが、これが水のような状態では支持力がなくなってしまいます」



 これら3要素を満たすため、試行錯誤の果てに生まれたのが高反発でも低反発でもない体圧流動分散素材「エクスジェル」。従来のウレタンフォームよりお尻に集中する圧力を包み込むように分散する。また、写真の桃ように皮膚だけが動いて破れてしまうウレタン素材とは異なり、皮膚の伸びを極力避けることができるという。

□介護と医療の現場からノウハウを吸収

 床ずれをヒントに3年がかりで作った新素材を商品化するため、車椅子のトップメーカー、日進医療器(愛知県北名古屋市)に売り込んだ。すると、その当時から使われていた世界シェアナンバー1の車椅子用クッションは、穴が開くと空気が抜けてつぶれてしまうという問題を抱えていた。下半身の感覚がないと、つぶれたクッションに長く腰掛けていても痛みを感じないためにそのまま放置され、床ずれになる危険性が極めて高いのだ。

 「その点、固体であるエクスジェルは、カバーが破れても漏れ出たり流れ出ることはなく、やわらかいが圧力を離せば元に戻って支え続けます」(塩谷さん)。そう説明すると、即決でオリジナルクッションに採用。日進医療器から車椅子利用者の悩みなど商品開発に関する情報を得る一方で、患者の状態に応じた最適な車椅子の処方で日本随一の横浜市総合リハビリテーションセンターを紹介され、共同開発もスタートした。

 こうして介護と医療の現場と連携することで吸収したノウハウは、2006年に商品開発のために設立したR&Dセンター(京都府相楽郡)に引き継がれ、一般向けのエクスジェルシリーズに反映されるだけでなく、全国の病院の手術室や救急車のストレッチャーに敷かれるマットに採用されるなど様々な分野でその実力が評価されている。

□リビング、車内、旅先など様々な場面で選べる豊富なバリエーション

 こうした実績を踏まえて開発された一般向け製品は、椅子の座面シート、車載用、座椅子、携帯用など座るシーンに応じてさまざまなバリエーションを展開している。

 どこでも使えて万能なのが「アウルカンフィ」。いす、床、ソファ、車の中など座る場所を選ばず座布団代わりに使うことができる。カバーを取るとふくろうの顔のようなデザインが現れた。ちょうど目に当たる部分に坐骨がおさまり、鼻の部分のスリットで尾骨や仙骨にかかる圧力を軽減する。



 「実はここまで作って形がふくろうに似ているので『アウル』と名付けました。意匠登録も取っています」と塩谷さん。そして、ふくろうの羽(フェザー)の位置がちょうどお尻から腿にかけて当たる部分。1ミリ単位でゆるく傾斜しているため、座ったときにシートの角がももに当たる違和感がない。これは腿の裏に走るリンパ節の流れを邪魔しないための工夫だという。



 一方、とにかく腰が痛い人には「ハグカンフィ」がおすすめ。3D形状でお尻だけでなく腰まわりも支えるため、自然と腰に負担のかかりにくい座り姿勢に導かれる。エクスジェルを座面に配置しお尻にかかる負担を軽減すると同時に、いすと腰まわりに生じる隙間をクッションが埋めて姿勢を安定させる。



 床に座る生活なら座椅子の「ハグ床座」。座椅子に座るとなりがちな背中が丸まったC字姿勢からくる肩から腰への負担を軽減する。リクライニング機能は背もたれ全体とヘッドレストの2か所にあり、好みの角度でくつろげる無段階調節。ヘッド部分も角度調整できるため、首に負担をかけずに頭部を起こした状態をキープできる。肩甲骨付近の背もたれの幅をを安定性を確保できる最小限まで狭めることで、腕周りの作業性を確保するとともに、休憩する際には胸郭を広げてゆったりとリラックスできるようにしている。



 座っていて疲れる場所と聞かれてまず思いつくのは車の中ではないだろうか。「ハグドライブ」は、車のシートに設置するエクスジェルのドライブ仕様。ペダル操作やハンドル操作など腰を基点にした動作が多くなる運転中の体にかかる衝撃や負担をエクスジェルが吸収し走行中の振動から体を守る。また、バッククッションが腰周りを支えるため、無意識に足を踏ん張って体を支えようとする力も軽減する。運転席はもちろん助手席に座る同乗者の座り疲れもやわらげてくれる。



 外出や旅先に持ち出せるのが「ミニプニ」。薄くてコンパクトながらも、公園のベンチなど硬い座面でも底付きしにくい。新幹線や飛行機、バスなどの乗り物や映画館、スポーツ観戦時の椅子などさまざまな座る場面で重宝する。

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