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震災障害者、取り残されぬよう手を 実態いまだ不透明 声上げづらく

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阪神大震災で足に障害を負った甲斐研太郎さんと、ともに被災した妻のアリスさん=神戸市北区 1/2枚  平成7年の阪神大震災で心身に障害を負い、26年を経た今も症状に悩む人たちがいる。行政の実態把握が遅れ、いまだ支援の手が行き届いていない「震災(災害)障害者」。自らも両足に後遺症を抱えながら、障害者の悩みに向き合ってきた男性は「震災はまだ終わりではないんです」とサポート体制の拡充を強く訴えている。(藤木祥平)

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 ■クラッシュ症候群

 神戸市のNPO法人「よろず相談室」で活動する甲斐研太郎さん(72)=同市北区=は震災当時、落下してきた自宅の天井とタンスに長時間にわたって両足を挟まれ、救出後に、足の筋肉が壊死(えし)して膨れ上がる「クラッシュ症候群」と診断された。

 今は装具をつけずに歩けるようになったものの、足指を動かす腱(けん)が癒着したため爪先を伸ばせず、足首も曲げることができない。合う靴がないため、外出時は自ら加工したサンダルを履いている。

 10年ほど前、震災障害者の支援に取り組むよろず相談室の集いに初めて参加。以来、身体や精神に障害を負った同じ境遇の被災者たちに寄り添う活動を始め、いつしか中心メンバーになっていた。「PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ人や家族を失った人。話をするにつけ、まだ震災は終わっていないのだと感じる」

 ■見舞金わずか60人

 よろず相談室によると、兵庫県や神戸市が震災障害者の実態調査をしたのは、震災から15年が経過してから。身体障害者手帳の交付申請のうち、障害を負った日付が震災発生日で、その原因が震災となっている人などを集計した結果、計328人を確認。これに震災で精神などの障害を負った人を加えると、震災障害者は349人に上った。

 だが、県外の病院にかかった人や転居者らについては追跡できておらず、この問題を世に問い続けてきたよろず相談室理事長、牧秀一さん(70)は「実態把握にはほど遠い」と指摘。実際は2千人を超えると牧さんは推計している。

 こうした障害者のうち、行政から「災害障害見舞金」を受給できたのは阪神大震災ではわずか60人程度にとどまった。受給要件が厳しく、広範囲の救済につながっていないのだ。

 また、死者が多い災害であればあるほど「生きているだけまし」といわれ、孤立感にさいなまれることも多い。障害者が沈黙することで、行政の実態把握がさらに遅れるという悪循環にもつながる。

 ■支給要件の緩和を

 よろず相談室は先月、震災障害者らの証言集「希望を握りしめて」(能美舎)を出版。その中で、甲斐さんは牧さんとの対話でこんなふうに語っている。

 《実際に60何人の人しか(災害弔慰金法に基づく災害障害見舞金を)受けてないいう、あれはやっぱり「え?」と思ったね。…あっちこち地震が起こっても、これではもう我々と同じ立場にある人はどうなるんだと》(原文ママ)

 証言集の中で牧さんは、今後の災害障害者支援のために、正確な実数の把握▽災害障害見舞金の支給要件の緩和▽医療費などの継続的支援-などを訴えている。

 「困っている人がいれば、微力ながら力になりたい」と甲斐さん。26年の歳月が流れてもなお課題が残る震災障害者の当事者として、これからも活動を続けるつもりだ。

写真一覧

  • 後遺症のある足に合うよう、自ら手を加えたサンダルを履く甲斐研太郎さん

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