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ゴーン被告逃亡支援犯、進まぬ身柄移送 「事実無根」の国連意見書影響か

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産経新聞

カルロス・ゴーン被告(ロイター) 1/2枚  日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(66)のレバノン逃亡を手助けしたとして、東京地検特捜部が犯人隠避容疑などで逮捕状を取り、米国で拘束された米国人親子が日本に移送される見通しが立っていない。米国側は移送を一度は承認したが、弁護側が「日本に移送されれば、拘束中に不当な扱いを受ける可能性がある」などと異議を申し立てたためだ。国連の作業部会が昨年11月にまとめた「日本の逮捕・勾留は恣意(しい)的だ」と主張した意見書が弁護側の「追い風」になっていると懸念する声も日本側からは出ている。

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 意見書を出したのは、各国の逮捕、勾留に問題がないか調査する国連人権理事会の「恣意的拘禁に関する作業部会」。現在のメンバーはオーストラリアやラトビアなどの専門家で、部会が公表する意見書に法的な拘束力はないが、国際世論形成の一助となっている。

 意見書では、ゴーン被告が4回にわたり逮捕、勾留されたことについて「権利と尊厳を侵害し、自白の強要が意図されていた」などとし、「根本的に不当だ」と指摘。また、「ゴーン被告が逮捕された後、裁判官の面前に連れられることなく勾留された」として、「(裁判を受ける権利を保障する)日本国憲法32条に違反する」とも記されており、ゴーン被告に対する賠償の必要性を示す内容も含まれている。「あまり食事をとらせずに痩せさせた」という趣旨の記載もある。

 意見書の内容をそのまま報道している海外主要メディアも目立ち、米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は「勾留を繰り返したのは司法の権限を越えた手続きの乱用だった」などと伝えた。

 ●被告の嘘うのみ

 意見書が公表されると、日本の外務省は「事実と異なる」と即座に異議を申し立て、東京地検も次席検事の定例会見で反論した。

 ある検察幹部は「ゴーン被告から自白を取れるとは誰も思っておらず、取り調べで何も強要などしていない。あくまで罪証隠滅と逃亡の恐れがあったからで、現にゴーン被告はレバノンに逃げた」と反論する。

 検察側は裁判官の面前に連れられることがなかったとの主張は「事実無根」としており、実際、裁判官の前で検察官が勾留を請求する「勾留質問」の手続きでは、ゴーン被告も毎回居合わせていた。

 事実と異なる内容の意見書がなぜ国連の部会でまとめられたのか。検察幹部は「ゴーン被告の嘘の主張をそのまま部会がうのみにした」と主張する。検察OBの弁護士は「日弁連の一部弁護士らが必要以上に日本の刑事司法を批判するロビー活動を展開し、それらがねじ曲げられて海外で浸透していった」と分析する。

 なお日弁連は作業部会の意見書の公表と同時期、「えん罪を防止するための刑事司法改革グランドデザイン」の改訂版を英語で公表。勾留請求の却下率が低いことなどを訴えている。

 米陸軍特殊部隊グリーンベレー元隊員、マイケル・テイラー容疑者(60)と息子のピーター容疑者(27)は、ゴーン被告の逃亡を手助けしたとして昨年1月、地検特捜部が逮捕状を取り、米当局が5月に拘束した。

 この動きを受け、東京地検側は米当局に身柄の引き渡しを請求し、10月までにマサチューセッツ州連邦地裁や米国務省が引き渡しを一度は承認した。

 だが、その後に弁護側がこの承認に異議を申し立て、その中で「日本では保釈中の逃亡は犯罪にあたらない」「日本では不当な拘禁が行われる」などと主張。移送は一時差し止められた。

 ●海外積極発信を

 国連作業部会の意見書はその直後にまとめられた経緯がある。関連性について検察OBの弁護士は「意見書に米裁判所が流されるとは思わない」と指摘。一方で別のOBは「意見書とテイラー親子の弁護人の主張は重なる部分があり、影響はありうる」とした上で、「これまで国際的な情報戦に日本の法務・検察当局は後塵(こうじん)を拝し続けた。今後は積極的な海外発信が重要になる」と指摘した。

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  • 国連作業部会と検察の主な主張

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