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裁判員制度、国民感覚との乖離が顕著に 形骸化の懸念も

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産経新聞

1/1枚  裁判員が苦悩の末に言い渡した死刑判決は、またも無期懲役に減軽されて確定することになった。裁判員制度開始以降、今回で5件全てとなり、最高裁は死刑に関しては従来の判断基準からの逸脱を認めない姿勢を鮮明にした形だ。だが、識者からは「プロの裁判官の量刑を押しつけるなら制度が形骸化する」と懸念する声も上がっている。

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 裁判員制度は国民の常識を刑事裁判に反映させることを目的に平成21年に導入された。1審の裁判員裁判の結論を上級審でも重視する「1審尊重」の流れが定着しているが、死刑だけは事情が異なる。第1小法廷は、究極の刑罰の慎重適用と、過去の事例との公平性の観点などを踏まえ、死刑回避の判断を維持した。

 元東京高裁部総括判事の門野博弁護士は「死刑と無期懲役刑との間には大きな隔たりがある。過去の裁判例から見た公平性は非常に大事。法の安定感を考えた判断は裁判員にも理解してもらえると思う」と話す。刑期の長短が問題となる懲役刑と、執行すれば取り返しがつかない死刑は「質的に異なる刑」との考えだ。

 しかし、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務局長の高橋正人弁護士は判決後の会見で「裁判官が作った基準に従うなら裁判員裁判の意味がない」と批判。「裁判員裁判の判決を5年、10年と集積して(量刑の)基準ができ、それに従うのが裁判員制度の本当の趣旨だ」と指摘した。

 最高裁司法研修所は24年7月、過去の量刑判断を尊重するよう求める研究報告を示した。だが、甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「裁判官の量刑を押しつけるのであれば、市民の意見を反映させるという裁判員制度は実質的に意味がなくなり、形骸化する」と危惧する。

 評議の際などに利用される量刑検索システムでは、類似事件の量刑を瞬時に調べることができるが、結論を量刑相場内に導くよう求めていると誤解を与えかねないとの指摘もある。

 一方、今回は複数人が殺害された事件で裁判員の死刑判断が破棄され、検察側が初めて上告したケースだ。死刑求刑事件で量刑の判断基準となっている「永山基準」の中でも、重視されてきたのが被害者の数と計画性の有無だった。

 ただ第1小法廷は2審判決が計画性の有無、程度が犯行に対する非難の程度を判断する指標であるかのように示している点は是認できないとの判断を示した。

 だが、「場当たり的」で「衝動的」な犯行とし、計画性の低さを重く見て死刑回避の理由の一つとしている点は従来通りの判断だ。

 裁判員制度導入から10年。公平性を担保しつつ、国民の感覚を反映させた死刑判断はどうあるべきか。正面から議論すべきではないか。(大竹直樹)

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