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由紀さおり 芸能生活50年超えも止まらないチャレンジ「死ぬまで女でいたい。体が動くかぎり道を究めていきたい」

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産経新聞

由紀さおり 1/1枚 【ぴいぷる】

 このコロナ禍で盟友を失った。昨年3月に亡くなったコメディアン、志村けんさんだ。コメディエンヌとしての才を開花させた『8時だョ!全員集合』や『ドリフ大爆笑』。中でもバカ殿コントでみせた志村さんとの掛け合いは絶品だった。

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 「(亡くなる前に)テレビ局で志村さんと出会ったとき、『もう一度斬ってよ』と話しかけたら、あの人は『へへへ』って笑ってね。それが最後でした。志村さんも、これからシブい演技ができるというときに残念です」

 そんな盟友の無念を思うからこそ、コロナ禍に負けていられないと思う。「面白いおばあちゃんになれたらいいわね」と言いながらも、次のステップへの準備を怠らない。

 「コロナ禍でコンサートや歌番組も全部中止になっていく中で、自分がやれることは何なのかって考えて、お稽古に励んだの。家から着物をきちんと着ていくとかね、準備をしておかないと」

 というものの、仕事が激減したことで、今までの疲れが出たのか、体調を崩してしまった。

 「これは、今までのツケだなと。だから、これを機に心や体を修復すべきだから、仕事がない時間をうまく活用しようと思ったの。こういう時間が必要だったのよ」

 そんな中、生まれたアルバムが『家族の愛に包まれて』(ユニバーサル)だ。姉の安田祥子とのコンビは健在。今回はそこに歌手、木山裕策が加わったのだ。

 「コロナ禍でテレワークなど働き方も変わったでしょ。今まで存在が希薄だったお父さんが家にいる時間が増えたことで、家族のあり方も見直されている。やっぱりお父さんの存在は大きいのよ」

 父親といえば、忘れられない思い出がある。高校時代のことだ。高校を卒業したら歌手に専念しようと思っていたが、仕事がうまくいかず、思い悩んでいた。

 「高校の先生に短大に推薦できるといわれたので、どうしようかと。母に相談したら、翌朝、父が一緒に通学路を歩きながら『お金のことは心配せずに(短大に)行きなさい』って言ってくれて。父親が支えてくれていることがうれしくて」

 そのときのことを思い出すと、今でも涙があふれてくる。心のどこかでいつも父の存在を強く感じていた。

 「私も、姉と2人で童謡コンサートを始めて今年で35年間。2人ともいい年になって、2時間半のコンサートはきついから、助っ人を探していたんです。そんなとき、行きつけの耳鼻科で木山くんに偶然会ったんです」

 コロナ禍で家族のあり方が問われている今だからこそ、コンサートにも“父親”が必要だと考えた。「木山くんは4人の息子さんの父親だし、お父さんという立場で歌ってほしいなと思ったの」

 父親の存在を加えたことで歌の幅も増えた。福山雅治の『家族になろうよ』や童謡の『グリーン・グリーン』など家族を描いた歌がレパートリーに加わったのだ。

 芸能生活は50年を超えたが、チャレンジは止まらない。「結局、私は母になることはかなわなかった。だから自分がやってきたことをブラッシュアップしていこうと。刀折れ矢尽きるまで追究していくしかないでしょ」

 山本周五郎の小説『虚空遍歴』で、道を究めようと旅を続ける主人公の姿に、自身を重ねる。

 「主人公は最後は行方知れずになってしまうけど、読んだときにズシンときました。芸の道とはこういうものだと。どこまでその道を突き進んでいけるのかと」

 その思いを実現するのが2月に東京・銀座の観世能楽堂で公演予定の一人芝居『夢の花-蔦代という女-』。有吉佐和子の小説『芝桜』の主人公で花柳界をたくましく生き抜く蔦代を演じる。2019年の再演だが、狂言とコラボして、歌や三味線、日舞など稽古を積み重ねてきた芸の集大成をさらにパワーアップした姿でみせる。

 「人生100年の時代でどこまでできるか分からないけど、私、死ぬまで女でいたいの。70代で女でいるということはどういうことなのか。その年代での色艶を保っていたいわね。体が動くかぎり、道を究めていきたい。だから先のことを考えると、休んでなんていられないわ」

(ペン・福田哲士/カメラ・桐山弘太)

 ■由紀さおり(ゆき・さおり) 歌手。群馬県出身。少女時代から姉の安田祥子(さちこ)とともに童謡歌手として活躍。本名でデビューするも、69年、由紀さおりとして『夜明けのスキャット』で再デビュー。同年のNHK紅白歌合戦に初出場。73年の『恋文』では第15回日本レコード大賞最優秀歌唱賞を受賞。86年から姉と童謡コンサートをスタート。女優としても映画『家族ゲーム』(83年)などに出演。2012年に紫綬褒章、19年に旭日小綬章を受章。

 『夢の花-蔦代という女-』は2月13、14日に東京・銀座の観世能楽堂で公演予定。4月には大阪でも予定。問い合わせは安田音楽事務所(03・3341・0627)。

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