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改革迫られる東京国際映画祭、コンペ充実がカギ 安藤チェアマンに聞く

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産経新聞

「日本映画にふさわしいTIFFにしたい」と話す安藤裕康・東京国際映画祭チェアマン 1/1枚  昨秋、コンペティションなどは中止に追い込まれたがコロナ禍でもリアル開催された東京国際映画祭(TIFF)。ただ世界の国際映画祭の中で存在感が薄いといった批判を受けてきた。コロナ禍への対応だけでなく、映画祭そのものの改革も突き付けられている。同映画祭のチェアマン、安藤裕康氏に今後の展望を聞いた。(聞き手 水沼啓子)

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■低い存在感「おかしい」

 --昨年、コロナ禍でもリアル開催されたが

 「昨年は、映画祭の大きな柱として日本映画界の応援ということがあり、映画界と一体となり映画祭を開催できたことが収穫だった。

 TIFFは国際映画製作者連盟公認(FIAPF)の映画祭なので、コンペの審査員は3分の2が外国人であることといった規約に従わないといけない。コロナ禍で外国人の来日が困難になり、コンペは中止せざるを得なかった。

 その代わり、お客さまに見た映画の中からベストの作品を投票していただき、最も多くの支持を集めた作品に観客賞を与える形にした。昨年の映画祭の主役は、観客という考えを象徴した賞にもなった」

 --コロナ禍は続いているが、今年の開催は?

 「開催するという前提で、準備は粛々と進めている。企業から協賛金を集めるのが、いまいちばん頭が痛い問題。実は昨年、コロナ禍で企業の多くがスポンサーを降りてしまった。一昨年は協賛金が約2億5千万円あったが、昨年は5千万円ほどに激減した。例年なら映画祭全体で約9億円の予算があったのが、昨年はおよそ7億円で前年より2億円も減ってしまった」

 --TIFFはほかの国際映画祭に比べ、かすんでみえるが

 「黒澤明監督ら三大巨匠や是枝裕和監督といった海外でも大変評価されている監督がたくさんいる。一方、日本にはたくさんの映画館があり、洋画に邦画といろいろな作品を上映している。日本の映画業界も米国やフランスなどと比べても遜色ない。

 日本映画は本当に世界に負けないレベルなのに、TIFFの存在感が低いのはどう見てもおかしい。日本映画にふさわしい映画祭にならないといけない。チェアマンとして何とか盛り返していきたいと思っている」

■「ワールドプレミア」議論を

 --TIFFの問題点とは

 「1つは上映される作品の質だ。その中でもいちばん大きな問題はコンペに出品される作品。FIAPF公認の映画祭はカンヌ、ベルリン、ベネチアなど計14ある。コンペがどれだけ充実しているかがその映画祭のメルクマークというか判断基準になっている。TIFFのお膝元の日本映画界ですらみな、カンヌなど三大国際映画祭のほうに出品してしまう。

 コンペをする場合、ワールドプレミア(世界初上映)が重要になってくる。開催時期が他の映画祭に比べてどうしても不利だ。ドイツのベルリン国際映画祭が2月、フランスのカンヌ国際映画祭が5月、9月にイタリアのベネチア国際映画祭とスペインのサン・セバスティアン国際映画祭が開かれ、その後にTIFFが開催される。良い作品は他の映画祭にみな取られてしまう」

 --どんな改革が考えられるか

 「コンペの在り方をどうするか。FIAPFの規約には、コンペに出品できるのは過去1年間に上映された作品とのみ書かれ、ワールドプレミアでなければいけないとは書かれていない。

 たとえば、すでにフランス国内では上映されているが、カンヌ国際映画祭には出品されていない作品の中に秀作があるかもしれない。それは米国やイタリアなどでも同じだ。ワールドプレミアという枠をはずすという議論があってもいいかもしれない。国際映画祭としてディグニティ(尊厳)を保ちながら、どこまで出品作品の条件を下げるか。ジレンマはあるが、映画祭の究極の目的は良い作品を集めることだ」

■やはり劇場で

 --海外の国際映画祭と比べて何が足りないのか

 「国際映画祭である以上、劇場で映画を上映すると同時に世界中から映画人がたくさん集まって交流することが重要だ。

 昨年、TIFFも日比谷の会場でパスさえあれば自由に出入りできる『アジア交流ラウンジ』を始めようとした。そこにはお酒も料理も置いてあり、雑談したり、シンポジウムを開いたり、交流する場を設ける予定だった。残念ながらコロナ禍でリアル開催が難しくなり、オンラインで日本の監督や海外の映画人らとのトークという形になったが、評判はよかった。このラウンジに昨年、参加してくれた是枝監督も『またやるならやろう』と言ってくれている」

 --今年の抱負は?

 「世界中がコロナ禍に振り回されて、どうなるかわからないが、映画祭がリアル開催できるといい。今年はとくにフランス政府の肝いりで日本で開催される仏文化イベント『ラ・セゾン』(会期は10月から来年3月まで)とタイアップして、TIFFで仏映画を上映する計画もある。

 映画はやはり劇場で見るのが大切。画面と劇場とが一体となって喜びを共感することはオンラインでは不可能だ。大きなスクリーンで、すばらしい音響効果の下、周りのお客さまと感動を共感するのが映画の本質だと思っている。コロナ禍が早く収束してほしい」

      ◇

 <あんどう・ひろやす> 昭和19年生まれ。東京大学を卒業後、外務省に入省。内閣官房副長官補や駐イタリア大使、国際交流基金理事長を歴任。令和元年、東京国際映画祭チェアマンに就任。

      ◇

 東京国際映画祭 昭和60年、渋谷で始まった。当初は隔年開催だったが、その後、毎年秋に開催。メイン会場も六本木に移った。公益財団法人ユニジャパンが主催し、国際映画製作者連盟(FIAPF)公認の国際映画祭。コンペティションで「東京グランプリ」(最優秀作品賞)を選出。

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