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「踊る大捜査線」ヒットメーカー、7年ぶり映画製作を指揮

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産経新聞

映画「ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(ballad)」について語るBSフジの亀山千広社長=東京都千代田区(石井健撮影) 1/2枚  ドラマ、映画のヒットメーカーだった亀山千広(ちひろ)さん(64)が、7年ぶりに映画製作に名前を連ねた。記録映画「ジャズ喫茶ベイシー Swifty(スイフティ)の譚詩(ballad(バラード))」(星野哲也監督)で、製作総指揮を務めた。「ロングバケーション」「踊る大捜査線」「テルマエ・ロマエ」などフジテレビで人気ドラマ、映画を手がけたプロデューサーだったが、今はBSフジの社長。経営者が“映画復帰”した理由を聞いた。(文化部 石井健)

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ひとごと

 この映画は、岩手県一関市にある開業50年のジャズ喫茶と、その名物マスター、菅原正二さん(78)の足跡と日常を追うドキュメンタリー。

 監督の星野さん(55)は、東京都港区にあるバーの経営が本業だが、自分の店でも音楽を流していることなどから、先達の菅原さんを敬愛。店と菅原さんの記録を残すことを思い立ち、カメラを手に岩手と東京を往復した。

 亀山社長は、当初、星野監督のバーの常連客にすぎなかった。

 「当時、僕はフジテレビの人間。その種の記録作品は、フジのビジネスの規模感には合わない」

 ひとごとだったのだ。

 「星野監督も別の座組みで動いていましたしね。でも、5、6年が過ぎても前に進まない。次第にバーのマスターである星野さんが、客である僕に愚痴をこぼし始めた。いい加減にしろと思っていた」

自分で料理したい

 だが、亀山社長は平成29年、フジの社長を退任し、BSデジタル放送局であるBSフジの社長に就任した。そこで考えた。

 「趣味性が高くて、教養性もあって、文化論みたいなものも語られている。こういうドキュメンタリーは、BS放送の視聴者の特性に合っており、必要なコンテンツではないか。映画に携わってきた人間として、この素晴らしい素材を他人に料理させていいのかという思いもあった」

 ひとごとではなくなった。作品としてまとめるため自ら乗り出した。

 星野監督は、ベイシーを訪れたさまざまな人々をカメラに収めていた。サックス奏者の渡辺貞夫さん、坂田明さんや中村誠一さん。女優の鈴木京香さんの姿もある。また、指揮者の小澤征爾さん、バイオリン奏者の豊嶋泰嗣(とよしま・やすし)さん、建築家の安藤忠雄さんらがジャズや文化について語る貴重な映像も別途撮影していた。バーの経営者としての広い人脈が生きた。

 星野監督は、さらに資料映像も集めた。ベイシーで講演するタレントの永六輔さん(1933~2016年)、独奏を披露する米ドラム奏者のエルビン・ジョーンズさん(1927~2004年)。今や伝説的な存在である前衛サックス奏者、阿部薫さん(1949~78年)の演奏姿や新宿騒乱の白黒映像などだ。

踊る相棒

 「仕上げにはプロが必要。ベイシーやジャズのことを知らない人がいい。そうでないと、単にジャズの話で終わってしまう」

 そこで亀山社長が連れてきたのが、田口拓也さん(54)だ。「踊る大捜査線」などでともに仕事をした編集マン。古巣フジテレビの映画の仕事を断らせて引っ張りこんだ。亀山社長から田口さんへの注文は、ただ一言。

 「ドラマを構築するように編集してくれ」

 ベイシーを訪ねたことすらない田口さんだが、星野監督が集めた膨大な映像素材を根気強く取捨選択して編み上げた。なるほどドラマのように緩急のついた流れは見る人をひきつける。しかも、一つの店、一人の人間の足跡を描くだけにとどまらない映画に仕上がった。

 「この映画は文化論であり、店につどった多くの文化人や音楽家の足跡の記録でもあります。そして、そこで50年間『いらっしゃい』って言い続けた菅原さんの一期一会こそがジャズだ。そんな話でしょうね」

 ただ、映画祭を通じて欧州を中心に海外に売り込みたかったのに、コロナ禍で滞った。ビジネスの観点でいうと放送局の社長としてはじくじたる思いだが、7年ぶりに映画の現場に関わり発見もあった。

 「趣味がコンテンツとなり、星野監督のようにプロでなくても映像を撮れる時代。他にも優れたコンテンツが眠っているかもしれない」

写真一覧

  • 「ジャズ喫茶ベイシーSwiftyの譚詩(ballad)」の一場面。名物マスターの菅原正二さん

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