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定年後は「他律から自律へ」大きく転換 「ヨコの人間関係」築いて孤独回避

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産経新聞

何をしていいか、戸惑うことも(本文と写真は関係ありません) 1/1枚 【定年後・自走人生のススメ】

 「新型コロナウイルス感染防止対策で在宅勤務によるテレワークが始まったのは、定年退職の約1年前でした。いま考えると、定年後の生活のバーチャル体験だったのかもしれません」と、この3月末で定年退職を迎えた谷川順二さん(65、仮名)。

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 定年退職された方々の話をうかがうと、退職直後はいろいろな手続きがあって、金融機関や役所に行ったりして「結構忙しかった」が、1週間もすると手続なども落ち着き、「さあ、今日は何をしようか」でスタートする毎日になるのだそうだ。

 「在宅勤務を始めた頃は、自宅と勤務先を行き来する通勤から解放されて、自分の時間が増えたようで、これもいいかなって思いました。しかし、在宅でも勤務ですから、始業・就業時間・昼休憩など会社の時間軸で生活していたわけで、何をしようかなどと考える必要はなかった」(谷川さん)

 定年後の生活は、同じ「在宅」でも、自分自身の時間軸で成り立っているところが「勤務」と大きく違うところであろう。これが定年後研究所で言う「自走人生」であり、公式で表すと「在宅勤務-(マイナス)勤務=自走人生」といえよう。いわゆる「他律から自律へ」大きく転換することを意味する。“縛られていた会社人生”から解放されることの裏には、「社会とのつながりを自分自身で築かなければならない」という意味があるのだ。

 働いて稼ぐことやボランティアなどで「社会とのつながり」を築くことができなければ、「孤独」に陥る懸念がある。つながりがあるから、自分の存在意義を感じることができるし、「ひとりではない」ことが実感できる。

 臨床心理士で『あの人はなぜ定年後も会社に来るのか』(NHK出版新書)の著者である中島美鈴さんは「仕事での人間関係は『タテの人間関係』」で「退職すれば消滅」してしまうという。だから、「定年後に元職場に来てしまう方というのは、タテの人間関係に固執し、新しいヨコの人間関係を築けずにさまよっている人といえるかもしれません」と。

 中島さんによれば、「損得勘定のない、人との親密な関係性」というのが「ヨコの人間関係」であり、「長い老後の時間を考えるというのは、仕事以外にやりたいことは何か、そのために誰とどういうふうに付き合っていきたいかを考えるということ」なのだそうだ。

 私自身、会社というタテの人間関係で長年過ごしてきて、「会社という外部環境」に適応するために、自分の感情や本音を制御することが「当たり前」であり「必要なこと」と、いつの間にか思い込んでしまっている。「知らず知らずのうちに培ってきた考え方のクセを正しく把握し、自分の感情と向き合うためのコツ、そして人との親密な関係を築くコツ」を中島さんの著書から教わった。

 ■定年後研究所

 日本で初めての「50代以上会社員」に特化した、定年後ライフの準備支援機関。定年後の「自走人生」を目指す中高年会社員を応援。中高年会社員向け学習システム『キャリア羅針盤』を開発中。(https://www.teinengo-lab.or.jp)

 ■得丸英司(とくまる・えいじ) 1957年生まれ。大手生命保険会社で25年間コンサルティング業務に従事。星和ビジネスリンク専務執行役員、日本FP協会常務理事(現特別顧問)慶應義塾大学講師などを歴任。定年後研究所初代所長を務める(現特任研究員)。著書に「定年後のつくり方」(廣済堂新書)。

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