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国民を貧しくする「ワクチン開発遅れ」のワケ 接種率の世界平均は100人のうち8・53人なのに…日本は0・87人という衝撃

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産経新聞

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 中国・武漢発の新型コロナウイルス・パンデミック(世界的大流行)を受けて日本が緊急事態宣言を発令して1年たった。感染の波は収まらず、日本は米欧などに比べると人口比でみた感染者数は圧倒的に少ないのに、陰鬱さが延々と続く。

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 宣言は1都3県に今年1月8日に再発令され、3月21日で解除したものの、4月5日から5月5日まで宮城県、大阪府、兵庫県には蔓延(まんえん)防止等重点措置が適用されている。

 経済というものは、先行きの見通しで決まる。そこで鍵になるのは、コロナ終息のメドを立てるための有力材料であるワクチン接種の普及である。グラフは米国のデータサービス会社CEICが毎日まとめている接種率で、主要国の4月初旬時点を取り出した。

 改めてみると、極めて衝撃的である。世界全体の平均は100人のうち8・53人になるのに、医療でも先進国と自負してきたわが国は0・87人に過ぎない。英国は54・3人、米国も49・3人と5割を超す勢いである。人口の多い中国やインドは接種率では米欧に劣るものの、それぞれ1億4280万、7600万人に投与済みである。

 この違いはワクチンの調達力の差、すなわち国産化に成功しているか否かである。米英、中国、インドとも自前で生産、供給できる。日本はノーだ。

 なぜ日本だけが後れをとっているのか。3月30日付の日経ビジネス電子版では塩野義製薬の手代木功社長が「いわば、『平時』と『戦時』の体制の違いが、日本と欧米との間で際立ってしまった」と述べている。

 新型コロナウイルス・ワクチン開発プロジェクトに即座に対応できるプロジェクトを立ち上げるベンチャー企業や製薬会社がなかったことと、緊急事態に備える制度が不十分なのだと。同社は年間3000万人分のワクチンをつくれる体制を2021年中に整える計画だが、ワクチン開発は3度の治験を経るのだが、後発組が最終段階のプラセボ(偽薬)と比較する大規模試験実施が難しいと手代木さんは言う。

 産経ニュースの3月26日付では、「『日本の科学力が高い』は幻想だ」と、がん研究会・がんプレシジョン医療研究センターの中村祐輔所長が断じた。中村さんは、「PCR検査数は依然として途上国並みの数であるし、ウイルスゲノム解析も遅れている。ワクチン接種も昭和時代のようなアナログな体制で進められている。問診に1人10分を要すると仮定すると、1億人に対して10億分を費やすことになる。1人1日8時間勤務する場合に、5700人が365日休みなく働き続ける時間に相当する。これを紙ベースでやっていること自体、時代錯誤な感があり、日本の科学力の衰退、デジタル化の遅れが顕著に浮かび上がる」と指摘した。

 日本の新規感染者数は5日現在、100万人当たり135人、米国の10分の1だ。米国のV字型景気回復が確実なのと対照的に日本は見通しが立たない。コロナのせいではない。はるか前から、政治家の危機感の欠如が国民を貧しくするのだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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