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これが本当の「おもてなし」 130年前に整備の巨大水路「びわ湖疏水船」観光に感動

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産経新聞

びわ湖疏水船の乗客をもてなす桜と菜の花。秋は紅葉とコスモスに 1/1枚 【令和を変える!関西の発想力】

 平安貴族のDNAを受け継ぐと自負する「京都人」。そのお姿は常に高貴で、郊外の宇治で生まれた私なんぞは「茶畑に住んではりますの?」などと、よくからかわれました。ただ、千年の都から世界の観光都市へ、華麗な歴史を守り育てた実績を思うと、歯向かうことなどできません。

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 しかし滋賀県人は京都人を黙らせることができます。「ゲジゲジナンバーの車(滋賀の字面がゲジゲジ)、ダサおますなぁ」なんて言われても「琵琶湖の水、止めまっせ」とひと言返すだけで京都人は何も言えなくなるのです。

 そうです。京都人は滋賀から送られてくる琵琶湖の水がなければ生きていけないのです。その水を送っているのが「琵琶湖疏水」。日本遺産にも登録された、世界有数の巨大な水路です。今から130年前、幕末の動乱と明治維新でボロボロになった京都を復興させるために、当時の先端技術を結集して造られました。その後、京都は劇的に蘇り、世界の観光都市に上り詰めたのです。つまり京都と滋賀は一蓮托生。“世界の京都”をともに作ったといっても過言ではありません。

 ただ、このハイテクな琵琶湖疏水に観光船が運航しているとは意外でした。だって、京都と滋賀の間には、織田信長が焼き討ちした比叡山や、清水寺が鎮座する標高593メートルの音羽山がドーンと立ちはだかっているのです。その山を貫く水路を遊覧するなど、トンネルの暗闇を行く肝試しとしか思えません。

 ところが3年前、「びわ湖疏水船」の名称で春と秋のシーズン運航を開始したところ、乗船率9割を超える人気とか。そこで「百聞は一見に如かず」とばかりに3月末、運航を開始したばかりの春の便に乗り込みました。

 のっけから驚きました。びわ湖疏水船で楽しむ風景は、一般的な観光船とは異なる「おもてなしの情景」だったのです。運航ルートは案の定、半分はトンネルでしたが、暗闇を逆に生かしたガイドの案内が心の琴線にビンビン響きます。私の便では琵琶湖遊覧船のガイド歴をもつ松岡昭光さんが「頭上に流れる川の音、聞こえますか?」などと巧みなトークで清流や山の自然を実感させてくれました。

 また、出口では「トンネルを抜けると“花国”だった」とばかりに視界が開け、沿道いっぱいの桜と菜の花が出迎えてくれます。地元の人たちも笑顔で手を振ってくれて、コロナ禍で固まっていた心が溶ける気がしました。

 秋の便では桜の代わりに紅葉が、菜の花の代わりにコスモスが、地元の人々の笑顔とともに観光客を出迎えるのだそうです。しかも菜の花とコスモスは、地元の人々がボランティアで植えているとか。これが本当の「おもてなし」かもしれません。

 そういえばコロナ前、「おもてなし」は日本人の合言葉でした。東京五輪が延期され、海外からの観光客受入も断念されて、いつしか聞こえなくなりましたが、真の「おもてなし」はさりげない心遣いの中に感じ取るものです。「びわ湖疏水船」コロナ禍に疲れたあなたにおススメします。

 ■殿村美樹(とのむら・みき) 株式会社TMオフィス代表取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。関西大学社会学部「広報論」講師。「うどん県」や「ひこにゃん」など、地方PRを3000件以上成功させた“ブーム仕掛け人”。

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