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神戸ベイシェラトン、ロイヤル…ホテル、コロナ禍で“マルチタスク”化 サービスの質もアップ

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神戸ベイシェラトンホテル&タワーズで勤務する木邨華歩(きむら・かほ)さん。フロント係だが、レストランで朝食準備などもこなす=9日、神戸市東灘区(田村慶子撮影) 1/2枚  専門職ごとの分業が一般的だったホテルで、1人が複数の仕事を並行してこなす「マルチタスク」が広がり始めた。関西では、神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ(神戸市)やロイヤルホテル(大阪市)が昨年導入。背景には、新型コロナウイルス禍による従業員の一時帰休が増え少数で運営する必要に迫られたことがあるが、縦割りの弊害がなくなり、サービスの質向上にもつながっている。(田村慶子)

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フロント+レストラン

 「お客さまとの距離を縮められるし、一日の中で違う職場をめぐると気分転換にもなる」。そう笑顔を見せるのは、ホテルニューアワジに昨年4月入社し、傘下の神戸ベイシェラトンホテル&タワーズに勤める木邨(きむら)華歩(かほ)さん(23)だ。

 彼女の主業務はフロント係だが、レストランで準備や接客をしたり、館内の温泉施設を清掃したりとさまざまな仕事をこなす。フロントでは朝食の利用客の混み具合などを客によく尋ねられ、「現場を見ているからすぐに答えられるし、その日のお勧めメニューなどを伝えると喜ばれる」という。

 ホテルニューアワジは淡路島(兵庫県)のグループ施設に先行導入した。グループ全体で新卒社員の約半数がマルチタスク職として施設で働いている。「部門の壁が消え、ホテル全体のサービスに従業員の目が行くと、かゆいところに手が届くような先回りしたおもてなしができるようになった」と広報担当者は効果を話す。

 旅館には「仲居」というマルチタスクと同様の働き方があるが、洋式ホテルは客室やレストラン、宴会など部門が明確に分かれ分業する形となっている。

 こうした事情から、神戸ベイシェラトンも以前から検討を進めていたが完全に移行できていなかった。だが、コロナ禍で売り上げが激減し、人件費を抑える必要に迫られる形で始め昨年4月にマルチタスクを導入。6月、完全に移行した。

厨房+給仕

 ロイヤルホテルも昨年10月から傘下ホテルの一部でマルチタスクを始めた。旗艦店のリーガロイヤルホテル(大阪市)では12月、これまで担当を分けていた結婚式・披露宴のの相談・受付と段取りの打ち合わせを統合。厨房(ちゅうぼう)スタッフの一部に給仕の仕事も兼務できるようトレーニングを始めた。

 ロイヤルホテルの蔭山秀一社長は「1人が仕事をこなせば客の要望などを引き継ぐ手間がなくなるし、従業員が他部門も経験することでホテル全体の仕事を理解してもらえる」と期待する。

 マルチタスクを早くから取り入れたホテルとして有名なのは星野リゾート(長野県)だ。同社は平成13年に導入。一般的にチェックアウト後の午前11時から、チェックインの午後3時ごろまでの「中抜け」といわれる休憩時間の無駄を省くため「当初は業務効率化を目指したものだったが、人手不足の解消や顧客対応の迅速化にもつながっている」(広報担当者)。

 昨年4、5月の緊急事態宣言で社員を一時帰休させた際も1人で複数の仕事をこなす態勢が役立ち、特定の部門を休ませるのではなく仕事を分け合うワークシェアリングでしのぐことができた。

職場を改善

 ただ、専門職志向が強いホテル業界では、マルチタスクに違和感を覚える従業員も多い。「スペシャリストを目指していたのに、他の仕事をさせられるなんて」と考える向きもあり、「ホテルでは他部門への異動をきっかけに社員が辞めてしまう」(大阪市内のホテル関係者)のも事実だ。

 マルチタスクを退職の抑制につなげるホテルもある。ヒューリックホテルマネジメント(東京)は、平成24年のホテル1号店開業とともにマルチタスクを採用。従業員にはフロントやレストランなどの基礎知識や技術を横断的に学ばせ、スキル向上を図るのはもちろん、ほぼ全ての従業員が勤務中にインカムを着け、館内の状況を瞬時に情報共有できる態勢を敷いている。

 「新人で分からないことがあっても、インカムを通じて経験や知識のある従業員がアドバイスするなどフォローする。若手の安心につながり、チームワークが築けている」と採用担当者。こうした取り組みが役に立ち、同社のコロナ拡大前の退職者は2年間ゼロで、コロナ拡大後も1割に満たないという。ホテル業界では一般的に新卒入社後3年間で4~5割が離職する。

 また星野リゾートは「中抜けの解消で従業員の拘束時間が短くなり、休みも取りやすくなる」と採用面での利点を挙げ、マルチタスクがもたらす職場環境の改善効果をアピールする。

 ホテル業界関係者は「マルチタスクを進めるうえで従業員のモチベーション維持が一番の課題だが、人件費削減や省人化だけでなく、より良いおもてなしにつながっているとの実感が不可欠だ」としている。

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