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家庭用サーバーで「スーパードライ」“復権” キリンを猛追へ

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産経新聞

家庭用専用サーバーの使い方を実演するアサヒビール社員=7日午後、東京都内 1/1枚  アサヒビールは7日、ビールサーバーを貸し出してビールを定期配送する会員制の家庭用生ビールサービス「ドラフターズ」を5月25日に開始すると発表した。同様のサービス展開はキリンビールが先行、新型コロナウイルス感染拡大で伸長した巣ごもり需要を追い風に昨年から急拡大しており、ビール類市場で激突する2強が生ビール定期宅配サービスでも勝負をすることになった。“ビール一本足打法”と呼ばれるアサヒが、熱烈なファンを取り込むことができるのか-。 

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 アサヒのサービスで届くビールは「スーパードライ」で、現在も市販されている「ミニ樽(だる)2リットル」缶2本を毎月2回に分けて宅配する仕組みだ。専用ビールサーバーは飲食店に配置する業務用ビールサーバーの技術を元に開発。一般的な飲食店で提供される温度(4~6度)に加え、一部の飲食店で味わえる氷点下の温度まで冷やした「エクストラコールド」と同じ零度~マイナス2度まで冷やす機能も備える。ビールと一緒に届く専用ガスをサーバーにセットして使うので、店の生ビールと同じクリーミーな泡も楽しめる。サービス価格は月額7980円で、内訳はサーバーレンタル料を含めた基本料金2990円に、ビール料金(送料込み)が2リットル缶2本で4990円。ビールの追加もでき、1本1980円で販売する。サービス申し込みは4月7日から始めるが、サーバー供給に限界があるため、初年度は3万人を上限に抽選方式をとるという。

 7日の記者発表会で、アサヒビールの松山一雄専務は「市場に後発で入ることは十分承知している。新しい価値を出さないと選択肢に挙がってこない。売りにするのは(サービス利用者の)会員と一緒に作り上げていく、そういう進化系サービスであるところ」と力説する。初年度はスーパードライ1商品のみで始め、会員専用のSNSサイトで商品やサーバーなどの意見を集めて提供するビールを増やすことも検討するという。

 先行するキリンビールの「ホームタップ」は月額基本料が月4リットルコース(1リットルペットボトル入りビール4本)で8250円~、12リットルコースで12430円~と2コースを用意。基本のビールがメーンブランド「一番搾り」の格上商品の「一番搾りプレミアム」で同社が作るクラフトビールも選べるなど、上質感が強い。サービス開始は平成29年で、令和2年はコロナ禍の巣ごもり需要で申し込みが殺到、一時8か月待ちとなった。今年は現在の3万人から年内10万人達成を目指し、CM展開などで認知向上に努めている。

 対して、後発のアサヒ。遡ること20年前の平成13年に愛飲者への景品企画として「ミニ樽ホームサーバー」を投入したことがある。「あまりにも好評で4万9800円で販売し、累計5万台が売れた」(アサヒの担当者)と振り返る。この時の仕様も今回のスーパードライミニ樽2リットルだった(現在は専用ガスの販売は中止、使用することはできない)。

 今回の生ビール宅配サービスの検討を始めたのはキリンがサービスを開始した平成29年ごろで、サーバー開発には2年をかけた。松山氏は「将来的に必要(なサービス)だと思う。(市場が)成熟する中で今は量販店(の缶ビール)か飲食店しか選択肢はないが、いずれ必要になる。それなら早くやったほうがいい。コロナは関係ない。先にキリンさんにやられてしまっただけだ」と打ち明ける。

 とはいえ、コロナで令和2年の国内ビール市場は大きく様変わりした。ビールと発泡酒、第3のビールで構成する国内ビール類市場の販売シェア推計で、キリンが平成21年以来11年ぶりにアサヒを逆転した。キリンは第3のビール「本麒麟」が強く、ビールの一番搾りは飲食店向けの比率が低い。一方、アサヒはスーパードライが飲食店の導入シェアが高いため、飲食店の休業・時短要請による販売の落ち込み影響はアサヒに強く出る。とはいえ販売量を見てみると、ビール類市場の王者がスーパードライであることには変わりはなく、競合他社幹部も「あんなビールは2度と出ない。今も市場はスーパードライが作っている」と言わしめるだけの存在だ。

 発泡酒、第3のビールの登場で、家庭内で徐々に数量を落としてきたビールだが、今年、大手各社は存在意義を取り戻す可能性を見い出している。缶ビールは外出自粛により登場した巣ごもり需要と2年10月の酒税改正によるビール減税で「せっかく飲むなら(安い)第3のビールではなく、ビールを飲もう」との意識が生まれた。今月、アサヒは蓋が取れる「スーパードライ生ジョッキ缶」を先行発売、SNSで若者中心に投稿が相次ぐ人気を集めているし、サントリービールが4月13日に発売する糖質ゼロビール「パーフェクトサントリービール」は発売5日間で年間販売計画の約3割を出荷する見通しという。

 ビール会社にとってもビール類の中で最も利益率が高いビール。後発というハンデを背負ってまで、アサヒが定期宅配に踏み出すのは、大衆化によって消費者にとっての存在意義が薄れてしまったスーパードライをもう一度、再認識してもらいたいとの姿勢の表れかもしれない。(経済本部・日野稚子)

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