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蘇る亡き父の幻のメニュー「すっぽんうなしゃぶ」 大津

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うなしゃぶが付いた夜の特別懐石(至誠庵提供) 1/3枚  小学生のころに料理人の父を亡くした兄弟が父が残した“幻のメニュー”の復活へ向けたプロジェクトに取り組んでいる。大津市で郷土料理店などを経営する「至誠庵(しせいあん)」で、19年の時を経て蘇る料理はスッポンスープで仕立てたうなしゃぶ。兄で取締役の井上貫太さん(27)と弟の料理長、水晴(みはる)さん(25)は「新たな名物料理として多くの人に知ってもらいたい」と意気込んでいる。(清水更沙)

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◇地域の人に愛され

 古寺・石山寺山門前に約60年前から店を構える至誠庵は、自家製ふなずしや湖魚つくだ煮を製造、販売している。兄弟の父、井上誠さんは2代目で、料理人を務める傍ら、店を切り盛りしていた。貫太さんは「保育園児のころ、土用の丑の日に園に来て、子供たちにウナギをふるまっていたことを覚えている」と話す。

 誠実な性格で、地域の人に愛されていたという誠さん。そんな誠さんが心臓発作で45歳という若さで亡くなったのは、貫太さんが小学3年、水晴さんが小学1年のとき。名物だったウナギやスッポンを扱ったメニューも途絶えてしまった。

 「ずっと泣いてばかりいた。ただ、葬式のとき、本当にたくさんの地域の人が来てくれ、父は本当に慕われていたんだなと実感した」と貫太さん。誠さんは生前、「お父さんがいなくなることがあれば、お母さんと弟を頼むよ。いつも見守っているから」と貫太さんに語っていたという。

 父の思いが詰まった店を残したい-。2人は自然と至誠庵を継いだという。

◇いずれは定番に…

 高校卒業後、経営を学ぶために京都府の大学へ進学した貫太さんと専門学校を卒業した後、料亭などで修業を積んだ水晴さん。2人は数年前から本格的に父の味を取り戻すべく、メニューの研究をスタートさせた。

 誠さんが残した資料の整理を進める中、スッポンのスープで仕立てたうなしゃぶのメニューを発見し、復活にこぎ着けた。「注目料理に成長し、話題を集め、地域貢献ができたら」とメニュー復活へ向け、インターネット上で支援を募るクラウドファンディング(CF)に挑戦。食事券を応援購入した人を対象に、うなしゃぶを付けた特別懐石料理を店舗や配送で提供することにした。

 「スッポンは臭さなどを抑えるため、丁寧に下処理を施している。スッポンとウナギというぜいたくな組み合わせだが、脂っぽくなく、上品な味わいに仕上がっている」と胸を張る水晴さん。コリコリとした食感のウナギをスッポン1匹を使ったスープにサッとくぐらせて味わうと、上品な風味とまろやかなうま味が口いっぱいに広がるという。いずれは定番メニュー化したい考えだ。

 あれから19年。「父が見たら、どう思うんやろう。頑張るから本当に安心してもらいたいな」と力を込める貫太さん。兄弟の成長を見守り続けてきた母、裕子(ひろこ)さん(58)は「きっとお父さんは喜んでいるよ」と呼び掛ける。大人へ成長した兄弟は誠さんの生きた証でもある“父の味”を未来へつなげるため、今日も店に立ち続ける。

 プロジェクトはCFサービス「Makuake」で今月23日まで公開している。

写真一覧

  • 幻のメニューの復活に取り組む井上貫太さん(右)と弟の水晴さん
  • 地域の人たちに慕われていたという父の誠さんと母の裕子さん(貫太さん提供)

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