記事詳細

なぜフェイスブックが「いじめっこだ」と世界から叩かれているのか

更新
ITmedia News

 いま、米フェイスブックが「いじめっこだ」として世界的にたたかれている。

<< 下に続く >>

 あまりに強大になりすぎたインターネットのSNSプラットフォームによって、その影響力を盾に強硬な行動に出ており、それに批判が噴出しているのだ。

 実は同社に限らず、現在、グーグル(アルファベット社)も、そのサービスを巡って政府やメディアとの関係について議論が続いている。

 フェイスブックやグーグルというと、日本ではGAFAと呼ばれている企業の一つだが、その4社が誕生した米国では「ビッグテック」と呼ばれている。これらの企業の実態を踏まえた呼び方としては「ビッグテック」のほうがしっくりくる。なぜなら、その影響力も「ビッグ」すぎるからだ。

フェイスブックの強大な影響力が議論になっている(写真提供:ゲッティイメージズ)

フェイスブックの強大な影響力が議論になっている(写真提供:ゲッティイメージズ)

 そしてビッグさゆえに、現在、世界各地でその影響力を巡ってもめているのである。では、いったい両社の何が議論になっているのか。最大の問題は、オンラインのサービスによって、商業メディアが報じるニュースを無料で提供し、それにカネを払ってこなかったことである。しかも、そこから莫大なカネを稼いでいるにもかかわらずだ。

 最近、特に大きなニュースになったのはフェイスブック。事の発端は、少し前からオーストラリア政府が検討してきたニュース配信の法規制に関する意見の食い違いだ。

ニュース記事に「料金」を支払わせる法規制へ

 オーストラリアのスコット・モリソン首相は2月19日、フェイスブックのコンテンツにニュース記事などを使う際に料金を支払わせる法案を提出すると語った。

 実はこの議論は2017年から始まっている。当時、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は、フェイスブックやグーグルなどのオンラインプラットフォーマーがメディアのビジネスを妨害しているのではないかとして、公正な取引を目指して規制が必要との議論に乗り出している。

 19年には、プラットフォーマーを監督する組織を作るとオーストラリア政府は主張。しかし、政府側もプラットフォーマーともめるつもりはなく、ACCCと一緒に自主的な規制を行うよう求めた。しかし20年、ACCCはプラットフォーマーが規制に動く可能性は低いとして、法規制が必要だとの結論になった。

 そして20年7月、独禁法にからむ法案を作成し、プラットフォーマーがオーストラリアのメディアのコンテンツを提供(リンクでの表示も含む)する場合にメディア側に支払いをするよう求めた。

オーストラリアでは、プラットフォーマーにメディア記事への支払いを求める法規制が議論されている(写真提供:ゲッティイメージズ)

オーストラリアでは、プラットフォーマーにメディア記事への支払いを求める法規制が議論されている(写真提供:ゲッティイメージズ)

 するとフェイスブックとグーグルはこれに反発。特にフェイスブックは「オーストラリアのメディアのコンテンツ掲載を禁止にするかもしれない」と主張するのだが、この「挑発」に政府やメディアは激怒する。そこから泥仕合の様相になった。政府は、オーストラリアのメディアのニュースコンテンツを禁止にすれば、フェイスブックは「弱体化する」と反論。さらに、12月には議会で、ニュースメディアがコンテンツに対する支払いを求めた場合にプラットフォーマーが交渉に応じることを義務付ける「新ニュースメディア取引法」が提出された。現在も審議が続いているが、超党派で支持されているために、可決する可能性が今のところ高い。

 それに反応したグーグルは、この法案が可決されればオーストラリアから撤退せざるを得なくなると見解を発表している。フェイスブックに至っては強行路線に出た。2月18日、オーストラリアのユーザーが、フェイスブック内でニュースメディアを提供するコンテンツを見られないようにする措置を取った。

 現在、人口2500万人のオーストラリアでは、1700万人ほどがフェイスブックを利用しているが、その人たちが国内ニュースメディアの記事にアクセスできなくなったのである(現在はアクセスを再開させた)。

「いじめっこ少年のやり方」だと批判

 この動きに、世界各地から批判が噴出することになった。英国のデジタル・カルチャー・メディア・スポーツ委員会のトップである国会議員のジュリアン・ナイトは「オーストラリアでフェイスブックがやり始めたこの行為、つまりいじめっこ少年のやり方を受けて、世界中の議員らは同社に対してさらに厳しくなるだろう」と語った。

 要するに、オーストラリアでのフェイスブックの動きは、世界的な批判を浴びて、敵を作ることになるとナイトは警告している。

 ちなみにオーストラリアといえば、「News Corp」という世界的なメディア企業が誕生した地である(現在の本社は米ニューヨーク)。CEOはオーストラリア人である「メディア王」のルパード・マードックで、オーストラリアの大手紙や地方紙のみならず、大手テレビ局や、米ウォールストリート・ジャーナルも傘下に収めている。要するに、世界のメディアの行方を左右する企業の影響力が強い国として、世界的にもその動向と発言は注目される。

 一方のグーグルは、メディア企業と契約を進めている。実は、グーグルは新しいニュース配信サービスである「News Showcase(ニュース・ショーケース)」をドイツやブラジル、そしてつい先日オーストラリアでも開始しており、このサービスに必要不可欠であるニュースのコンテンツにはカネを払う方針をとっている。これから英国とアルゼンチンでも開始されるし、カナダではメディア企業との交渉が続いているようだ。これまで世界のメディア企業と500以上の契約を結び、今後3年で合計10億ドルを支払うことになっている。

 このサービスの特徴は、会員でなければ読めない一部ニュースサイトの課金記事も読めるようになること。そしてグーグルはこのサービスによって、メディア側も課金会員が増える効果が見込めると見ており、ウィンウィンであると主張している。とはいえ課金記事も読めるというこのサービスなら、支払いが発生するのは当然かもしれない。

 ただ、同社の検索エンジンで表示されるニュースはまた別である。これについては引き続き、交渉が続けられることになる。

グーグルは新サービスによって、各国のニュース記事に対価を支払う契約を進めている(写真提供:ゲッティイメージズ)

グーグルは新サービスによって、各国のニュース記事に対価を支払う契約を進めている(写真提供:ゲッティイメージズ)

 世界的には、フェイスブックへの風当たりは強い。オーストラリアのように支払い交渉を法律で義務化すべきとの議論も出ているカナダの専門家は、フェイスブックのような独占企業には多くの国が多勢で対応すべきだとメディアに語っている。

 注目すべきは、フランスだ。フランスでは20年、裁判所がグーグルに対して、メディア企業との支払い交渉をするよう判決を下した。19年に採択された欧州連合(EU)の著作権指令が存在するからだ。今後、フェイスブックにもこれが当てはまる可能性が指摘されており、そうなれば、欧州27カ国全てでニュースをリンクするのに料金を払わなければいけなくなる。

“強欲”とみられているフェイスブック

 もともと以前から、フェイスブックはその影響力の大きさによって、世界各地の政府から好意的には見られていない実態がある。その背景には、課税を逃れながら、世界中のユーザーの個人情報を使った広告費が売り上げの9割を超え、独占企業のように振る舞っていると見る向きもあるからだ。

 それだけではない。米国の黒人差別に絡んだ抗議デモなどが起きてもヘイトスピーチを放置していると批判が起きたり、陰謀論をばらまいていたドナルド・トランプ前大統領や右派に寛容だと批判されたりしてきた。また人権団体などが、非人道的な行為や暴力行為を煽るような投稿を放置している(Twitterなどは削除した)として、米大手企業に対してフェイスブックに広告を出さないように訴える運動を行った。そんなことで、実際にノースフェースに始まり、コカコーラ、スターバックス、ホンダ、リーバイス、ファイザー、マイクロソフトといった大量の企業が広告ボイコットを行った。

 そんな批判は社内にも広がり、ストライキが起きてザッカーバーグがやり玉に挙げられたこともある。ザッカーバーグは独裁傾向が強い、とメディアで批判されたことも一度や二度ではない。米議会からも何度も呼び出しを食らって、証言に立っている。

 こうしたコンテンツに絡む話以外にも、そもそもこうしたビッグテック企業については、ユーザーデータを利用して収益を出している国々で税金を払っていないとして、デジタル課税の問題がずっと議論になっている。欧州ではすでに課金を始めたところもあるが、世界的に今後の課税状況の行方が注目されている。課税対策は企業として必ずしも否定されることではないが、莫大な利益を出しながら支払いを渋る姿勢は「強欲」であると多くの目には映る。

 とにかく劣勢のフェイスブックがまた、今回のオーストラリアの件で話題になったということだ。オーストラリアのニュース記事を利用できなくしたことに対して、同社の主張はこうだ。 ユーザーが見ているコンテンツでニュースの占める割合は4%以下だが、それでも試算では、20年の1年間で、リンクなどによるユーザー誘導で3億1500万ドルの利益をオーストラリアのメディアにもたらしているという。課金購読者を増やす手助けをしているという言い分もあるだろう。

 この先、オーストラリアとフェイスブックの争いがどう展開するのか要注目である。その結果が他の国にも影響を及ぼすことになるからだ。日本だって例外ではない。

ピックアップ

    注目ニュース

      アクセスランキング

      iza! ソーシャルメディア公式アカウント

      • twitter
      • facebook
      • iza!を読む
      ×