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【話の肖像画】ブシロード会長、新日本プロレスオーナー・木谷高明(60)決意を固めエンタメで起業

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産経新聞

起業したブロッコリーの社長時代 =平成14年9月ごろ 1/1枚  《平成6年、10年間勤めた山一証券を退社した。「社長になりたい」というのは小さいころからの夢だったこともあり、会社経営が次の人生となった》

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 起業については本社から秋田支店に左遷された4年ごろから考えていました。会社を辞めて起業した他の人たちを調べたところ、多くの人はそれまでの経験を生かして元の会社の延長上の仕事を始めていたのです。でも僕が勤めていた証券会社は免許事業だし、そのころの証券業界はまだ規制が多くて個人会社を起業することはとてもできない状況でした。そこで全然別のことをやろうと思ったのです。それがエンターテインメント事業でした。

 きっかけは知り合いの経営者のひとこと。「こういうイベントが若者で盛り上がっているよ」と紹介されたのが、自主製作のコミックを持ち寄って個々人で売買する「同人誌即売会」でした。会場に行ってみるとものすごい熱気で、「世の中には自分の作品を人にみてもらいたいという表現者がこんなにもいるのか」とびっくりしました。

 さらに驚いたのが「こんなに薄いコミック同人誌がなぜこんなに高いのか」ということ。大手出版社の分厚いコミック週刊誌が1冊200円なのに、30ページもない薄い同人誌が千円で飛ぶように売れている。なぜだろうと。よく考えてみて、若者世代は「量イコール値段」ではなく、質と希少性を求める時代になっているのでは、と感じたのです。他にはない高い付加価値があれば、若者は買ってくれるのではないかと。会社として同人誌即売会をやってみて、そこから他に広がれば何かが生まれるような気がしたんです。これは勘でしかなかったのですが。でも、始まりはそんなものなんです。

 それからは月に2回、週末を利用して秋田から夜行列車で上京し、同人誌イベントの関係者やコミックの作者に話を聞いて研究しました。上野駅に朝早く着くので人の少ない喫茶店で約束の時間まで一人で過ごす。冬は寒いし、上野駅ではいろんな思いが去来しました。山一証券でお世話になった上司のこと、ぬれぎぬを着せられた悔しさ、そしてこれから起業する不安。成功するかは半信半疑でしたが、「やりたいことを覚悟を決めてやる」との決意が固まりましたね。

 《退社した6年3月に「ブロッコリー」を創業した。コミック同人誌の即売会の主催や同人誌のキャラクターグッズの製作、キャラクターが描かれたカードでのゲームの企画製作などを行う会社だ》

 独立したときの資金は自分の貯金800万円に親からの出資200万円、残りは友人を頼ってどうにか2000万円を準備しました。友人たちには下限100万円でお願いしました。証券マンの経験から、「いくらでもいいから出資してください」ではなく、「僕は本気で起業するので、株主として僕という個人に賭けてもらいたい」とお願いしたのです。これで投資してくれた友人たちには重い責任を負うことになりました。創業当初はイベント事業の収支がトントンで、これだと販管費(販売活動や企業の管理活動にかかる費用)分で赤字になってしまいます。投資してくれた友人たちのことを思うと先のことなど考えていられない状況でした。なんとか株式上場して、身近な人以外にも事業を認めてもらい、そして僕に投資してもらった友人たちに恩返ししたいとの一念でした。(聞き手 尾崎豪一)

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