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【主張】農産物の知財戦略 優良品種の流出防止図れ

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産経新聞

 農林水産省が農業分野の知的財産の保護に向け今年度から5年間の戦略策定を進めている。4月中に公表する。

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 和牛やブドウなどの新品種は日本の知的財産である。長年にわたり品種改良を積み重ねてきた国や自治体、生産者らの努力の結晶ともいえる。

 質の良い和牛が海外で不正に生産され、果物の新品種が海外に流出すれば、日本の農家は大きな打撃を被る。

 国産農産物の安定的な輸出拡大を図るためにも、知財保護のための戦略見直しは欠かせない。新戦略の策定を機に、国には自治体、生産者が一体となった取り組みの強化が求められる。

 知財戦略は平成19年に初めて策定され、今回で3度目の見直しとなる。農水省内に有識者による戦略検討会を設置し、見直しに向けた提言を検討してきた。現在の戦略は27年の策定で地理的表示(GI)の保護制度や海外市場での模倣品対策を主な柱としている。

 GIは滋賀県の近江牛や北海道の夕張メロンなど、優良な農産品について産地を特定できる名称を表示し、食品のブランドを守る狙いがある。新戦略では令和11年までに現在の2倍近い200産品の登録を目指す。GIの相互保護を行う国や地域の拡大を進めるとしている。

 昨年、ブランド果実などの海外への不正な持ち出しを禁じる改正種苗法や、遺伝資源の保護と不正利用への罰則を規定した改正家畜改良増殖法と家畜遺伝資源の不正競争防止法が成立した。

 遅きに失したが、ようやく成立した法律だ。研修会を通じて生産者の理解促進を図り、知財を支える人材の育成も大切だ。かけた時間と費用への努力が報われなければ、生産者の品種改良への意欲は減退しよう。世界と勝負するためにも、新品種の開発とブランド産品の保護育成は急務だ。

 農水省の試算では品種流出でイチゴだけでも5年間で220億円以上の経済的損失が出た。新品種開発には多大な努力を要する。ブドウのシャインマスカットは商品化に20年近くかかった。

 せっかく優良品種を開発しても商品化が遅くなれば国際的な競争力で後れをとることになる。研究開発段階から事業化を見据えた取り組みも必要だろう。新品種の開発に向けた技術革新のための環境の整備も今後の課題だ。

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