記事詳細

【話の肖像画】歌舞伎俳優・中村獅童(48)「いだてん」父の姿重ね

更新
産経新聞

中村獅童=東京・銀座(酒巻俊介撮影) 1/1枚  《NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(平成31年1月~令和元年12月)で日本人初のオリンピック選手となった金栗四三(かなくり・しそう)(六代目中村勘九郎)の兄、実次(さねつぐ)を演じた》

<< 下に続く >>

 実次はすごく弟思いなんですよ。最初は「駆けっこにうつつを抜かすとは」と四三を叱りつけているのに、結局、ストックホルムで開催されるオリンピックに弟を出場させるため金策に奔走して、畑を売ってまでその渡航費を工面するんです。

 台本を読んでいるうちに「誰かに似ているなあ。あれっ、うちのおやじだよ」って思いました。もちろん脚本を書かれた宮藤官九郎(くどう・かんくろう)さんは、うちのおやじと一度も会ったことがないんですけれど、本当、実次は父にそっくりなんです。声はでかいし、絶対に嘘はつかないし、息子の僕が言うのも変なのですが、本当にいい人だった。昔かたぎで曲がったことも大嫌いでした。父は車に乗らず、どこに行くにも地下鉄を利用していたんですが、駅でマナーの悪い若者を見かけると「やめなさい」と叱りつけるものだから、若者に囲まれて袋だたきに遭ったこともあるんですよ。

 僕は一人っ子で兄弟がいないからわからないので、実次を演じているときは、弟思いだった父を意識していましたね。それに主役の四三を演じていたのが勘九郎さんだから、余計にいろいろな思いが入り交じっていました。熊本から上京する弟を見送るシーンは、脚本上は号泣とまではいかないのに、本当に鼻水をずるずる流して泣きながら見送ってしまいましたよ。

 勘九郎さんのお父さん、つまり勘三郎の兄さん(五代目勘九郎でのちの十八代目勘三郎、平成24年死去)には本当の息子のようにかわいがっていただきました。それなので勘九郎さんが子供のころから兄弟のように育ってきた感じで、微力ながら勘三郎の兄さんに恩返しできたらという思いもありましたね。あと勘九郎さんとは、若手の登竜門とされる「新春浅草歌舞伎」で10年近く一緒に汗を流してきた仲間でもあるんですよ。大先輩から厳しいご指導を受け、怒られながら、泣きながら、の毎日でしたからね。

 《来年放送予定のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では御家人、梶原景時(かじわら・かげとき)を演じる》

 梶原景時は、「梶原平三誉石切(へいぞうほまれのいしきり)」という演目をはじめ歌舞伎にもよく登場する人物で、自分自身も演じたことがあります。諸説ありますが、その人柄は大悪人といわれることも多く、源頼朝の死後、一族とともに滅ぼされた悲劇の武将というイメージですかね。ただ脚本は三谷幸喜(みたに・こうき)さんですから、ただの悪人というわけではないと思います。これまで三谷さんの作品に何度か出演させていただいたことがありますが、三谷さんはいつも自分が知らない自分を引き出してくれるんです。今回も、三谷さんが梶原景時をどのように描いてくださるのか今からワクワクしています。

 実は、大河ドラマにはこれまで放送された「春日局」「毛利元就」「武蔵」「新選組!」など多くの作品に出演させていただいています。「春日局」は高校生のときで、歌舞伎以外のお芝居の経験がほとんどなかったので、手も足もでなくて出演シーンのほとんどがカットされていましたよ。(聞き手 水沼啓子)

ピックアップ

    注目ニュース

      アクセスランキング

      iza! ソーシャルメディア公式アカウント

      • twitter
      • facebook
      • iza!を読む
      ×