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【主張】新出生前診断 国は母体保護法の尊重を

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産経新聞

 ダウン症などの染色体異常の有無を胎児の段階で妊婦の血液から調べる「新出生前診断」について、厚生労働省は31日に専門委員会を開き報告書をまとめる。

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 専門委員会は、実施施設の認証などに国が関わることでおおむね合意しており、新出生前診断の実施体制に国が関与する方針が示される見通しだ。

 新出生前診断は、「命の選別」に関わる重い倫理的問題をはらんでいる。

 国として新出生前診断に関わるからには、倫理的問題に正面から向き合うことが不可欠である。

 これまでは、日本産科婦人科学会(日産婦)や日本医学会に指針の策定や運用を委ね、国は関与に慎重だった。国が実施体制への関与にかじを切った背景には、無認定施設での新出生前診断が急増、横行している実態がある。

 無認定の拡大は止めなければならないが、国が認定に関与することが「命の選別」の容認、あるいは助長につながることは、絶対にあってはならない。

 現行の母体保護法では、胎児の異常を理由とする中絶は認められていない。

 一方、平成25年に臨床研究として始まった国内の新出生前診断は昨年3月までに約8万7千人が認定施設で受診した。染色体異常が分かった1437例のうち1083例が妊娠を中断。子宮内胎児死亡が245例、妊娠を継続したのは57例と報告されている。

 新出生前診断が「胎児の異常」を理由とする中絶を強く誘導していることは否定できない。

 特定の障害や異常を胎児の段階で調べる出生前診断は、その技術自体が命を選別する意図を持っていると認識すべきである。

 出産の高齢化などで、新出生前診断への関心は高まり、受診希望者は増えるだろう。国は実施体制に関与するとともに、妊婦の適切な意思決定を支援するため情報提供を強化する方針だ。

 国は、母体保護法が胎児の異常を理由とする中絶を認めていないことの意味を、受診希望者だけでなく妊婦やその家族、そして国民に丁寧に説明すべきである。

 新出生前診断に関わることと整合性はつき難いが、尊重すべきは母体保護法である。出生前診断の倫理的問題に向き合うことは、差別や偏見のない社会を築くための大切な一歩となる。

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