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【主張】タレント侮辱 五輪開催の意味問い直せ

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産経新聞

 次元の低い話にあきれる。これが祭典の開幕を4カ月後に控えた組織の実態なら、国民をばかにしている。

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 東京五輪・パラリンピックで開閉会式の演出統括役を務める佐々木宏氏が、式典に出演予定だった女性タレントの渡辺直美さんの容姿に豚を重ねるような演出案を、昨年3月に通信アプリ上で関係者に示していた。

 「多様性と調和」という大会理念を理解しているとは思えぬ、低俗な発想である。

 佐々木氏は謝罪文を出し、辞任したが、日本社会の後進性を象徴する騒ぎとして報じた海外メディアもあり、その責任は重い。

 大会の開閉会式は当初、狂言師の野村萬斎氏をトップに各界で活躍する計7人のチームで制作を進めてきた。しかし、新型コロナウイルス禍による延期で簡素化が不可避になったとして、昨年12月にチームが解散した後は、佐々木氏が統括役に就いていた。

 式典チーム内の不協和音を指摘する声は以前からあった。それが聖火リレーの開始を目前にした時期に世界に発信されたことも情けなく、恥ずかしい。

 大会組織委員会も一連の経緯を猛省すべきだ。2月には、前会長の森喜朗氏が女性蔑視と取れる失言で引責辞任したばかりで、度重なる失態は目に余る。

 救いがあるとすれば、渡辺さんの発表したコメントだろう。「それぞれの個性や考え方を尊重し、認め合える、楽しく豊かな世界になれる事を心より願っております」。大会開催の意味を過不足なく伝える言葉である。

 開会式のチケットは高額で販売され、近年の大会では、開催国が競うようにして演出に力を入れている。その陰で、五輪やスポーツの価値という大会の本質に関わるメッセージは、置き去りにされて来なかったか。

 橋本聖子会長は後任の人選を急ぎ、佐々木氏の企画案をベースに式典準備を進める考えを示した。それはやむを得ないとしても、五輪開催の意味を問い直し、演出のあり方を精査すべきだろう。

 放送権者の顔色をうかがう国際オリンピック委員会(IOC)の都合に振り回されてはならない。何のために五輪を開くのか。東京大会のメッセージを世界に伝えること以上に、優先すべき課題はないからだ。

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