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【話の肖像画】「世界の盗塁王」福本豊(73)返り討ち…完璧やった王さん

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産経新聞

昭和46年の日本シリーズ第3戦。山田久志投手から逆転サヨナラ3ランを放つ王貞治選手=後楽園球場 1/1枚  ■返り討ち…完璧やった王さん

 《昭和46年、パ・リーグを制した阪急(現・オリックス)は日本シリーズで巨人と対戦した。阪急にとって42年から3年連続で苦杯をなめた相手だ。阪急はこのシーズン、ベテランの主力選手に2年連続盗塁王の自身と加藤秀司(英司)内野手、山田久志投手の新戦力が加わり、勝負は互角と思われていた》

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 この年はヤマ(山田投手)が放ったときは勝てると思ったし、僕が出塁すると加藤は絶対と言っていいほど1点を返して、ほんまに何とかしよった。日本シリーズも「今年は勝てるで、頑張ろう」と選手みんなで言っとったけど。第1戦は終盤に盗塁に成功したけど、最終回の大事な場面ではホリ(堀内恒夫さん)と森(昌彦、祇晶)さんのバッテリーにやられました。

 《2戦目は山田-米田哲也の継投と打線の活躍で1勝1敗に。迎えた第3戦、阪急は序盤の1点を山田が守ったまま、最終回を迎えた》

 後楽園球場での第3戦はよう覚えてます。10月15日、前々日の試合で勝ってるし、勝てたと思った試合やったんですけど。ヤマが八回まで出した走者は2人だけ。1-0でリードしていた九回裏でした。1死後、巨人は柴田(勲)さんが四球で出塁。2死後に長嶋(茂雄)さんのゴロがショートの左を抜いてセンター前に転がった。一瞬にしてピンチになった。2死一、三塁で打席に王さん。ヤマは果敢に勝負を挑んだけれど、直球を右翼スタンドへ、逆転サヨナラ3ランを運ばれた。王さんは完璧やった。打たれた瞬間、僕らは打球を目で追うだけでほとんど動けず、心の中で「あ~っ」。マウンドのヤマは動くことさえできんかった。

 王さんや長嶋さんには、何か知らんけど雰囲気をつくられてしまう。2人を当然、マークするんですけど、今度は後ろの打者にやられたりとかね。この試合を勝ってたら、結果は変わっていたかもしれへんね。その後も知らんうちに負けて終わってしもうたという感じやったね。やっぱり巨人は強いと思いました。

 《初めて主力として戦った日本シリーズは、1勝4敗で巨人に返り討ちにされた》

 日本シリーズということで緊張はもちろんするんだけれど、超満員の中でプレーすることでも圧倒されました。勝っている試合なのに、巨人の打者が四球で出塁するだけで、声援のすごさに、ものすごうピンチみたいに感じさせられる。球場の歓声から一転、ホテルの静かな部屋に帰ったら、なんか「はあ~」とホッとしている自分がいました。リーグ優勝しても日本シリーズで巨人に負けてばっかりやから、「日本シリーズに出るなー」とファンのヤジも受けました。そりゃ、悔しかった。すでに僕の中でも「打倒巨人」がしみ込んでいた。49年に監督が上田利治さんに代わられてからは、キャンプから「巨人に勝つための練習」でした。合言葉やないけど、ほんまに負けてばっかりやったからね。(聞き手 嶋田知加子)

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