この6府県は大阪、京都、兵庫の関西3府県、愛知、岐阜の東海2県、福岡県で、新規感染者数などほとんどの指標で、最も深刻な「ステージ4(爆発的感染拡大)」を脱した。残る首都圏の1都3県については、3月7日の期限通りの解除を目指している。
6府県では解除後、イベントの入場制限を緩和する。午後8時までとしている飲食店の時短営業の要請も段階的に緩める。緩和後は協力金を減額して支給する。6府県の知事や政府は地域の感染状況を注視し、再拡大の傾向が表れれば引き締め措置をためらってはならない。
西村康稔経済再生担当相は26日、「これで大丈夫ということではない」と述べ、緊急宣言を先行解除する6府県でも感染防止対策を徹底する必要性を指摘した。
その通りである。ウイルスは人々の気の緩みに付け込む。再拡大を招いて、3度目の宣言発令に陥らないよう警戒は怠れない。
先行解除によって、対象外となった首都圏の人々が影響を受け、自粛が緩む恐れはある。東京都は都立公園の駐車場や運動施設の使用の緊急停止を決めるなど、一層の引き締めを呼びかけている。
首都圏の新規感染者数は下げ止まりの傾向にあり、医療機関の逼迫(ひっぱく)は続いている。政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は24日、「首都圏は中京圏や関西圏に比べて改善のスピードが弱い」と述べた。危機感を共有して緊急事態を乗り切りたい。
残念だったのは、菅義偉首相が先行解除の決定を受けた26日の記者会見を見送ったことだ。記者団からぶら下がり形式の取材を受けるにとどまった。
首相は記者会見で国民に対して丁寧にコロナをめぐる状況を説明し、なお気を引き締めるよう呼びかけるべきだった。
加藤勝信官房長官が、宣言の全面解除ではないから首相会見は必要ないと説明したのはおかしい。首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」から高額接待を受けた山田真貴子内閣広報官が司会役であるため、会見をとりやめたとの見方がある。新型コロナとの戦いを優先すべきである。