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【主張】田中の楽天復帰 野球の力を再確認したい

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産経新聞

 東日本大震災から10年の節目に、あの男が帰ってくる。

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 米大リーグ、ヤンキースからフリーエージェントとなっていた田中将大がプロ野球東北楽天と2年契約を結んだ。

 思いだす。震災の年、当時の嶋基宏選手会長が「見せましょう。野球の底力を」と宣言したことを。2年後、その嶋とバッテリーを組む田中は24勝0敗という驚異的な活躍で楽天を球団創設9年目の初優勝に導いた。その勢いで巨人との日本シリーズも制し、田中は最後のマウンドにも立った。

 日本一の瞬間、宮城県南三陸町の仮設商店街に集まった被災者らの歓喜の爆発が忘れられない。それは野球と地域を結びつける、最も幸福な瞬間だった。

 10年前、サッカーの女子ワールドカップドイツ大会で、日本代表「なでしこジャパン」は被災地のビデオに涙しながら優勝した。阪神大震災が起きた平成7年には、オリックスが「がんばろう神戸」を合言葉にイチローらの活躍で優勝した。広島が豪雨災害に見舞われた翌年にはヤンキースから黒田博樹が復帰して28年、「カープ女子」の熱狂とともに25年ぶりの優勝を果たした。

 スポーツの世界には、こうした奇跡のドラマが起こり得る。

 田中の8年ぶりの国内復帰は、新型コロナウイルス禍で米国の移籍市場が低調だったことに由来する。それはさておき、震災10年でなお復興途上にある、被災地のファンへの贈り物と受け止めたい。夏の東京五輪では、日本のエースとしての期待もかかる。

 コロナ禍で東京五輪の開催が危ぶまれている。もう一度、大会招致時の高揚を思いだしたい。

 最終プレゼンテーションで被災地、宮城県気仙沼市出身のパラリンピアン、谷(旧姓・佐藤)真海が訴えたのは「スポーツの力」の再確認と発信だった。

 谷は「スポーツの力」を「新たな夢と笑顔を育む力、希望をもたらす力、人々を結びつける力」であると表現した。いずれも、コロナ禍のいまこそ、必要とする力ではないのか。

 スポーツは「不要不急」なものかもしれない。映画、演劇、音楽なども同様の扱いを受ける。ただしこれらが存在しない社会は全く味気ないものとなるだろう。田中の復帰を喜ぶ東北のファンの声を聞き、改めてそう確信する。

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