ブラザー工業株式会社の子会社で国内販売会社のブラザー販売株式会社は、8月30日に新しいプリンターを発表した。A4サイズの用紙を自動でA5サイズにカットできる製品で、手間をかけずに小さい紙への印字を可能とした画期的なプリンターとして注目を集めている。2022年度のグッドデザイン賞も受賞した製品の魅力にせまった。

A4をA5に自動でカットする機能を搭載した新しいプリンター「CUTFIT」。開発に携わったブラザー工業の関係者3人に話を聞いた。彼らが語った製品への思い、こだわりポイント、今後の展望とは。

左から津村心氏(商品企画担当)、三浦克朗氏(開発責任者、プロジェクトリーダー)、稲田俊也氏(デザイン担当)

ブラザーのプリンティングビジネスの「次」を切り拓く

Q:まずはこの製品の開発にいたった経緯について教えてください。

三浦:プリンター・複合機は現在のブラザーの主力事業ですが、世の中のデジタル化やペーパーレス化の進行により、市場自体は縮小していくと認識しています。その中でも、2030年度に向けたブラザーグループのビジョン「At your side 2030」では、プリンタービジネスを注力領域の一つに定めていますので、われわれは今後も働く人々の期待に応え続けるとともに、これまでの事業の枠を超えて新たな柱を築いていくことを目指していきます。今回の製品はまさにプリンタービジネスの次を切り拓く製品の一つだと思っています。また、お客様から積極的に選んでいただける、ワクワクする製品に仕上がったと自負しています。

津村:今までの機能の延長線上ではなく、なにか新しくお客様に提案できることはないか、ブラザーらしい製品ができないかと考えてきました。数年間にわたり、新しい製品を考える、部門横断型のプロジェクトチームの中でアイデアを出し、さらにさまざまな調査を行いながら検討してきました。そして、その中で最終的に出来上がった製品が自動カッティング機能付きのプリンター「CUTFIT」(*日本国内限定の製品名)です。

        三浦克朗氏(開発責任者、プロジェクトリーダー)

A4用紙を自動でA5サイズにカットできるプリンター

Q:この製品の特徴について教えてください。

津村:A4用紙を自動で半分のA5サイズにカットできる自動カッティングプリンターです。今まで同様にA4サイズで印刷できることに加えて、プリンターに内蔵されたカッターを使って半分のA5サイズにカットしてアウトプットすることが可能です。お客様にとっては、A4用紙をプリンターの給紙トレーにセットしておくだけで、A4でもA5でも出力ができるため、さまざまなシーンで活躍できる製品になっています。

身近に存在するA5サイズのニーズ、コロナ禍でさらに高まる需要

Q:どのようなシーンでの利用を想定していますか?

津村:紙には印刷したいが、A4サイズは必要ない場面での活用を想定しています。例えば、免許証や保険証などの身分証明書のコピー、学校や学習塾で行われる小テスト、資格や試験の勉強の際に一問一答形式で問題と回答を印刷する場面では、A4サイズが必要ないことも多いと思います。印刷はしたいけど、A4サイズは必要ない。そのような場面で大いに活用していただけると思っています。

もちろん、A5だけではなく、これまでと同様にA4用紙での印刷もできますし、今までプリンターに搭載してきた機能はそのままですので、引き続き従来通りの活用もしていただけます。

Q:最近は小さい紙への印刷ニーズが高まっているのでしょうか?

津村:コロナ禍で在宅勤務やリモートワークの増加、あるいはオフィスでの勤務と併用されている方が増え、印刷物を持ち歩く機会が増えている方もいらっしゃると思います。用紙サイズが半分になれば持ち運びも簡単にできます。また、オフィス以外では限られたスペースで仕事をされている方も多いため、A5サイズの用紙を用いることで、スペースを有効に使っていただけます。

今回の製品開発にあたりプリンターユーザーを対象に調査してみたところ、A4用紙を半分に折る、あるいは半分に切って使われている方が多くいることが分かりました。また、A5サイズは一般的な大きさのノートやメモ帳に挟むのにちょうどいいサイズだと分かりました。さらに、特に女性は持ち運ぶカバンのサイズが小さいことが多く、ノートパソコンのサイズより小さいサイズの印刷物を求めている方が多くいました、つまり、お客様の中に潜在的にA5サイズの印刷ニーズがあることが判明したのです。ちなみに、わが家でも、冷蔵庫やパントリーのドアにA4用紙を半分のA5サイズに切ったり折ったりしたものをマグネットで貼っていますね。仕事でも家庭でもA5サイズへの印刷ニーズは多くあると判断しました。

               津村心氏(商品企画担当)

Q:他社のプリンターとの違いを教えてください。

三浦:現時点では、他社に同じような機能を搭載した製品はありませんので、業界で唯一の自動カッティングプリンターになります。(*スキャン機能付きインクジェットプリンター市場において(2022年9月時点)。ブラザー調べ)

コンパクトさと使い勝手の良さはそのままに

Q:革新的な製品ですが、新たな技術などが搭載されているんでしょうか?

三浦:革新的な技術を使っているわけではありません。プリンターの製品内にカッターを内蔵し、そのカッターが印刷と同時に紙を半分にカットし、出力されてくる至ってシンプルな仕組みです。また、お客様側には特別な操作を必要とせず、A4サイズの用紙を手元に用意するだけで、A5へのカットを選択すれば、手間をかけずにA5サイズでの出力が可能になっています。

Q:見た目は通常のプリンターと変わりません。開発時の苦労や工夫した点を教えてください。

三浦:ブラザーのプリンター・複合機は多機能でありながらコンパクトで省スペースを実現している点を多くのお客様から支持していただいています。今回の製品開発にあたっては、現行のプリンターのサイズを維持しつつカッターを内蔵することを目指しました。

コンパクトなブラザーのプリンターは、すでに狭小設計のため、わずかなデッドスペースを見つけてカッター機能を入れ込む必要があり、苦労しました。試行錯誤しながらカッター関連の部品を設計し、部品の設置についても工夫しました。また、お客様が手を入れられないところにカッターを設置することで、絶対にカッターを触ることがない安全設計を実現しています。

稲田:通常の使用環境では絶対にカッターに触れることができない設計になっています。何気ないことかもしれませんが、デザイナーの視点から見ても、サイズの制約がある中で実現しているのはすごいことだと思います。

    CUTFIT DCP-J1800Nのサイズと外観は通常のプリンターと変わらない

こだわったのはカットする速度と安全性

Q:カッターの音が気持ちいいですが、こだわりポイントですか?

三浦:ハサミや裁断機で切るよりもきれいな断面の実現を目指しました。実際にカット断面を見て触っていただくと、感じていただけると思いますが、凹凸のない断面を実現するために、搬送技術やカッティング制御などを調整しました。

カッターの音は結果的に非常に気持ちいい音になりましたが、意図したわけではありません。カット断面にこだわった副産物だと思います。ただ、紙をカットする時間はいろいろと試した結果、0.5秒が最も心地良いと感じる時間だと分かりましたので、0.5秒でカットできるように制御しています。

Q:デザイン面で工夫した点を教えてください。

稲田:いろいろありますが、特にこだわった点が2つあります。

まず、カット機能を本体からの操作に加え、スマホアプリからでもお客様がスムーズに操作していただけるように本体およびアプリの ユーザーインターフェースのデザイン、使い勝手を工夫しました。多くの制約条件をテストしながら、最適なインターフェースはどのようなものなのか、使い勝手が良いデザインはどのようなものかを考えながら作り上げていきました。

次に、今までとは違う機能を持った製品ですが、今までのプリンターシリーズの中に溶け込む本体デザインを意識しました。ただ、その中で新しい機能を搭載していることがお客様に伝わることも大切ですので、それを製品デザインにいかに「ちょうどよく」反映させるかという点を工夫しています。

              稲田俊也氏(デザイン担当)

お財布にも環境にも優しい

Q:紙のサイズを半分にできれば、コストも半分にすることができますか?

津村:A4サイズをA5サイズに縮小印刷することで、用紙を節約できることに加え、インクコストを約半分におさえることができます。これはユーザーの皆さんへの金銭的なメリットになるだけではなく、環境への負荷も軽減できます。

また、通常のプリンターでA4とA5を印刷するには二つの給紙トレーが必要ですが、この製品は一つの給紙トレーで対応できるので、用紙管理も簡単で楽になります。

Q:今後の展望について聞かせてください。

津村:今回の製品開発にあたり、社内外で調査を行ったところ、A5サイズが活用できるシーンが非常に多いことが分かりました。一方で、A5サイズの用紙は流通量が少ないため、単位面積あたりの価格では高くなってしまうことも知りました。CUTFITは非常に多くの場面で活用できる機能を搭載していますので、より多くの人に製品の価値を知っていただき、活用していただくことで生活を豊かにしていただきたいと思っています。

また、CUTFITを今回限りの製品で終わらせたくないと思っています。より多くのお客様に価値を知っていただき、使っていただき、認知されていくことで、スタンダードモデルになることを狙っています。

三浦:まずは皆さんにぜひカッティングプリンターを使ってみて欲しいですね。いつも使っているA4用紙を給紙トレーに入れておくだけで簡単に半分のA5用紙のサイズで印刷できる便利さと、A5サイズの使い勝手の良さを体感していただきたいと思っています。

稲田:これからもお客様に新しい提案ができるように活動していきますので、期待していただきたいです。皆さまの期待に応える製品の開発を続けていきたいと思います。

2022年度グッドデザイン賞を受賞

A4をA5サイズにカットできる機能を搭載した新しい使い方の提案が評価され、CUTFIT プリンター(インクジェット複合機 DCP-J1800N)は、2022年度グッドデザイン賞を受賞した。カッティング機能に加えて、初めてでも分かりやすくスムーズに使える操作性の高さ、コンパクトで塗装レスな本体などの環境への配慮がされている点も高く評価された。

■プロフィール

三浦 克朗

ブラザー工業株式会社

IDS開発 1グループ チーム・マネジャー

稲田 俊也

総合デザイン部 プロダクトデザイングループ チーム・マネジャー

津村 心

商品企画推進部 新領域商品企画グループ

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