株式会社ピーカブーは、紫外線を完全にカットする特殊素材を使用した「UVカット帽子」を2023年5月10日から販売を開始しました。
この帽子では、難病である色素性乾皮症(XP)のためのUV防護服と同じ特殊な素材を使用しました。色素性乾皮症(XP)とは、露光部の皮膚にしみがたくさん生じ、皮膚が乾燥し、皮膚がんが普通の人の数千倍多く生じる病気*であり、普段から紫外線に当たらないような厳重な対策が必要になります。
*難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/112
このような商品を作るまで、現在まで変わらない創業時の想い、そして商品開発を進める中で出会った方々の影響が大きくありました。本ストーリーでは、「UVカット帽子」を販売するまでの軌跡と商品に込められた想いについて伝えます。
約20年前、育児中のママが創業。子どもの敏感肌をきっかけに、エポカルを立ち上げる。
株式会社ピーカブーは2004年、現代表である松成が立ち上げた会社です。当時の松成は、1歳だった長男を育てるママ。
息子がアトピーで、日焼けがひどかったこともあり、皮膚科医に紫外線対策を勧められたことから始まりました。現在では一般的になっているような商品も当時は少なく、苦労したことが原体験になりました。
ブランド名は「EPOCHAL(エポカル)」。英語の「画期的な」という意味を表す言葉をあて、20年前には1枚も無かったUVカットウエアの製造にチャレンジしました。
販売はWEBショップを中心に行っていますが、日本全国で約100園もの施設がエポカルのUVカット帽子やウエアを制服や制帽として採用してくださるなど、子どもの為に必要な商品を届けています。
そして現在では、紫外線対策だけでなく、虫刺されや、あせも、熱中症の対策も兼ねたアウターウエアまで広がり、約500点もの製品を企画・販売しています。特に、蒸し暑い日本の夏における、肌の悩みを解決するUVカットを基本とした機能性ウエアを目指しています。
様々な挑戦を重ね、日本唯一の全世代型UVカットウエアブランドとなりました。
「UVカット帽子」を作るきっかけとなった、2017年。色素性乾皮症のお子さんを持つお父さんとの出会い。
今回の商品を開発するきっかけは、約6年前まで遡ります。2017年、お会いできませんか?と「ふれっくるの会」の会長である有元さんからお声掛けをいただきました。
有元さんは、色素性乾皮症(XP)のお子さんを持つお父さんです。実際にお話を聞き、XPの患者さんの会に出席させていただくことになりました。会の中で様々な家族の方とお話をする中で、下記の様な切実な声・希望を聞きます。
「色素性乾皮症という病気を多くの人に知ってもらいたい」
>知ってもらうことにより解決に導けるかも
>XPの生活や格好を悪く言わないでほしい
>制限ある生活を理解してほしい
「子ども達にみんなと同じ経験をさせていあげたい」
>自由に身体を動かせる時にたくさんの経験をさせてたい
>夜だけの遊びではなく、日の下でも自由に動きたい
特に、「運動会にお友達と一緒に参加させてあげたいのに、暑くてとてもこの服では数分と持たないんです」という声に、同じ「母親だけの会社=株式会社ピーカブー」のスタッフが胸打たれ、なんとしてでも、この願いを叶えたい!と考え商品開発を決意します。
この服、というのは色素性乾皮症(XP)を持つ方々の生活に必須な、できうる限り日焼けをしないように行う対策の1つです。例えば、運動会などの炎天下での学校行事に参加するときは、特殊なスーツ(防護服)・サングラス・手袋・長ズボンなどを着て参加しなければなりませんでした。
スーツは全身を紫外線から守る物になるため(顔の前も透明のUVカットビニールでガードする仕様です)炎天下で着るとものすごく暑く、当然ながら長時間着ることが出来ません。暑くて5分と外にいられない=野外での暑い時期のイベントの参加が難しい、ということもあり涼しさが続くウェアが求められていました。
しかし、ただウエアを作るだけでは、たくさんの方に病気のことを知ってもらうことができません。そこで、クラウドファンディングを通した資金調達と患者さんの暮らしや病気について知ってもらう機会を作ることが良いのではないかと考えつきます。
そして、この施策を実現ができるのは、私たち株式会社ピーカブー/エポカルではないかと確信します。創業から紫外線対策だけに特化し、人の肌の日焼け・夏の過ごし易い衣料を考えてきたからこそ提供できる独自の価値があると考えました。
そこから4年という年月をかけ、商品開発が完了、2021年8月14日にクラウドファンディングを無事に実施することができました。
そのクラウドファンディングでは、目標金額の176%という1,535,000円が集まり、多くの反響を呼ぶことに成功しました。
NO!UVマークを通じ、更なる取り組みの認知拡大へ。
前回のクラウドファンディングから約2年。エポカルは、更に新しい挑戦へ取り組むことを決めました。それは、2023年5月10日から販売を開始した完全遮光ハットです。
エポカルが創業当時から大切にしてきた紫外線を防ぐための工夫だけでなく、色素性乾皮症(XP)について更に広く知ってもらうための工夫を詰め込みました。
この商品の大きな特徴は、完全遮光で保冷剤が入れられるだけでなく、NO!UVマークとタグにメッセージが添えられていること。このタグには、「I wanted you to know that some people can’t be exposed to UV light=“紫外線に当たれない人がいることを知ってください」というメッセージが書かれています。
加えて、NO!UVマークという新しく作成したロゴマークを沿えました。これは、色素性乾皮症のお子様を持つ阿部さんがデザインし、作成されました。
色素性乾皮症など、紫外線に当たれない病気の方々は、頭の先から足の先まで紫外線から身を守るため、少し変わった格好で外に出ないといけません。時にその恰好を指摘されることもあり、嫌な思いをすることがあります。
一目見て紫外線に当たれないことを伝えられないかと考え、マークを作ることを思いついたそうです。
外見からは分からなくても、援助や配慮を必要としている方々が援助を得やすくなるようなHELPマークの認知も上がってきましたが、どのようにを助けてほしいのかわかりづらいことが問題になっています。そんなHELPマークに、No!UVマークを付けることで、紫外線に当たれないと一目でわかってもらえるデザインとなりました。
このマークは、染色体の数46本で太陽の形を作られており、8本だけ色が黄色いのは、色素性乾皮症のタイプがA~G,V型がありその8種類を表しています。
マークの認知が進み、なぜそのような格好をしなければならないか理解してもらえれば、心無い言葉を受けることも減ると考えています。我が子を守るため始まったプロジェクトをエポカルも応援したいと考えました。
私たちはこの活動に賛同し、帽子に、色素性乾皮症の子供がいるお父さんの承諾を得てリデザインしたNO!UVマークのエポカルオリジナルのタグをつけました。このマークが病気について多くの方に知っていただくきっかけとなるよう発信してまいります。
商品としての使いやすさも追及。商品の特徴について。
想いを伝えていくにあたって、たくさん使ってもらうべく様々な工夫を施しました。大きく7つのポイントについて、下記にて紹介します。
①日差しを完全にシャットアウト
紫外線だけでなく光を完全に通さない素材は、難病で全くUVに当たれない方(XP=色素性乾皮症)の防護服にも使われた素材を採用。99.99%遮蔽素材を使用=紫外線B波(UVB)と紫外線A波(UVA)の両方から肌を守ります。
※UVカット率99%という数値は外部機関に検査を依頼した数値。生地自体は、遮光素材、酸化チタンを練り込んだ紫外線素材など3重構造になっています。
②深くかぶり首から上をカバー
紫外線対策に有効なデザインとつばの長さ、つばの角度を設計。
一般の帽子より長めで、被りが深く、日本人の頭の形に合わせたフォルムは頭全体を包み込むだけでなく、つばの長さは約10㎝!
つばの長さも大切ですが、エポカルのこだわりはそれだけではありません。つばの角度で視界の範囲が決まり、更に被りの深さで、陰になる広さが変わります。何度も型紙を切ったり貼ったりしながら、視界を確保しつつ、お顔をしっかり守れるつばの形と大きさを常に研究しています。
③保冷剤ポケットが天井に
真夏も少しでも涼しくかぶるために「保冷剤ポケット付き」にしました。頭の上に載せることで、冷たい冷気が下に降りてきて、頭全体を涼しくしてくれます。
④急な雨でも対応できるように防水性に優れた素材を採用
急な雨でも対応できるように優れた防水素材を採用
この素材は、防水効果もあります。多少の雨も平気です。
⑤顎ゴム取り付けループが!
エポカルブランドの帽子のスタンダードな機能性の一つに「顎ゴム取り換えループ」があります。
風の強いときや、顎ゴム必須の時は、結ぶだけで取付完了!
帽子が飛ぶのを防ぐためにお気に入りのひもなどを付けるのもOK。
⑥洗濯を繰り返しても落ちない効果
破れるまで効果の続くUVカット特殊素材です。
UVカット素材を繊維に練り込んでいる特殊素材を使用していますので、お洗濯を繰り返してもUVカット効果は落ちません。
形崩れを防ぐため、手洗いをお勧めしています。洗濯後は形を整えて日陰で乾かしてください。
⑦再起反射プリント
頭部のプリントは、再起反射プリント。
夜道を歩いているときも、ライトで光るプリントは、存在感をアピールできるので、安全です。
今後の展望
今までの防護服は、120cm・150cmと子供のものから始まり、大人のレディースMサイズ、メンズLサイズしかありませんでした。
XPの子どもたちに「運動会」を経験させてあげたい!と始めたUV防護服は、大人用が思ったより早く売り切れてしまい、紫外線に対してセンシティブな方々が、あまりにも多いことにスタッフ一同驚きました。
先だってのクラウドファンディング後、難病が見つかってすぐ、小さなお子さんをどうやってUVケアしたらいいのだろうと悩まれる方が多いことに気付きました。
また、皮膚がん発症を防ぐためには、早期発見から肌を守ることが必要不可欠のことから赤ちゃん用のケープ型の防護服の開発を始めています。
さらに、フロントオープン型の防護服も開発中。
世界のXPの子どもたちや、紫外線や光を当たることができない病気の方々に
このエポカル防護服シリーズをお届けしたいと思っています。