2月9日(木)、統合型アクセラレータープログラム「TRIBUS 2022」の統合ピッチコンテストがリコー本社で開催されました。2020年からのコロナ禍以降、3年ぶりとなるリアル会場とオンライン配信によるハイブリッド形式で行われたピッチコンテストには、昨年10月開催のスタートアップピッチコンテストで採択された社外スタートアップ企業8社と、社内選考を通過した社内起業家10チームが登壇。“明るい未来をつくる”というテーマのもと、約3ヶ月間、取り組んできた事業プランの発表やプロトタイプによる実証実験結果など、事業の進捗状況や今後の展望について成果発表を行いました。

冒頭、リコー代表取締役社長執行役員・CEO(ピッチコンテスト当時、現代表取締役会長)の山下良則氏によるメッセージ動画が投影され、開会の挨拶が述べられました。

「コロナ禍以降、不確実であることが確実と言われている中ではあるが、これからはそういったある種の甘えにとどまることなく、未来の動きを読み切って、意志を持って明るい世界を作っていかねばならない。まさに、今年度のTRIBUSのテーマがリコーとしての決意を表している。このテーマに共感し、参加してくださったスタートアップ企業の皆様、社内起業チームのメンバーと共に、新たな一歩を踏み出し、さらなる価値創造の道を歩んでいけることを心から楽しみにしている」。

リコー代表取締役社長執行役員・CEOの山下氏

2019年、事業と人々を育む事業創造のための挑戦の場としてスタートしたTRIBUSは、年々盛り上がりを見せ、これまでの応募総数は社内327件、社外467件にのぼります。4年目を迎えた今回の統合ピッチコンテストは、2019年以来のリアル会場とオンライン配信によるハイブリッド形式で開催。コロナ禍の2020年度に立ち上げた「TRIBUSの香りを会場参加者全員で共有する」という試みを継続して展開し、来場者にはもちろんのこと、オンラインで参加した審査員にも、独自に作り上げた“香り”を事前に配布しました。TRIBUS事務局キャプテンの森久氏は「この香りを嗅ぎながら、一体感をもって開催させていただきたい」と参加者に呼びかけました。

TRIBUS2022 事務局キャプテンの森久氏

今回、社外審査員を務めたのは、岡洋氏(Spiral Innovation Partners 代表パートナー)、合田ジョージ氏(株式会社ゼロワンブースター代表取締役CEO)、種市亮氏(ゼロイチキャピタル代表パートナー)、矢澤麻里子氏(Yazawa Ventures代表)の4名。社内審査員は、坂田誠二氏(株式会社リコー 取締役 コーポレート専務執行役員CTO)と駒場瑞穂氏(株式会社リコー TRIBUS推進室 室長)が務めました。

レポート<Part1>では、今回登壇した社内起業家10チームの中から採択され、7月20日に開催されるInvestors Dayに向けてアクセラレーター期間に進む4チームのピッチ内容をご紹介します。

<社内起業チーム> ※以下、事業概要/所属/代表者名の順

1.新しいスポーツ映像の配信サービス

株式会社リコー 江口陽介

リコーの江口氏率いるチームが目指すのは、新しい映像ソリューションでスポーツの発展に貢献し、明るい未来をつくること。世界で最も人気の高いスポーツであるサッカーに着眼し、サッカー選手の判断力向上を支援するソリューションを開発しました。

サッカーをプレーする上でボールコントロールと同等に重要なのは、判断力。言い換えれば、サッカーは状況判断のスポーツです。「判断力に優れた選手が、1試合あたり周囲を見る平均回数は550回。シュート6回、ドリブル7.4回など、その他のプレーに比べて圧倒的な回数」と江口氏。しかし、判断力を鍛えるための具体的かつ効果的なトレーニング方法は、指導者が選手に声をかけたり、試合を俯瞰図を使って説明するほかになく、実践を繰り返すことで身につけるしかない状況でした。

サッカー選手の困りごとを解決するべく、江口氏のチームは、独自の映像ソリューションを開発。このソリューションを使えば、状況判断がうまくできなかったシーンを何度でも確認することが可能です。なお指導者は、動画に基づいて的確なアドバイスを行うことができます。

プログラムでは、このソリューションを使用したサッカー関係者にヒアリングを実施。サッカー選手や元Jリーガーからは「プレー中には見えなかったパスコースをしっかり見ることができた」、などの声が寄せられたといいます。

今後は、トップを目指すサッカーチームに提供していくと共に、サッカーファンにも動画コンテンツを提供する予定で、バスケットボールやアイスホッケーなど、サッカー以外のスポーツにも展開する予定です。

2. 働く人の業務効率を最大化するサービス

株式会社リコー 小笠原広大

このチームは「『個人』を大切にすることで、チームは強くなる」をビジョンに掲げ、働く人が、自分の時間を有効に使うためのセルフマネジメント支援ツールの実現に取り組んでいます。

ツールの最大の特徴は、業務の優先順位や納期を意識した時間を簡単に確保できること。例えば、今月末までに企画資料を作成するために、9時間ほど必要だと考えたとします。ツールに想定時間を入力すると、納期を踏まえた9時間分のタスクが自動生成され、スケジュールの空きがある箇所に配置してくれます。進捗状況や打ち合わせなどの予定に合わせて、再調整も簡単に行うことができます。なお、タスクをこなす時間が足りなくなった場合は、アラートが知らせてくれる仕組みになっています。「何を優先したらいいか、事前に自分で気づけることが大きなポイント」と小笠原氏が語るように、自己管理能力の向上にも資するツールです。

実際に2週間の無償トライアルを実施した結果、有償での継続利用希望率は100%だったとのこと。行動力や発想力がある一方、スケジュール管理や臨機応変な対応が苦手な人に好評で、「やるべきことがスケジュールに組み込まれるので、一つずつタスクを確実にこなせる」、「進捗が可視化されるので、周りの人にも共有・相談しやすくなった」などの声が上がったそうです。

このツールによって可視化されたデータをもとに、コーチによる専門的なアドバイスや相談を受けられるサービスを展開する予定です。

「人々の働き方が変化を遂げる今、このツールの提供を通じて、リコーが持つオフィスビジネスのさまざまな知見を個人という小さな単位にも還元し、個人の働き方を支援していきたい」と小笠原氏は述べました。

3. IT機器利用の困りごと解決

株式会社リコー 津田道彦

リコーの津田氏率いるチームが目指すのは、「誰もが、いつでもどこでもどんな機器やサービスでも今すぐ活用できる世界」の実現。コロナ禍を機に、リモート授業が導入された教育現場を検証先として着目し、IT機器利用の困りごとを解決するべく取り組みを進めてきました。

昨今、教育現場でも電子化が進んでいますが、数学の練習問題を解く過程を評価するなど、紙が必要な場面はまだ残っています。そして、リモート授業を受ける学生たちが紙の提出物を提出するためには、所定のアプリケーションを利用して電子化し、さらに指定された場所にアップロードしなければなりません。しかし、その操作に不慣れな学生もいて、教師たちは回収作業が思うように進まないという課題に直面していました。

そこで、紙ゆえに生じる作業を自動化するべく、津田氏のチームは、独自のサービスを開発しました。

コロナ禍が始まった2020年より、福岡県内をはじめ九州の教育機関10校でPoCを実施し、約5万枚の答案提出を検証しました。その結果、小学校の教員や大学教授からは「全ての学生が速やかに提出できることを確認できた」、生徒からは「操作方法を練習することなく使えた。未来の授業スタイルを体験できて楽しかった」といった意見が寄せられました。

複雑な導入準備や操作なしにスマートフォン一つで提出物の提出・回収を行えるこのサービスは、教育現場を起点にさらにノンデスクワーカー領域にも提供していく予定です。「プリントとスキャンを連携させることで、配送伝票の回収など、現場のさまざまな課題解決に応用できると考えている」と津田氏。「誰1人取り残さない未来の現場を目指していきたい」と述べ、ピッチを締めくくりました。

4. 中小企業支援サービス

リコージャパン株式会社 西本崇政、黒川恭平

リコージャパン株式会社の西本氏

リコージャパンの西本氏、黒川氏らのチームは、中小企業を守る事業承継のサービスについて発表しました。2025年までに70歳を超える経営者が245万人*1、後継者不在の会社が127万社、黒字廃業する会社が62万社*2にものぼると言われる中、このチームは、55名の経営者と現場の方へヒアリングを実施。「相手をもっとよく知ってから、事業承継の判断をしたい」「統合作業にとても時間がかかる」など、そこで見出した事業承継のニーズや課題をもとに、M&A支援会社では手の届きにくい業務統合までをフォローし、お客様に寄り添う事業承継のサービスを考案しました。

*1: 出典 経済産業省「中小企業・小規模事業者における M&Aの現状と課題」

*2: 出典 M&A総合研究所「事業計画及び成長可能性に関する事項」

具体的には、事業承継は独自開発した会員専用Webサイトを通じて行われます。このサイトの特徴は、企業の課題を補完し合えるマッチングが実現できること。そして、リコージャパンの営業担当者のサポートのもと、マッチングした企業との信頼関係を築きながら、事業継承をじっくり検討できることです。

ピッチでは一例として、後継者がいないことが課題のA社と、地方からの受注や販路拡大を目指すB社のマッチング例が映像と共に紹介されました。このサービスでは、マッチング先企業の信用チェックも行えるので、安心して進めることができます。両社はお互いの仕事ぶりを見て、早速、案件を依頼してみることに。両社は次第にメリットを感じ、成長を見込める取引先として考えるようになりました。数年後、両社の事業がうまく回り、B社は地方からの受注も増え、A社はB社の仕事ぶりを高く評価し、事業承継を決意しました。

このように事業承継の役割を果たしながら、お客様をつなぐことも可能なサービスとなっています。なお、複合機・販売管理、会計・ネットワークなどの業務統合、リース物件や機器の選定など、事業承継の成立後のサポートも行えます。リコーだからこそ実現できるお客様への安心と満足を提供するべく、このサービスの実現に向けて、チーム一丸となって取り組んでいるところです。

リコージャパン株式会社の黒川氏

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