パナソニック ホームズは2023年、創業60周年を迎えました。工業化住宅を提供してきた生産現場における歴史と新たな取り組みについて全4回で、ご紹介します。

第4回目は、生産の上流である設計、調達、下流に当たる物流、建設、そして社内の各事業部門、さらには会社の枠組みを超えたプライム ライフ テクノロジーズグループ(以下、PLTグループ)との連携によって実現する持続可能な家づくりの取り組みについて紹介します。

設計、積算、生産の連携で新たな住宅部材の内製化に挑む

家づくり一貫体制の構築に向けて、モノづくりの基盤を強化していくためには、上流である設計・積算部門の業務との密な連携が欠かせません。こうした上流工程との一体化の取り組み事例として、「屋内共用階段の内製化」(つくば工場)をご紹介します。

パナソニック ホームズでは、従来、賃貸住宅用の屋内共用階段は、外部の協力業者に製造を委託していました。しかしながら、迅速にモノづくりを行い、品質を高めるには内製化による一貫生産が欠かせないことから内製化検討が2017年より開始され、2020年に新たに生産ラインを立ち上げました。

つくば工場の屋内共用階段製造ライン

内製化にあたっては、CAD-CAM連携が大きな推進力となりました。まず3D-CADで階段を設計し、パーツ同士の収まりがよいかどうかなどを確認します。これらのデータは部材発注から展開図などの各工程のデータへと自動生成されるため、仮に設計変更があった場合も容易に対応が可能です。NS構法の商品開発担当鈴木 清峰(NS商品開発部)は、「これまで基本設計~製造用図面の作成までを行うのが常でしたが、製造用図面の作成を生産現場に近い設計担当者に担っていただくことで、生産現場との意思疎通が行いやすくなり、生産現場の作業性を高めるための設計変更も容易になりました」と言います。

例えば、踊り場部分のボルト接合箇所の中に、外側からではどうしても手が届かないところがあった時のことです。製造現場から「接合箇所の近くに腕が入るくらいの穴をあけてほしい」との要望がありました。設計積算担当者の関 祐一(つくば製造部)は、三角形の穴を空けることで強度が失われることがないかどうかを開発担当者に確認したうえで、すぐに設計図に反映しました。

製造と商品開発で進む連携(左から関 祐一、鈴木 清峰、田中 秀樹、川崎 博輝)

設計変更も容易に

レーザー加工機での鉄板切断、折り曲げ、溶接・組立工程などを考えるのは技術担当の川崎 博輝(つくば製造部)の仕事です。新たな設備の取り扱いスキルを担当者へ落とし込んでいきます。生産に際しては、品質確保と省力化を図るため、各パーツをつなぐ方法をこれまでの溶接加工からボルト接合に変更しました。「溶接加工は作業者のレベルで良し悪しに差が出るだけでなく、位置決めから仮溶接をして修正し、本溶接に移っていくため時間を要します。ボルト接合にすることで誰もが簡単にできるだけでなく、組み立て精度が向上し、工期も短くなりました」と田中 秀樹(つくば製造部)は言います。こうした内製化の取り組みにより、設計、製造のリードタイムが短くなり、現場の工数も削減できた結果、工程を16日分短縮できました。

内製化は品質の安定、コストの削減、納期の短縮化などのメリットがある一方で、切断した原板の歩留まりが悪く、端材が出やすいことが課題でした。そこで、無駄を出さない工夫も求められることとなりました。これについて関 祐一は「原板にパーツを割り当てる際に他の金物部材を取り込んで隙間をなくすようにレイアウトし、端材を減らしています」と解決の方策を語ります。

さらに、現場まで部材を運びやすく、そして現場で施工しやすくするための改善にも取り組んでいます。内製化した階段のパーツには角張っているパーツがあり、田中 秀樹は「今後、アール(曲線)状に加工することで、安全に運び、工事ができるようにしたい」と話します。現在、つくば工場で生産する住宅用階段のうち、8割近くを内製化に取り込めており、今後、残り2割についても内製化を進めつつ、建設現場を考慮したモノづくりを推進していきます。

階段の内製化にそれぞれの立場で連携が進む (左から川崎 博輝、関 祐一、田中 秀樹)

たゆまず続く生産革新について、調達・物流・生産全体を統括する執行役員、假屋園(かりやぞの) 司と各部門の責任者にサプライチェーンにおける連携の重要性について聞いていきます。

サプライチェーンにおいてなぜ連携が重要なのか

調達面では資材価格の高騰と安定供給体制、物流面ではトラックドライバー不足とそれに伴う運送費の高騰が進んでいることが課題として挙げられます。「良い材料を低コストでタイムリーに工場へ供給しなければモノづくりは始まりません。また工場で生産ができたとしても、建設現場にお届けすることができなければ良家づくりは成り立ちません」と、假屋園 司は言います。

假屋園 司

調達担当の圓句(えんく) 弘和(調達部 部長)は、「例えば、インターフォンひとつをとっても、建設現場に納入できなくては、賃貸住宅の場合、入居いただくことはできません。半導体不足などのように世界的に部材不足の状況下では、原材料を入荷できないことがリスクとなり得るのです」と安定した調達の重要性を語ります。調達部門ではこうした課題に対応するために、調達ルートの多様化を図り、万が一、調達先企業の事業継続が難しくなった場合でも、他の企業で補完できる体制を整え、供給が滞らないようにしています。「お客様にご迷惑をかけないように“事前(コトマエ)”で在庫を持ちながら備えるのですが、在庫保管スペースの問題もあるので、多すぎても困ります。市場情報を踏まえ、需要供給のバランスを図る必要性があるのです」と調達の立場での難しさを指摘します。

また、生産部門との連携事例として、「端材を出さないようにするために最適な原板のサイズについて生産部門と調整を図り、部材を仕入れるサプライヤーにお願いをして用意してもらい、その後は歩留まり率を見ながら、最終的にベストなサイズに調整を図っていきます」と密接に連携する意味について語ります。

圓句 弘和

物流においては、ドライバー不足問題に加えて、住宅会社として輸送トラックの形状においても特有の問題があると、物流担当の加藤 隆勇(物流部 部長)は言います。「住宅部材の輸送では、あらゆる荷物が積み下ろししやすい平ボディ車が使われていますが、一般的には箱型のウイング車が主流となっており、より一層、トラックの確保が難しくなっているのが実状です。物流部門として供給能力を維持・拡大するために何をしていかなければならないのかを常日頃から考えています」。

加藤 隆勇

こうした物流問題の解決策として、入社以来、物流を担当してきた河嵜 祐治(物流部 物流企画課 課長)は「ドライバーの場内での待ち時間を短縮できるように、決まった時間に出荷できるよう徹底するなど労働環境の改善に努めるとともに、普段からコミュニケーションを密にすることで困りごとを探りながら改善につなげています。長い付き合いとなる取引先が多いのですが、積み込みのための車両が物流センターに到着した時にはしっかり感謝の気持ちを伝えることも大事にしています」と、人間関係の大切さについても触れます。

また、生産部門と物流部門、双方の立場で働いてきた加藤 隆勇は、「どのパーツをどのような順番で組んでいくのかという情報に加え、現場で下ろしやすく、破損しにくい荷姿にしてもらえるよう、生産担当者と連絡を取りながら、こちらで気づいたところはお願いをしています。出来上がった部材を建設現場に安全に、使いやすいようにお届けしてこそ私たち物流部門の仕事は価値を生みます」と、後工程を考えながら生産部門へ荷姿をリクエストし、建設現場へと降ろしていくことの重要性を語ります。さらに、工場で内製化した階段を住宅の柱や梁にあたる架構体などの部材と同じ便で運搬することなども行いながら、効率化を図っています。

河嵜 祐治

こうした連携の取り組みはさらに会社全体へと広がっています。パナソニック ホームズでは、生産、調達、物流部門の担当者だけでなく、営業本部、街づくり事業部、海外事業部を巻き込んだSCM(サプライチェーン・マネジメント)会議を設けています。目的は、CS No.1と売上・利益の最大化です。併せて平準化による効率化も狙っています。進行している案件の発注、着工、完成時期などの情報を共有することで、建設現場や繁閑の状況を見える化したうえで、それぞれのセクションが効率的な業務や工事を行えるように発注時期を調整するように努めています。

PLTグループ3社で共同調達、共同物流に取り組む

パナソニックとトヨタ自動車は2020年1月、パナソニック ホームズとトヨタホーム、ミサワホームの住宅会社3社と、建設会社2社(パナソニック建設エンジニアリング、松村組)を傘下に抱える、プライム ライフ テクノロジーズ株式会社(以後、PLT)を設立しました。住宅会社3社を合計した戸建て住宅の販売戸数は年間約1万2千戸以上(2021年度実績)に達し、PLTグループとして、調達、物流面などで統合効果を追求していこうとしています。

左から假屋園 司、加藤 隆勇、河嵜 祐治、圓句 弘和

調達については、2020年4月に、外装・エクステリア、内装・インテリア、設備・通信の3つのチームを設け、共同調達に向けた取り組みがスタートしました。各社が調達している部品を一覧にして並べ、使っている部品が同じであれば調達先を集約するとともに、類似した部品を使っているケースについては、調達先企業の了承を得たうえで仕様を共有し、仕様の統合を図りました。「共同調達により、発注量は当社単体の時の2.5倍に増え、量産によるコスト削減を図ることができます」と圓句 弘和はその狙いを説明します。取り組みを始めてから3年を経て、いくつかの部材についてすでに共同調達が実現しています。「図らずもコロナ禍の時期と重なりましたが、オンライン会議を活用することで、むしろ頻繁にコミュニケーションを図ることができ、3社の調達担当者同士、お互いの状況を気軽に聞き合う関係を築くことができました」。今後は、共同調達以外のテーマについても取り組みを進めていくことにしています。

同様に物流についても2022年春から住宅会社3社の担当者が参加する会議の場を設け、共同物流をテーマに話し合いを行っています。前述した共同調達の取り組みが先行して進んでいることから、調達先企業から部品が工場や物流センターに納入される調達物流について、共通のトラックで運送するところから始めていこうとしています。また、完成した部材を建築現場にお届けする納入物流についても、2024年問題に向けたドライバーの拘束時間対策に向け、共同で利用できる中継拠点を設ける計画も同時に進めています。

「3社がドライバー不足と運送費の高騰という共通の課題を抱えています。各社の住宅構法の違いから使うトラックのタイプが違ったり、同じ住宅メーカーであっても使う用語が違ったりと、当初は手探りの部分もありましたが、同じ目的に向かってグループ一丸となって課題を解決していきたい」と河嵜 祐治は言います。

工場編4回シリーズの最後に、假屋園 司に、今後のモノづくりの取り組みについて聞きました。

―良家づくりのためにさらに必要なことは

進化のペースをより速めていくことです。今回の連載でもたびたび触れてきましたが、2008年当時、生産現場の革新に取り組む「Advanced‐Next セル活動」で受けた改善の研修の1年、主事塾において私が塾頭となり若い社員5、6人を率いた2年、また業務において訪問した会社も含め、計100社ほどモノづくりの会社を訪ねて得た気づきが、私のモノづくりの原点になっています。現場をつぶさに見て「百聞は一見に如かず」を体感したのと同時に、「百見は一行に如かず」ということも身をもって学びました。100回見るよりまずは1回やりなさいという意味で、まずやってみようということを大切にしてきました。もちろん失敗もありますが、早く回すことで成功に近づくことができます。そのスピード感こそがますます大切になってきます。モノづくりで革新を示すことで範を示し、上流、下流を巻き込んでいきたいと考えています。

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―さらに連携を強めていくためにできることは

コミュニケーションです。全支社長や各組織責任者とミーティングの機会を設けています。ミーティングでは、工場の稼働状況に波があることなどの困難さを率直に伝えます。そうして工事の平準化に取り組んでもらえるよう努力を促します。一方で、支社長や各組織責任者からは1棟の受注をいただくことの大変さや建設現場における苦労など、お聞きしたことを工場メンバーに伝えます。そうすることで生産担当者も営業担当者の苦労に思いをはせ、その先のお客様や関連部署のメンバーのことを考えて常に新たな気持ちで生産に向き合うことができます。

また、PLTグループの連携については、調達、物流だけでなく、生産部門でも安全や品質、環境といったテーマでワーキンググループを設けており、若いメンバーには他社のモノづくりの現場を見てどん欲に吸収してほしいと考えています。

―どのような工場にしていきたいですか

少子高齢化、労働力人口の減少など良家づくりを実現するためのハードルはますます高くなっていきます。今回の連載で紹介した協働ロボット、ミックス生産、内製化などの取り組みをさらに広げていくことで建設現場の省施工化、コスト削減を推し進めていきます。

パナソニック ホームズは60周年のスローガンとして「感謝と挑戦」を掲げています。これまで当社が事業を発展し続けてこられたのは、様々なステークホルダーの方々からの支援があったからこそということを改めてかみしめながら、お客様にご満足いただくためにさらに技術的に成長し、工場に変化を起こし続けていきます。

3月より”商品編” 工業化住宅の開発の歴史と挑戦についてお届けします。

”工場編”

▶第1号はこちら

創業60周年。感謝と挑戦を合言葉に、工業化住宅の生産を担う工場での生産革新の取り組み。時代とともに変貌を遂げるモノづくり現場(1)

▶第2号はこちら

人の技を、ロボットともに繋いでいく~湖東工場の小さくて大きな生産革新~「創業60周年。感謝と挑戦を胸に」工場編(2)

▶第3号はこちら

お客様の要望に応えるために、部署連携で実現~つくば工場の生産革新~「創業60周年。感謝と挑戦を胸に」工場編(3)

◎パナソニック ホームズ株式会社について

商品ページ:https://homes.panasonic.com/

企業情報ページ:https://homes.panasonic.com/company/

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