「Architectural Productsで社会を幸せにする会社。」をパーパスとして掲げるYKK AP。窓やドア、インテリア建材やエクステリア商品といった生活の身近にある商品の開発・製造・販売を通して幸せな社会をつくることを自らの存在意義として事業に取り組んでいます。しかし私たちの商品はつくるだけでは完結しません。住宅やビルなどに取り付けることで初めて機能を持ち、お客様にご使用いただけます。つまり、商品そのものと同様に、施工が品質に大きくかかわっています。施工についてはYKK AP社員ではなく施工技能者が行っていますが、商品を施工する施工技能者の不足は建設業界が直面する大きな課題になっています。こうした課題解決と、施工品質の向上にむけたエクステリア商品開発の取り組みを紹介します。

「エクステリア商品」には、例えば隣地や道路の境界に設置するフェンスや庭に設置するデッキ、愛車を守るカーポート、洗濯物を干したりちょっと一息つく空間に利用したりするバルコニーなどが挙げられます。住まいをつくる一つの要素ではありますが、“家を建てる”となると、まずは間取りなどの建物の計画から入り、エクステリアの計画は分離する、または後回しになるケースも・・・。しかし、エクステリアはプライバシーの確保や建物と調和のとれた外観デザインなど、建物と一体で考えなければいけない重要なアイテム。そして、コロナ禍での在宅時間の増加により、建物と接する庭などの屋外のプライベート空間をおうち時間を楽しむ空間として活かすエクステリア商品の需要が高まっています。

YKK AP エクステリア商品の一例

一方でエクステリア商品の施工は、窓やドアのようにできあがった建物の構造躯体に取り付ける商品とは異なり、何もない空間に水平・垂直をとり立体的につくり上げていく施工技術が必要です。そして、敷地形状や高低差、隣地との距離など、現場ごとに条件が異なるため、多くの経験から生まれるいわゆる“職人技”が必要となるケースもあります。さらに、屋外という雨風にさらされる過酷な環境の中で、漏水などの不具合を引き起こさない施工品質も求められます。こうしたエクステリア商品特有の環境や課題に対して、YKK APの取り組みを人材育成と商品開発2つの視点からお伝えします。

1点目は職人技の伝承への取り組みです。YKK APは2020年1月にエクステリア施工技術研修所「DO SPACE上尾」を開設しました。ここでは主にエクステリア商品の施工を担う人材を育成するための研修が行われています。商品をつくるメーカーが施工技能者を育てる研修所を開設した背景、研修内容への想いについて施設運営を担当する金田に話を聞きました。

人材開発プロジェクト エクステリア技術推進室

技術基盤強化チームリーダー 

金田 義久

将来、商品が届けられない危機感

現在、エクステリア商品の施工を担う施工技能者は師弟関係も少なくなり、後継者がいない中で60~70代になっても現役の一人親方が多くなっています。技術のある施工技能者を育てる機会や環境がなければ、メーカーが商品を製造してもユーザーに商品を届けることができません。商品を現場で施工して、はじめてユーザーに届けることができます。エクステリア業界が今後も継続して発展していくために、施工技能者の育成・レベルアップと職人技の伝承が必要だと考えてYKK APは「DO SPACE 上尾」を開設しました。

商品の組立手順だけの研修にはしない

研修では商品の施工に関して「現場調査→組立・施工→メンテナンス」まで全般的な知識やスキルの習得を目指します。実際に施工技能者から施工の手順やノウハウを聞き、テキストや映像などで職人技の見える化をして研修のカリキュラムを開発・運用しています。エクステリア商品の施工は縦・横・奥行の三次元で、どこからどのように手をつけるかで難易度も変わります。例えば、施工説明書には水平・垂直を計測してくださいと書いていますが、その方法は現場の環境により異なるため、施工説明書で全てをカバーすることは難しく、商品によって取り付ける位置が決まっていないこともあり、施工技能者が自分で作業工程を決めて作業します。そこで研修で力を入れたのは商品を取り付ける技能だけではなく、取り付け前の“段取り(作業工程)”を身につける実習です。例えば水平位置や中心位置の基準線を書き出すための墨出しといった作業です。このようなことについて我々も施工技能者から学び、正確にかつ効率よく施工するための内容を研修プログラムに盛り込んでいます。

デッキを取り付けるための墨出しの様子

「できない」ことを理解してもらう

段取りと同様に大切にしていることは実技による学びです。頭では施工を理解していても実物の商品の大きさや重さなど、扱う時の感覚は経験しないと分かりません。同じ20㎏の資材でも長さや形で感覚は変わってきます。受講者には施工を経験することで「できる」ことと「できない」ことを理解してもらいます。その場では失敗しても、実際の現場でできるようになればいいからです。研修の経験を土台にすることで、現場作業は自信をもって実践できるようになります。

人材育成を全国で

2022年9月には香川県にある四国製造所の敷地内に、2拠点目の研修所となる「DO SPACE四国」を開設しました。ここでは建材流通店の施工者を受講対象の中心にして、カリキュラムを実施しています。短期間で育成するプログラムができれば、施工技能者不足に悩む業界全体にとって意義があります。社内で講師を務める人材の育成も進めていて、今後は他のエリアでも研修ができるよう拠点を整備していく計画です。日本全国で職人技を受け継いだエクステリア商品の施工技能者が増えることで、高水準な施工品質を保ちながら、暮らしを豊かに居心地よくする商品をお届けしたいと思っています。

エクステリア施工技術研修所「DO SPACE 上尾」にて

2点目は商品の施工品質を担保する開発の取り組み。エクステリア商品はYKK APの商品の中でも特に施工が品質に大きく影響するため、施工技能者の腕前に左右されにくい商品の開発を進めています。商品を使用する方だけではなく、施工する方のことも考えた商品開発についてカーポート開発を担当する堀江に話を聞きました。

開発本部 住宅商品開発部 エクステリア商品開発グループ

カーポート・テラス商品開発室長

堀江慎吾

施工技能者の腕前に左右されない工夫・改善 「漏水不具合ゼロ」への挑戦

カーポートは雨や雪、日差しなどを防ぎ、大切な車を汚れや劣化から守ってくれますが、性能を十分に発揮するためには設置する際の施工品質が重要になります。その施工ポイントの1つが「シーリング」です。シーリングとは部材間の継ぎ目に配置されるキャップにペースト状の充填材を塗り、商品の防水性や止水性を確保する作業です。手作業で行うため施工技能者の腕前によって完成度が左右され、同じ商品でも品質にバラつきが出やすい部分です。場合によっては充填材の量が足りなかったり、途中で充填材が切れたりして漏水につながるケースも。実はカーポートの不具合で最も多いのは漏水で、主な原因はシーリングに起因するものです。そこで、シーリング作業そのものを無くすことができれば漏水を防げると考え、シーリングが不要な「シーリングレスキャップ」の開発に取り組みました。

品質基準を満たす新素材を求めて

シーリング作業を無くすための手法として、シーリングをするキャップにあらかじめ充填材の代わりとなる「止水材」を塗ることを思いつきました。部材間に止水材が接着することでシーリングと同じ止水性を確保できると考えたからです。

カーポートの屋根コーナー部に取り付ける止水材付キャップ

アイデアを形にするためにはさまざまな課題がありました。止水性や耐久性など品質を満たすためにどのような素材を選べばいいか。生産ラインにおいて、自動機で止水材を塗るためにはどのような部品形状がいいか。組立性に問題はないか。止水材が接着しないための梱包方法など検討事項は多岐にわたりました。

自動機が止水材を部材に塗るイメージ

止水材の塗布では自動機による作業品質を担保するために、意図した位置に安定的に適正量を塗布する必要がありましたが、当初は塗布量がばらつき上手く塗布することができませんでした。試作を繰り返す中、キャップの溝形状を工夫することで止水材の位置を維持しながら安定的に塗布することが可能になりました。

キャップの溝部に塗られた止水材

これらを1点1点クリアしてシーリングレスキャップを完成させるにあたり、新素材の性能評価を担当した生産技術部門、製造所の設備設計部門との連携は欠かせませんでした。3部門が一体となって素材、部品、製造設備の開発に取り組んだことにより、YKK APの強みである一貫生産体制ならではのモノづくりができたと感じています。

不具合0件の手ごたえ

開発したシーリングレスキャップは2019年に発売したポリカーボネート屋根「エフルージュ FIRST」シリーズ、その後「アリュース」シリーズに導入されていて、キャップ以外のシーリングレスにも取り組むことで、施工時の完全シーリングレス化を実現しています。導入以降、シーリングレスキャップからの漏水の不具合は1件も起きておらず、開発に手ごたえを感じています。この技術を各種カーポートだけではなくテラスなど他のエクステリア商品にも展開し、品質向上に取り組んでいきます。また現場での研修会を通じてシーリングレスの認知浸透を進めていきます。

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