「核なき世界」理念は通じぬ 遠藤良介

ロシア深層

 「広島と長崎の惨事が繰り返されないために、核兵器のない世界に近づくよう取り組む」。20日に就任するバイデン米次期大統領は昨年8月、広島への原爆投下から75年に合わせた声明でこう述べ、オバマ前大統領が打ち出した「核なき世界」の理念を継承する立場を示した。

 そのバイデン氏が就任早々に取り組まねばならないのが、2月5日で期限切れとなるロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の問題である。

 米露間では2019年に中距離核戦力(INF)全廃条約が失効した。新STARTも失効すれば、世界の核弾頭の9割以上を保有する米露の軍備管理条約が全くなくなり、核軍縮の後退は決定的となる。北朝鮮やイランへの危険なシグナルともなろう。

 バイデン氏は新STARTを延長する考えを示しており、条約が規定する最大5年間、あるいはより短い期間の延長に動くとみられる。しかし、それで事が片付くわけでは決してない。

 11年に発効した新STARTは米露双方について、戦略核弾頭の配備数を1550、大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機の保有数を800とする上限を設けている。問題は、近年のロシアが配備・開発している新型兵器の多くも、ロシアが優位とされる戦術核も新STARTの制限対象とはなっていないことだ。

 プーチン露大統領は18年3月の年次教書演説で新型兵器の開発を誇示した。音速の20倍以上で飛行する極超音速兵器「アバンガルド」は量産体制に入り、南極回りの飛行経路でも仮想敵国を攻撃できる新型ICBM「サルマト」の実験が行われていると述べた。

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