香港最後の砦~司法の独立を問う(下)中国“性善説”崩壊で迫る危機

 「香港に三権分立はない」-。9月1日、そう断言して物議を醸したのが香港政府トップ、林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官である。香港は「行政長官率いる行政主導の三権体制だ」と主張した。

 しかし、この「行政主導の三権体制」は、香港の司法が下してきた判断とかけ離れたものだった。

 反政府デモが激化していた昨年10月のこと。デモ参加者たちは身元を隠すためにマスクを着けていた。新型コロナウイルスの感染が拡大する前の話である。

 そこで林鄭氏は、伝家の宝刀を抜いた。1997年の中国への返還後初めて、「緊急状況規則条例」を発動し、デモ参加者のマスク着用を禁じる覆面禁止法を施行したのだ。

 緊急状況規則条例とは、行政長官が「緊急事態、または公共の危険がある」と判断すれば、立法会(議会)の審議を経ずに規則を制定できる-と定めた英植民地時代の法令である。

 これに対し、当時、民主派の立法会議員だった24人が、議員権限の侵害に当たるなどとして提訴。香港高等法院(高裁)第1審法廷は昨年11月、中国が腰を抜かすような判決を下した。

 「立法権に関する香港基本法(香港の憲法に相当)の規定に反する」などとして、同条例と覆面禁止法の一部を違憲と判断したのだ。行政長官の立法行為に司法が“待った”をかけた形で、香港の三権分立を認めた判決だったといえる。

 激怒したのが、基本法の解釈権をもつ中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会である。

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